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16話 訓練初日(3)

  この世界では魔法の素質のある者は12歳から国が運営する中等魔術学校で魔法について学ぶことができる。


  おれは5歳の誕生日に魔法の素質——この世界でいうスキルの測定をしたところ見事に魔法の素質があることがわかった。

  まあ、それまでにあれだけ色々とあったんだ。

  なんとなくはわかってはいたんだけどね。


 しかし、まだ5歳ということもあり中等魔術学校に入学するにはあと7年必要である。

  そこで、おれの希望もあって魔法使いのエリートであるカイル父さんが直接、魔法に関する訓練をしてくれることとなった。

  カイル父さんは教師の資格も持っていることだし何の問題もない。


  順調に魔法について学んでいくはずだったのだが……。

  どうやら、そう物事は上手くいかないらしい。


  訓練初日からおれはこの世界の常識ではありえないことを連発しているらしいのだ。

  まぁ、ちょっとだけ気分が良いのはみんなには内緒にしておくか。



 ◇◇◇



  「ちょっと、あなた。自分が何をやったかわかっているの! おかしいんじゃないの!?」


  精霊のティルがおれに食いかかってくる。

  どうやら、先程ティルと融合(シンクロ)して放った氷弾(アイスショット)が異常だったらしい。


  「おれに言われても困るんだよ! お前がおれの身体を使って魔法を撃ったんだろうが!! おかしいと思ったのなら途中で魔法を止めればよかったんじゃないのか?」


  「うっ……それは……」


  ティルには思い当たる節があるのか?

  おれの言葉に何も言い返してこなくなった。


  「まぁまぁ、二人とも……。それよりアベル、さっきのはすごかったね。父さんも驚いてしまったよ。はっはっはっ」


  「そうよ! そうよアベル! さすがわたしの弟なだけあるわ。いきなり氷属性魔法を使えるなんてすごいわ!」


  カイル父さんとサラは素直におれのことを褒めてくれる。

  まぁ、おれが闇属性魔法を使う人外みたいな存在だってことを知っているからこそ驚きが少ないのかもしれないが。


  「アベル、身体の方は大丈夫かい? ティルも言っていたが体調は平気なのかい? もしも魔力を使い切ったりしていたら大変だよ」


  カイル父さんはおれの身体の心配をしてくれているが特に問題はなさそうだ。

  魔力も全く減っている感じがしない。


  ——というか、おれは魔力が減るという感覚をこれまでの人生で味わったことがなかった。

  ティルと融合(シンクロ)する前と全く()って同じな気がする。


  そういえば、この後は一人でさっきの魔法を使ってみるんだっけか?

  先程の魔力の扱い方を思い出しながら魔法の練習をする。

  確かそういう流れだった気がする。


  「ねえ、今度は一人でさっきの氷弾(アイスショット)を撃ってみればいいの?」


  おれは純粋な疑問を口に出す。

  すると、ティルがとてつもない速度で反応した。


  「あなたおかしいんじゃないの? 本気で一人で魔法を使う気なの!?」


  今までティルはおれたちの前では澄ましたクールなキャラだった。

  そのイメージがおれの中でどんどんと崩れていくな。


  「やれそうな気がするんだよ。きっと大丈夫だよ」


  「はぁー。あなたさっきはわたしのサポートがあったから上手くいったけれど、あなたは所詮5歳の人間なのよ。身体の成長に合わないで魔法を使う危険性をカイルに聞いていないの?」


  「はぁ? なんだよそれ。あのー、父さんどういうことですか?」


  おれはティルに悪態をつきつつ、カイル父さんに尋ねてみる。


  確か前にカイル父さんはサラに魔法を教えると自分でどんどんと学んでしまうから身体が成長するまでは基礎しか教えないと言っていた。

  もしかしたらそれは身の程に合わないほどの魔法の行使は危険だということなのだろうか。


  「そうだったね。アベルには確かにそのことについて説明不足だったね。本当にすまない」


  カイル父さんは神妙な顔つきでおれに謝る。


  「ちょっとパパどういうことなの? アベルは危険なの? 大丈夫なんでしょうね!?」


  サラの態度は一転し父さんに問い詰めている。


  「結論から言おう。わたしは問題ないとみている。確かに過去の事例では身体が成長仕切らない状態で高度な魔法を使うのは危険だと言われてきた」


  「しかし、それはその子ども自身のスキルや魔力量に()るものだ。その点アベルは魔力量に全く以って問題ないとわたしは断言しよう! アベル、ティルにきみの魔法を見せてあげたらどうだい?」


  カイル父さんは問題はないし、ティルにおれの闇属性魔法を見せてみるように言ってくる。


  「ちょっと何よカイル。こいつ魔法が使えるっていうの? わたし今まで一度も見たことがないし聞いてもいないんだけど?」


  おれはカイル父さんの発言に少しだけ安心している。

  ティルは何やら怒っているがカイル父さんがおれの力を信用してくれているらしい。


  「まぁまぁ、そんなに怒らないでくれよ。どうだいアベル。ティルはきみを心配してくれているんだよ」


  「そんなわけないでしょ! 警告してあげてるだけよ。心配なんてこれっぽっちもしてないわ」


  なるほどな、それで怒っていたのか。

  ティル、まさかきみはツンデレ属性だったのかね。


  「おれのこと心配してくれていたんだな。悪かったよティル。もうきみを心配させないように気をつけるよ」


  「だーかーらー! 心配なんてしてないっつーの!!」


  ちょっとばかりティルを黙らせてやろう。

  おれは集中して魔力を操作する。


  「じゃあ、おれの見てくれよ。ほら!」


  おれはそうティルに声をかけて闇属性魔法を発動した。

  おれの周囲には闇の(ころも)が渦巻き出す。


  そして、その形を変える。

  まずはおれを包むドームのような形に、そして次は立方体のような壁へ、最後に最近できるようになった鎧のように身に纏うようにと変形させる。


  おれの闇属性魔法を目をしたティルは目を見開いて愕然(がくぜん)としていた。


  「ちょっ、ちょっと何なのよこいつ……。バケモノ? いや、違うそんな生易しい存在じゃない。あなた一体何なのよ!? カイル、一体どういうことなの! わたし何も聞いてないんだけど」


