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99話 入学式は退屈

  おれはクラスで知り合ったネコ耳少女の獣人ネルと一緒に入学式の会場である第1アリーナへと向かった。

  周りには一緒に教室を出たクラスメイトたちも多くいる。


  歩いていて思ったのだがAからEクラスの教室がFクラスの近くにないのは差別されているからなのだろうか?


  あと、何だか周りのクラスメイトたちにやけにじろじろと見られている気がする。

  これは気のせいなのだろうか?


  そんなことを思いながら入学式会場に到着した。




  ◇◇◇




  入学式というのは退屈だ。


  先生たちの話は堅苦しくて長い。

  偉い人たちの話も同様だ。

  それに話はワンパターンなのだ。



  七英雄様たちは偉大なるお方たちだった。



  そして七英雄を多く輩出(はいしゅつ)したカルア王国もまた偉大である。



  賢者テオ様が創設したカルア魔術学校は世界最先端の教育と研究がされている。



  この三年間しっかりと学び、七英雄様たちが築き上げた人間界の平和の維持と発展のために尽力してください。



  みんな似たり寄ったりで話す内容はこんなものだ。

  おれは飽きあきする。


  あーあ、早く終わらないかな……。


  ここ第1アリーナはアリーナというだけあって広い。

  競技場だけでなく多くの観客席も存在する。


  今は入学式ということもあり観客席に人はいないが数千人規模の人たちが座れるだろう。

  いや、もっとか……?

  学校の施設の一つにしてはデカすぎる。


  そして、おれたち生徒を含め入学式に参加している人たちは競技場に用意された椅子に座っていた。

  まぁ、競技場といってもスポーツのラインなどが引いてあるわけでもなく土が綺麗に敷かれているだけだ。

  きっと、魔法の実技授業などに利用される場所なのだろう。


  そして、おれが最も驚いたのはアリーナの中央に巨大なモニターが設置されていたことだ。

  そこに祝辞の挨拶をするお偉いさんなどが映し出されている。

  おれはこの映像をリアルタイムで映し出しているモニターに興味津々だった。


  いったいどういった技術でこれを実現しているのだろうか?

  やっぱり魔法の一種なのか?


  ここに到着したときにネルに聞いてみたがネルも知らないらしい。


  原理はわからないがこれは七英雄のテオが作ったとされているものだそうだ。

  おれは改めて七英雄たちのすごさを実感した。


  七英雄のテオが作ったというのならば、おそらくこれは魔道具の一種なのだろう。

  七英雄って魔族と戦えただけでなくこんなこともできたんだな。


  そして、モニターを見ながら飽きあきとしていたおれの視界に一人の男が入る。

  灰色を基調としたスタイリッシュなデザインの制服に身を包んだ男だった。


  おそらく生徒なのだろう。

  背は高く細身で眼鏡をかけた爽やかなイケメンだ。

  髪色は青っぽい。


  おれはこの人をどこかで見かけた気がしていた。

  どこだっけ……?


  すると、男が話し出す。


  「生徒会長のレイ=クロネリアスです。新入生のみなさん入学おめでとうございます」


  どうやらこの人は生徒会長らしい。

  まぁ、見るからに真面目な生徒会長って感じだな。


  「本校は世界でも稀な七英雄様が創設なさった学校であり、ここでの教育は——」


  生徒会長といえど話す内容は他と同じなんだな。

  おれは何度も何度も聞かされた話にうんざりとする。

  だが、興味深い話もあった。


  「みなさんが楽しみにしている本校の行事として、毎年夏に行われていてる『武闘会』があるでしょう。これは世界中からいらっしゃる要人たちも見学される催しです」


  武闘会?

  そんなイベントが存在するのか。


  ここは剣と魔法の世界なのだ。

  ドンパチ生徒同士で戦うのだろうか?


