表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨子の嫁ぎ先  作者: ちゃろの助
本編
13/16

○花嫁 ー1 1

総合評価、50Ptありがとうございます!

投稿の大きな励みなっています。

これからもよろしくお願いいたします⋯!!


目が覚めると、時計の針は朝の七時を指していた。

どうやら、昨日は泣き寝入りしてしまったようだ。


「う~ん」


大きく伸びをして、窓の外を見る。

いつみても空は暗いが、街は光で溢れていた。

光の量が多いおかげで、朝から夕方にかけては、人間の国の昼と同じくらい明るい。


いわば、曇りの日の昼間状態である。




⋯⋯⋯。




ちょっとまって、今何時って?




「ロ、ローラっ!!」




いけない、朝食は七時半からだ!



慌ててローラを呼び、支度をしてもらう。

残り二十分。

間に合うだろうか。


今日は淡いピンク色で、可愛らしいイメージのワンピースを着るらしい。七分丈の袖に、後ろには濃いめの赤のリボンが付けられている。

レースがあしらわれた胸元には、お気に入りの首飾りが揺れていた。


「可愛らしいリシアス様。参りましょうか?」


にっこりと笑って、食事の用意された一室に行くよう、促される。



「そうだね。ありがとう」



歩き始める一歩一歩に、緊張は高められていった。


どんな顔をして彼に会おう。


昨日、夢かと思うほど甘かった彼は、今日どんな顔をして私と朝食をとるのだろう。

私は、どんな顔をして、彼と向かい合い座るのだろう。



おかしいところはないかな、変に思われたりしないかな。



高鳴る心臓を鎮めるように深呼吸を繰り返し、扉を二回ノックした。



ノックはしても返事が返ってこないことは普通だ。

なにせまだ、陛下がいらっしゃっていない。


私と朝食をとる時は、いつも少し遅れていらっしゃるのだ。


ゆっくり扉を開けて、いつもの席につく。


⋯⋯と、料理を見て驚いた。



いつも豪奢な食事ではあるものの、今日は特に量が多い。


一品一品が大きいうえ、どれも高級そうである。

もちろん王に出す食事であるから、当たり前の話といえばそうなのだが。


「これ⋯⋯今日、なにかあった?」


後ろに控えているローラにそう問いかけると、にっこり微笑んで、


「城中の者が喜んでおりますよ」


そう言った。


喜んでいる?

誰かの誕生日だったかな。

記念日とか?


「なんの日だっけ⋯⋯?」


首を傾げながらそう言うと同時に、扉が開いた。

陛下がゆっくりと歩いてきて、私の向かいの椅子に腰掛ける。


すると、更に料理が増え、料理人たちが続々と厨房から出てきた。

侍女や執事、その他の使用人も集まり、騎士団の団長までもが、この場に登場した。


「陛下」


先程現れたジェリグ様が、陛下を呼ぶ。


「あぁ」


呼ばれて頷いた陛下は、静かに席を立った。



「私、アルヴィルト・ディ・ライダンは、シフェンニ国第二王女、リシアス・レイキーとの婚約を、ここに結ぶ」



その言葉が聞こえた途端、拍手が巻き起こる。


「正式な婚約表明は三日後行う」


そう付け足して、再び陛下は席についた。




⋯⋯⋯。





ああぁ、そういうことか!




やっと理解が追いついた。

陛下は心なしかご機嫌で、ローラもジェリグ様もにこにことしている。



いつもは仏頂面の騎士団長も、なかなか顔が見られない料理長も、みな安堵した表情を浮かべていた。



なぜ?



と、思うなか、



「さて。皆、御二方を残して退場せよ 」


ジェリグ様の一言にぎょっとする。


ええぇ、なんで!?


そんな気持ちは声にならず、退場していく皆を、呆然と見ていることしかできない。


「ロ、ローラまで!?」



そう言うと、ジェリグ様が「もちろん」と頷いた。


最後の希望をぽっきりと折られ、がっくりと項垂れる。


ジェリグ様まで出ていってしまい、扉を閉められたころには緊張も高まって。


「おい、小娘」


「は、はい!?」



小娘⋯⋯。


───昔は、リシアスと呼んでくれたのに。


寂しさを覚えながら、返事をした。

突然呼ばれて、肩が揺れる。


「⋯俺のことを陛下と呼ぶな」



⋯⋯はい?



「ええと、へい⋯アルヴィルト様、それは私が国民でないからでしょうか」


恐る恐る聞いてみる。

基本、国民でないものは陛下とは呼ばない。

なぜなら、自国の王こそがその人にとって陛下だからだ。


しかし、私には陛下と呼べる人が存在しなかった。

生まれ故郷の国の王に捨てられた私は、彼以外陛下と呼ぶ人がいないのである。


「違う。おまえは、俺をヴィルと呼べ」


じっと見られて、思わず視線をそらした。


ヴィル⋯⋯。

それは彼の愛称だ。


私が呼んで良いものなのだろうか。


「私が⋯⋯呼んでも良いのでしょうか」


下を向きながら言う。

自分で言いながら寂しく思うなんて、私は自分勝手だ。


ぎゅっとワンピースの裾を、握りしめた。


「呼べ。リシアス」





⋯⋯!!





今、そう呼ぶのは反則だ。


頬が一気に熱くなる。



───呼ぶしか、なくなってしまったではないか。



「⋯分かりました、ヴィル様」


そう言うと、満足そうににやりと笑って、陛下──ヴィル様は、食事に手をつけた。



ありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