  ティルはパニック状態のようになっている。

  まぁ、こうなるかもしれないからおれはティルに挑発され続けても闇属性魔法は見せなかったんだけどな。


  「やっぱりきみにもアベルの使う魔法は闇属性に見えるかい?」


  カイル父さんはティルとは対照的にとても落ち着いた雰囲気でティルに話しかける。


  「えぇ、そうよ! この子が今使った魔法は闇属性で間違いないわ。それもこんな高度な防御魔法を……。この子は本当に5歳の人間なの?」


  「あぁ、そうだよ。アベルは5歳の人間の子どもだよ。わたしとハンナの愛する息子なんだからね」


  カイル父さんは真剣な眼差しでティルにそう告げる。


  「はぁー。ごめんなさい、今のはわたしが悪かったわ。許してちょうだい。失礼な発言だったわね。アベル、あなたもね。ごめんなさい」


  ティルは興奮の余りに失言をしてしまいそれについて謝っている。

  精霊は傲慢(ごうまん)な嫌なやつだと思っていたがそんなことはなかったらしい。

  しっかりと自分のミスを謝る一面を見ておれはそう思った。


  「別にいいよ。おれも自分で自分のことがよくわからないんだ。だけど、せっかくこの才能? を持っているのならば有意義に使いたいと思っているんだ。おれは強くなりたいんだ。だからティル、魔法を教えて欲しい」


  おれは真剣な表情でティルにお願いをする。すると、ティルはふっと笑った。


  「もちろん。こちらこそよろしくねアベル」


  「やっとおれの名前を呼んでくれたね」


  「少なくとも、あなたには敬意を払うものがあるからよ」


  「「ははは(ふふふ)」」


  おれはティルと仲良くなれた気がした。

  この世界に転生してからサラに続いて2人目かな。

  実の姉に加えて幼女の姿をした精霊とはユニークな友好関係だな。


  「それじゃあ、一人で氷弾(アイスショット)を撃ってみる?」


  そうだった。

  おれが一人で魔法を使うっていう話の流れだったんだよな。

  よし、頑張って一人でも成功させてみるぞ!


  「うん、一人でやってみるよ」


  そう言っておれは集中する。

  さっきの感覚を思い出しながら魔力を扱う。

  すると突然サラがおれに声をかけてきた。


  「ちょっとアベル! 一応言っておくけど、わたしたちには向けないでね!」

 

  そうだった。

  さっきはおれの手の先に父さんやサラがいなかったから良かったものの危険な行為だった。


  おれは林の方を向き(まぶた)を閉じて再び集中をする。

  さっきの感覚を思い出せ。

  氷の結晶を作り出し弾丸の如く撃ち抜くのだ。


  不思議と身体は先程のティルと融合(シンクロ)していたときの感覚を完全に覚えていた。

  全く同じように魔力を操作する。


  さっきはティルの魔力も使っていたが今回はおれの魔力一人分だ。

  もしかしたらさっきより少ないかもしれない。

  すると、不発に終わってしまうかもな。


  どうするか……。


  そうだ!

  おれの身体は真っ先に動いていた。


  さっきまでとは魔力の流れが違う。

  しかし、問題はないはずだ。

  これでどうだ!


  「氷弾アイスショット!」


  眼を開きおれは叫ぶ。

  おれの目の前には冷気と魔力を帯びた10本ほどの氷塊が宙に浮く。

  そしてそれらはおれのかけ声とともに音速を超える速度で撃ち出された。


  氷弾(アイスショット)を撃ち出すとともに反作用の効果で衝撃波がおれを襲う。

  その直後ものすごい爆発音が周辺に響いた。


  爆風により閉じていた瞳をあけるとおれの前方にはいくつもの折れた木々と強引に結晶をねじ込まれてできた道があった。

  どうやら先程とは違い木に貫通して突き刺さるだけでなく、木をなぎ倒して進行していったようだ。

  あぁ……新しく道ができてしまったな、うん。


  おれはふとティルやカイル父さんたちの方を見てみた。

  ティルも父さんもポカンと口を開けて固まってしまっている。

  サラだけは能天気に嬉しそうに喜んでいるようだ。


  あぁ、これはまたやっちまったなようだな。

補足です!


アベルは魔力を消費せずに魔法を使える能力があるわけではありません。

この段階では消費魔力が少ない魔法を使っていたり、効率よく魔力を利用できる属性の魔法を使っていたりするだけです。

今後、普通に魔力を消費していく描写があります。

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[気になる点] 登場人物の性格ブレブレすぎて別人かと誤認するほど酷い [一言] 著者がお幾つか存じませんが、よくもまぁこれ程適当に長々と続けられましたね笑 もう話の内容とか以前のレベルですわ 16話で…
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