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153話 ダリオス vs アベル&ハリス(1)

  「カシアス!!」


  おれは隣に現れたカシアスの名を呼ぶ。

  カシアスがさえいてくれれば、十傑のユリアンとも戦えるかもしれない!


  カシアスの登場にユリアンが声をかける。


  「カシアスか……お前と戦う日が来るとは思ってなかったぞ」


  どうやらユリアンもカシアスのことは認知しているらしい。

  もしかしたら二人は知り合いだったりするのだろうか?


  「私としては貴方と戦うことを避けたいのですがね。どうかこのまま手を引いてくれないでしょうか?」


  カシアスはユリアンに提案する。

  このまま引き下がってくれないかと。


  だが、そう簡単に話が通じる相手だとしたらこんな事態にはなっていなかっただろう。

  現にユリアンはカシアスの提案を断る。


  「それはできぬな。私には私の都合というものがあるのだ。お前がそれを邪魔しようとするのなら争いは避けられないだろう……」


  対立する二人の悪魔。

  魔王序列第4位のカシアスと十傑序列3位のユリアン。


  カシアスの方が強いと思っていたが、間近で感じる魔力ではユリアンの方が上だと思う。

  仮にも十傑というのは魔王ではないが魔王クラスの実力を持っているのだ。

  ユリアンがカシアスより強くとも不思議ではない。


  「それは残念です……。それでは、そのような都合に縛られなくていいように、私が貴方を解放して差し上げましょう」


  カシアスが魔力を解放した。

  白く輝くオーラがカシアスを纏う。


  ハリスさんがおれの側に転移してきて、結界を張っておれを守ってくれる。

  カシアスの魔力を真横で直に受けたら気を失っていたかもしれない。


  ありがとうハリスさん。

  おれは心の中でハリスさんに感謝をする。


  そして、カシアスにはあとで文句を言ってやろう。

  だから絶対に十傑の悪魔を倒してくれよ!


  「やれるものならやってみろ」


  ユリアンが特大の光属性魔法を放つ。

  薄暗い地下都市が真っ白に染まった。

  それに対してカシアスは防御魔法でおれたちを保護する。


  白い閃光が辺りを照らしたと思ったら今度は大きな地響きと共に地面が揺れる。

  そして、天井が崩れ落ちてきた。



  ドォォォォーーーーン!!



  岩石が雨のように地下都市へと降り注ぐ。

  おれたちはカシアスが防御魔法を展開してくれているが、サラは大丈夫なのか??

  おれはそれだけが心配だった……。


  そして天井には巨大な穴が空き、月光が地下都市に降り注ぐ。

  失われた都市を月が照らす様子は、胸打つまでに美しく、おれの心を騒ぎ立てていた。


  静まり返るこの空間の中、おれはサラを探していた。

  そして、アルゲーノが防御魔法を張ってサラと二人で身を守っているのを見つけておれは安心する。



  「それでは参ろう……」



  「そうですね」



  ユリアンの言葉にカシアスが頷く。

  そして、二人は姿を消した。


  もしかしたら、ここではないどこかで戦うのかもしれない。

  おれはカシアスの無事を祈っていた。


  「アベル様、私から一つだけお願いがあるのです」


  ハリスさんが側にいるおれに話しかける。

  いったいどうしたのだろう?


  「はい。なんですか?」


  おれは彼女に聞き返す。


  「これがすべて終わったら、この地下都市を建て直すのを手伝ってくれませんか? ここは私にとって一番の思い出の場所なのです」


  どうやらこの地下都市はハリスさんにとって大切な場所らしい。

  やはり、ここは昔に創られた都市だったようだ。


  今では誰も暮らしていないようだが、昔は人々が地下で暮らしていたのだろうか?

  まぁ、何にせよそれくらい構わない。


  「構いませんよ。ハリスさんの大事な場所、一緒に建て直しましょう!」


  建築の知識も経験もないがおれにできることならば手伝ってあげよう。

  そのためにも、みんな無事に帰れるように頑張んないとな!


  おれの言葉を聞いたハリスさんが笑顔になる。

  ハリスさんが笑顔になるなんて珍しいな。


  「ありがとうございます。それではセアラ様を助け出しましょう!」


  おれたちの前に立ちはだかるのは国王ダリオス。

  こいつはおれの手で倒さなければならないだろう。


  「クックックッ……。まさかこんな展開になるとは思ってなかったぞ」


  ダリオスがおれたちを見つめてはそう語る。


  そして……。


  「おい! 何をしている!」


  ダリオスはアルゲーノに怒鳴りつける。

  アルゲーノは魔道具で縛られて動けないサラを解放してようとしていた。


  「いや……。先ほど、父上がセアラを解放してよいと……」


  アルゲーノは怯えた瞳でダリオスを見る。


  「それはあの悪魔が無理やり言わせた言葉だ! おれはそんなこと許可していない。その女を今すぐ殺せ!」


  ダリオスの言葉に震えるアルゲーノ。


  ここでおれは二つの事を理解した。


  一つはアルゲーノは嫌々ダリオスに従っているのかもしれないということ。

  だとしたら、サラは今のところ安全なのだろうか?

  少なくともマルチェロやダリオスのような殺意は感じない。


  そしてもう一つは国王ダリオスは正真正銘のクズだということ。

  バルバドさんやカトルフィッシュのように悪魔に操られていたからサラを誘拐したのかと思ったがどうやら勘違いだったようだ。

  あいつは正真正銘のクズだ。



  ダリオスが魔剣を手にする。

  これは戦わなきゃいけない状況だろう。


  おれはマルチェロ戦で全てを出しつくした。

  今のおれは一人では戦えない。


  アイシスは女の悪魔との戦闘で力を使い切ったらしく、しばらくは動けなそうだ。

  ここはハリスさんにお願いするしかない。


  おれはハリスさんを見つめる。

  彼女もおれの意図はわかってくれたようだ。


  「私もあの男とは決着をつけないといけないと思っていました。共に戦いましょう!」


  おれはハリスさんと融合(シンクロ)する。

  そして、足りない魔力を彼女から分けてもらう。


  おれの身体に魔力が染み渡る。

  よし、これならもう一度戦える!



  こうして、国王ダリオスとの最後の戦いがはじまるのであった。



  これはおれとハリスさんにとって大切な人を守り抜くための戦い。

  そして、王国の未来を守るための戦いである。

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