  「改めて説明すると、この武闘会には一年生から参加できるものです。希望者は夏までに自分の技術や能力を磨いておくといいでしょう。この武闘会における成績で将来の道が切り開けるということはよくあります」


  ほうほう。

  一年生から参加できて成績次第では将来が約束されると。


  エリート街道から外れているらしいFクラスにいるおれには大事な催しかもしれないな。

  おれは将来について真面目に考えたことがない。


  この前まではサラと一緒に学校に通うための資金集めのことは考えていたが、いざ学校に通えることになったら卒業後のことも考えねばならない。


  父さんは外交を任されている大臣らしいがおれは父さんの後を継ぐのは無理だろうな。

  なんたっておれば勉強ができないしコミュ症なのだ。


  大臣という仕事が世襲制かは知らないけれど、とてもじゃないがおれにはできない。

  おれは気ままに冒険者でもやって暮らすのかな。


  そんなことを考えていたら生徒会長の話は終わった。


  「それでは以上で私の話は終わります。みなさんがよい学校生活を送ってくれることを願っています」


  モニターから彼の姿が消え、次に先ほど挨拶をした校長先生が映る。

  本当は学長と呼ばれていたがおれの中では校長先生なので彼を校長先生と呼んでいる。


  「それではこれによりカルア高等魔術学校入学式を閉式とします」


  時間としては1時間ほどだったのかもしれないがとても疲れた。

  今日はこの後何もないらしいしサラと帰宅するかな。

  授業はもう明日から始まるらしい。

  これに関しては憂うつだ……。




  ◇◇◇




  そんなこんなでドーベル先生の指示に従っておれたちは教室へ戻った。

  今日は自由放課なのでもう帰っていいそうだ。

  クラスメイトたちはどんどんと教室を去っていく。


  どうしようかな。

  サラを迎えに行ったほうがいいのかな?


  おれもサラも今日は午前で終わるとは思っていなかったので一緒にお昼を食べる約束をしていた。

  いや、正確にはさせられた。


  確か迎えに来いって言ってたよな。

  それから一緒に食堂へ向かえばいいのだろう。


  おれはそう思い立って教室を出ようとした。


  「アベル! もう帰るの?」


  後ろからそう声をかけてくるのはネルだ。


  「うん、ちょっと行くところがあるけどね」


  おれは声をかけてきたネルに答える。


  「それってもしかして食堂?」


  「えっ……そうだけど」


  「ほんと!? 私も行こうと思ってたのよ。一緒にいこ」


  ネルも食堂に行きたかったようだ。

  だけど、おれはサラと行こうと思ってたんだけどな……。


  おれはネルのことをよく知らない。

  Fクラスにいるのだからもしかしたら問題児なのかもしれない。

  今日一緒にいる感じでは悪い子ではなさそうだったけどね。


  目の前には笑顔のネルがいる。

  それに、こんな可愛い女の子の願いを断れるわけなんてないよな。


  「わかった、いいよ。でも、他にも——」


  「おっけー、それじゃ一緒にいきましょ!」


  ネルはおれに飛びついてきておれの右腕に絡みつく。


  なっ……!?


  おれは突然の出来事に驚いてしまう。


  なんで女の子がおれの腕に!?


  転校生がカッコよく見える現象みたいなのが起きてるんですか?

  それともこれが獣人なりにコミュニケーションなんですか?

  それに、これが俗に言う『スクールラブ』というやつなんですか!?


  おれは理解不能なこの現実に脳内がショートしてしまっている。


  女の子の華奢な身体といい匂い。

  学校生活さいこうです!!


  でも、いつまでネルはおれにくっ付いているつもりなのだろうか……?

  この様子をサラに見られたらまずい気がする。

  廊下に出たらネルに歩きづらいから離れて欲しいとさりげなく伝えるか。


  そんなことを思いながら教室の扉を開けた。


  すると、目の前にはサラいた。


  サラがいた……?

  どうしてここにサラがいるのだろうか?


  「あら、ごめんなさいね。私たち行くところがあるからそこをどいてくれるかしら」


  ネルはサラにそう告げる。


  おわった……。


  おれの中で人生終了のお知らせが聞こえた気がした。


  「私がめんどくさいやつに絡まれていた間、あなたは女の子と楽しくいちゃいちゃしてたのね……」


  サラのイライラが募っていくのがよくわかる。

  なんとか弁明しないと。


  「えっと……この子はただの友だちだよ!」


  なんとも浮気現場を目撃された男が一番使いそうなセリフを使ってしまう。

  このセリフを使うやつは絶対黒だと思っていましたがそうとは限らないですね、はい。

 

  サラは魔法を使って両手に炎を出した。


  あぁ、今のサラには何を言っても無駄な気がする……。

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