54話 2年間の成長(2)
2つ目
『魔法剣士(闇&火)』
かつて『未習得』と表示されていた2つ目のスキルだが、どうやら『魔法剣士』というスキルらしい。
名前からして魔法を使える剣士なのだろうか?
「アイシス、この『魔法剣士』っていうスキルは何なんだ?」
おれは魔族の文字を読み上げてアイシス聞いてみた。
ちなみに、この文字は緑色をしていた。
「はい、こちらの『魔法剣士』というスキルは、『魔法使い』と『剣士』の2つのスキルを合わせたスキルと捉えてもらって構いません」
どうやらアイシスの話では『魔法剣士』というスキルは『魔法使い』と『剣士』のスキルの融合型らしい。
——ということは、おれは実質スキルを4つ持っているということではないのか?
人間という種族は基本スキル1つ持ち。
3つスキルを持っている人間は希少な存在で人口の1%ほど。
それに対しておれは実質4つもスキルを持っているってやばくないか?
「本当か!? それってお得じゃないか。つまりはおれは4つスキルを持っていると考えてもいいのか?」
別に周りより優れているということで他者に自慢をしたり見栄を張ったりしたいわけではない。
それでも心のどこかでは喜ばしいことではあるし、何より強くなれるという可能性が一番嬉しかった。
おれはスキル測定の前とは一転変わってワクワクドキドキしていた。
しかし、アイシスはおれの質問に申し訳なさそうに答える。
「残念ながら完全に4つ持ちとまでは言えません。まず、『魔法剣士』持ちの資質についてですが、『魔法使い』持ちの魔法、『剣士』持ちの剣術のそれぞれ6割から8割ほどしかありません」
「もう一つの理由は……一通りスキル測定の確認をしてからお話しましょう」
残念ながらスキル4つ持ちとはいえないようだ。
どうやら世の中そんなに都合よくできているわけではないらしい。
それでも、二つのスキルの6割から8割ずついいとこ取りしてるわけだし少しはお得だよね。
実質スキル3.5個持ちってところかな?
「ちなみに、闇&火 ってあるけど、これは闇属性と火属性に適性があるってことでいいのか?」
『魔法剣士(闇&火)』と書いてあるからな。
一応アイシスに確認を取る。
「はい、その通りでございます。アベル様は闇属性魔法と火属性魔法が得意であるという認識で大丈夫です。おそらく現在人間であるアベル様が闇属性魔法を使えるのもこのスキルによるものでしょう」
どうやらおれが闇属性魔法を使えるのはこのスキルがあるからだとアイシスは考えているらしい。
おれはずっとスキル『魔王』によって闇属性魔法は使えていると思っていたからなんだか納得いかない部分もあった。
「アイシス、おれ7年前は『魔法剣士(闇&火)』じゃなくて『未習得』ってあったんだけど、『未習得』でも闇属性魔法は使えるのか?」
おれがスキル測定をしたのは7年前の5歳のとき、そのときは『魔法剣士(闇&火)』は習得できていなかった。
しかし、おれは4歳くらいのときから闇属性魔法は使えた。
おれとしては、闇属性魔法は『魔王』の影響ではないかと思う。
「それについては100%の断定はできません。しかし、その可能性が高いと私は考えます」
「魔界では『生まれた時点で未習得であっても、どのようなスキルを習得するかは決まっている』、そして『生まれた時点で全てのスキルを習得している』というスキルに関する二つの有力な説があります」
アイシスは話しながら、別の水晶を取り出した。
見た目はあまり変わらない。
強いて言えばカシアスが作ったというやつより古く淡い色をしている気がした。
「こちらはリノ様が手に入れてくださった、人間が作ったとされている魔道具の水晶です。アベル様、こちらの水晶に一度手を触れてみてください」
おれはアイシスの言葉を受け、素直に差し出されたもう一つの水晶に触れる。
すると、ホログラムが浮き上がったが先程まで見ていたものとはまた違っていた。
三つの波長が現れているし、その横に魔族の文字も書いてある。
しかし、波や文字の色は全て緑色っぽいし、何よりスキルが二つしか表示されておらず、一つは『未習得』となっている。
「これは……どういうことなんだ?」
おれは何が何だか理解が追いついていなかった。
すると、アイシスが話を続ける。
「実は、スキルにはレベルのようなものが存在します。それは熟練度とでもいった方が良いのかもしれません。スキルに合った資質能力が上達すればするほどスキルのレベルが上がるのです」
アイシスはリノが手に入れたという魔道具をカシアスが作ったという魔道具の横に置く。
「我々、ヴェルデバラン様の配下たちはスキルについて『生まれた時点で全てのスキルを習得している』という説を信じています。それは測定する魔道具の性能が低いと、レベルの低いスキルは測定できない可能性があるという考えのもとです」
おれはアイシスの話を聞いて震えてしまった。
魔界と人間界には技術や理論の差がありすぎる。
確かに、アイシスの話は理に叶っていて説得力がある。
つまり、おれが7年前に『魔法剣士(闇&火)』が『未習得』だったのはスキルのレベルが低く、カイル父さんの持つ測定精度の低い魔道具の水晶では測ることができなかったということだ。
そして、未習得のスキルに関してはそのスキルにあった訓練次第でスキルのレベルを上げることができる。
確かにおれはスキル測定の後、闇属性魔法に火属性魔法、それに剣術をカイル父さんとの訓練で鍛えた。
それによってスキルのレベルが上がって魔道具の水晶で改めて『魔法剣士(闇&火)』と表示された。
とても納得のいく話だった。
「今の話でアベル様の中で疑問は解消されたでしょうか?」
アイシスがいつものような淡々とした口調でおれに話しかける。
「おかげですっきりとしたよ。ありがとうなアイシス」
そして、最後のスキルはもちろんあれだ。
かつておれを恐怖のドン底に落としたスキル。
3つ目
『魔王』
その文字は、真っ赤な魔族の文字で書かれていた。
そう……スキル『魔王』。
おれの平穏な異世界ライフに終止符を打ったスキルだ。




