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捨子の嫁ぎ先  作者: ちゃろの助
本編
1/16

○花嫁 ー 01

初投稿です!!

誤字脱字、ありましたらごめんなさい。

毎日投稿を目指しております。

よろしくお願いいたします⋯!



───懐かしい夢をみた。



湖に落ちそうになったところを、彼に助けて貰った十年前のあの日。

私の人生を大きく変えたあの数分の出来事は、今でも驚くほど鮮明に夢に現れる。




「人間か⋯?幼子とは、やはり小さいものだな」




私の腕を掴んだ、ほどよく筋肉のついた腕。

恐ろしいほどの美形の瞳は、アメジストより少し濃い紫色で。

すっと通った鼻筋と、薄く形の良い唇。


耳に心地よい低音は、私の顔を見て途切れてしまった。

美しい瞳も心なしか揺れていて、驚きがありありと伝わってくる。



あぁ、やはり。



茶混じりの黒髪と、それに合わない紺青の瞳。

この時代、紺青とは最も不吉な色として伝えられている。

どこに行っても除け者にされ、汚物を見るような目で見られた。

父とも母とも違った異様な私を見て、わずか6歳で捨てられたことが、何よりも自分が気味が悪いことを理解させる。




「ジェリグ、俺はこの小娘を〈 〉にする」



静かに、しかしはっきりと告げた彼の言葉を聞いて、私は遠くなりかけていた意識を手放す。

重たい瞼を閉じ、肝心の〈 〉が聞き取れなかったことを後悔するだろうなと考えながら、眠りについた─────。






⋯⋯という、今朝の夢。


優しく暖かい光が窓から差し込んでいるこの部屋は、王城のなかにある、少ない部屋のうちのひとつだった。


十年前私が両親に捨てられたのは、ここ魔国である。

私の故郷である国の隣国だが、国と国との間には明確な境界線があったせいもあり、当初は全く違う場所にいる気持ちになった。


⋯⋯いや、それも当たり前かもしれない。

なにせここは朝が来ないのだ。

陽の光が苦手な〝魔人〟もいる為、随分前に囲いを作ったのだそう。

ずいぶん長くいるせいで、朝が来ない生活にもすっかり慣れてしまっていたけれど。

いまやここは私の、第二の故郷となっいた。


さて。

それはそうと、つい先日十六歳となった私。

広いベッドの上、心地よい温もり感じながら、夢の余韻に浸っていた。


コンコン、と扉がノックされる。


「リシアス様、おはようございます」


女の人らしい高い声。優しくて落ち着く、柔らかい声だ。

侍女のローラの声だった。


あくびをしながら、入室を許可する。

許可するなんて言っても、「はぁい」と気の抜けた返事を返すだけなのだが。


ローラ・マーシャム。

十年来の友人である彼女は、7年前から私の正式な侍女として配属された。

年上のローラを、私はお姉さんとしても慕っているつもりだ。


大人の雰囲気を漂わせたローラ。

淡い金髪に翡翠色の瞳。

誰が見ても美しいの一言に尽きる容姿を持った彼女は、今日も変わりなく微笑んだ。



「おはようございます、リシアス様。本日も寝癖がついていらっしゃいますよ。陛下が朝食を、リシアス様とご一緒に召し上がるとのことですので。お支度を」


そう言いながらながら部屋に入る彼女は、侍女の見本といえるほどであった。

要件を伝え、洗練された無駄のない動きで私の支度を始める。


陛下───。

その言葉はこの国で、一人の男のことを指している。

唯一無二の強さを誇る彼こそが、この魔国の王なのだ。







「リシアス様、お美しいですよ。水色のワンピースも、やはり似合っていらっしゃる」


うんうん、と頷いて、ローラは満足しているようだった。

ローラは支度が一通り終わると、必ずなにか一言褒め言葉をくれる。

それが彼女の優しさであり、お世辞でないことは長い間共にいた事で分かっていた。

だからこそ、嬉しい。


淡い水色のワンピースは露出が少なく、後ろのリボンはやや小さめ。

柔らかい生地は肌触りもよく、初めて着た心地は良いといえる。


明るすぎず、暗すぎない。

私の紺青の瞳に合わせられた服はどれも、ローラが選んでくれていた。


支度が整ったことを確認して、時間をみる。

ちょうど良い頃合だろう。



「行こう」



しゃらん、と首飾りが音を立てた。

細い金の鎖には紫色の石がはめ込まれている。

以前ローラから渡されたものだが、ローラは誰がくださったのかを未だ教えてくれない。


この紫色は、彼の瞳の色とよく似ていた。

なんだかくすぐったい気持ちになるこの首飾りは、私の一番のお気に入りだ。


足音を響かせる。

彼が───否、陛下が待つ、朝食の並べられた部屋に向かって。






ありがとうございました!

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