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捨子の嫁ぎ先  作者: ちゃろの助
本編
7/16

○花嫁 ー 06

ブクマ10件、ありがとうございます⋯!!

よろしくお願いいたします!


優しくて、仕事もできる。

面倒見も良いし、なかなかの美形だ。

いわば、ルゼットは理想の男性だろう。


あぁ、これほど恋に落ちるに足りる人が、近くにいるというのに。

私はなぜ、王を──────。




朝のことを思い出してしまい、慌てて頭を振った。


とにかく、ルゼットは優しいのだ。

誰に対しても誠実で、いつか騙されやしないかと心配になるほど。

賢い彼は騙されたりなどしないのだろうけれど、身分に容姿、優しさを併せ持った男性など、令嬢の格好の的である。



「リシアスさま、いきましょ?」


ルシフェンに見上げられて、


「ふふ、お願いね」


そう返事を返した。


ルシフェンは「おまかせくださいませ!」と胸を張る。


そんなことを言う姿もまた愛らしい。


何をしても可愛らしいのは、小さい子の特権であるけれど、ルシフェンはまた何倍も可愛く見えてしまう。

またもや緩んでしまう頬を必死に引き締めながら、この子は将来、きっと美しい令嬢になるのだろうと思った。


「ルゼット、ありがとう。暇ができたら、孤児院のお庭に来て。お菓子を用意して待っているから」


ルゼットにお礼を言って、お菓子のことももう一度伝える。

再び歩き始めたルシフェンを追いつつ、朝のことはしっかり、頭の更に隅に追いやった。







─────コンコン。


歩き始めて少しすると、一際大きな扉の前に着いた。

扉の上には『院長室』と、金色で刻まれている。



「院長様、お久しぶりでございます。リシアスです」



扉を2回ノックして、「どうぞ」という声を聞く。

もう一度、


「失礼します」


そう言ってから、扉を開けた。


部屋の窓の前に立つ、50代半ばの男性。

その髪はルゼットやルシフェンと同じ赤茶で、

瞳も薄い茶色だ。

年相応の皺を刻んだ、優しい顔立ちのその人こそ、この孤児院の院長様である。



「院長様、なんて堅苦しい呼び方はやめておくれよ。昔のように、ルバーフおじさんと呼んでほしいな」



柔らかく笑う、院長様改め、ルバーブおじさま。

幼い時から度々顔を出す私を、いつも優しく迎えて下さっていて。

このやりとりは、お約束である。



「では、ルバーフおじさま。改めまして、お久しぶりです」

「お父さまっ!わたくし、しっかりリシアスさまをおつれしましたわ!!」


淑女の礼をして、改めて挨拶をした。

隣では、ここまで案内をしてくれたルシフェンが、褒めてといわんばかりにルバーフおじさまに抱きついている。


「ははは、とても久しぶりだね。寂しかったよ。1ヶ月ぶりだろう?あぁ、こら。ルシフェン。人様の前だ。わきまえなさい」


笑いながら私の頭を撫で、その笑顔でルシフェンをやんわりと叱った。


このグライマ一家(いっか)は、皆人間である。

ルバーフおじさまも、ルゼットも、ルシフェンも。

皆、私と同じ人間だった。


そんな繋がりもあり、こうして孤児院を訪れているわけで。



「突然の訪問、申し訳ございません。その、来たくなってしまって」


今日の朝食のあと、ローラが連絡をしてくれた。

当日にいきなりの訪問とは、普通ありえないことなのだ。


それに、今はお昼時。

空は暗くとも光が多く、ましてやお屋敷の中は特殊な〝力〟でお昼時の明るさに調節されている。


そんな時間に唐突に訪れることが、どれほど迷惑なことか。


しゅんとしていると、ルバーフおじさまは笑って、私の頭を撫でた。


「嬉しいほどだよ。ほら、顔を上げて。お昼は食べていないのだろう?」


優しくそう言って、「私たちも今からなんだ。一緒にどうかね?」と付け足す。


「えっ⋯⋯」


それはあまりにも迷惑では⋯と言いかけたけれど、ルシフェンが爛々と目を輝かせているのを見て、


「ご迷惑でなければ、ぜひ」


そう言わざるを得ない気がした、なんて、都合の良いことを思った。


「うんうん。ヴェネ、用意を頼むよ」


ルバーフおじさまが扉の向こうに呼びかけると、「かしこまりました」と、声が返ってくる。


ヴェネさんは、私が初めてここに来た時からいる、お手伝いさんのような方だ。

人間と魔人のハーフ。

禁じられた存在。

そんなふうに呼ばれていたとき、ルバーフおじさまが引き取ったのだそう。


「さあ、行こう」

「リシアスさま、おてて、つなぎましょっ」


ルバーフおじさまの声とともに、ルシフェンが手を突き出す。

笑って、ルシフェンの手を取った。


そして、美味しい昼食の用意された部屋に向かって、歩き始めた──────。


ありがとうございました!!

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