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0話 地球からの転生者

 そっと(まぶた)を閉じれば今でもあの頃の記憶が蘇る。

 おれは地球と呼ばれる星で人間として暮らしていた。

 名前は確か湊蓮みなとれん

 享年17歳だ。



  ——最高の人生だった——



  なんて言葉とはかけ離れた日常を送っていた。


  病院にある殺風景で真っ白な部屋。

  そこがおれの暮らす場所だった。


  病室のベッドの上での生活。

  ただ死ぬことを待っているだけの日々だった。


  窓から外を見れば空高くそびえ立つビルが立ち並んでいる。

  そこで暮らすのはきっと自分には遠く及ばない生活を送る人々なのだ。


  自分の生活と比べると虚しさを感じた。

  目の前に広がるその光景がそして現実が憎たらしかった。


  おもしろくもないたいくつな日々だ。

  やることなんて何もない。

  でも、二次元文化は割と好きだった気がする。


  漫画やラノベを読んで時間を潰し、時間になったら運ばれてきた食事を食べて薬を飲む。

  そんな生産性のない日々を送っていた。


  この生活に満足することなんてなかったが、不思議と不満もなかった。


  学校に行ってた頃は勉強についていけなかった。

  先生の話す内容は理解できなかったしノートを取って後で見返してみても意味がわからなかった。


  テストで一桁の点数を取ることも増えたがべつに気にならなかった。

  まあ当然だよなくらいにしか思わなかった。


  なんで自分はこんなことを学ばなければいけないのかがわからなかった。

  まあ、わかりたくもなかったのだが——。


 運動ができるかと言われれば運動もできるわけではなかった。

 スポーツでは活躍なんて一度もできなかったし体力テストはクラスで下から4番目だった。

 ちなみに女の子も入れてだ。


 サッカーやドッヂボールをするときにチームを分けをすれば邪魔者扱いされることだってあった。

 ドラフト式でチームを決めることになれば最後の方まで残り、ランダムに決めればなんであいつと同じチームなんだと指をさされた。

 体育なんてしたくなかったしサボって保健室で過ごすことも増えた。


 それに対して心配してくれるクラスメイトがいるのかと思えば 「休んでくれてありがとう」などと声をかけてくるやつしかいなかった。

  まあ、心配などしてほしくもないのだが——。


 友だちなんていなかった。

 給食中に話すクラスメイトや移動教室で一緒に行ってくれる人ならいたが彼らは友だちではなかった。


 都合のいい人なのだ。

 だからこそ、何度も嘘をつかれた。


 掃除代わりにやっておいてくれ。今度おまえの当番のときに俺がやるから——。

 なんてことは何度もあった。

 もちろんそんな約束守られたことはなかった。


 「なあ、おれ今日ひまだし一緒にゲームしない?」

 と言われた翌日に、悪い急に他の友だちに誘われちゃってさ。家にいなくて悪かったな——。

 なんてこともあった。


 何かあれば簡単に裏切るし換えの効く道具のような物だと思っているのだろうか。

 まあ、こんなやつらのような友だちなんていらないのだが。


 おれの人生は孤独だった。

 悲惨だった。

 無力だった。


 こんな毎日を過ごしていて楽しいはずはない。

 そんなときにおれは自分の体が病気にむしばまれていることを知った。


 一番最初に思った。



 ——やっとこの世界から解放される——



 そして、不幸な自分の運命を呪うこともなく受け入れたのだ。


 幼い頃に両親を亡くした。

 辛く悲しく塞ぎ込んだ。

 学校に行っても居場所などなかった。

 自分は不適合者なのだと自覚した。


 家に帰れば叔父と叔母がいた。

 二人に心を開くことはできなかった。

 病気になっても見舞いに来る人はいなかった。


 不遇な人生だったと思う。


 おれは何のために生まれてきたんだろう。

 涙は溢れてきたんだ。


 全ての境遇を受け入れたはずだった。


 ふざけるなよ!

 なんでおればっかりこんな風に苦しまなきゃいけないんだよ……。

 おれが何をしたっていうんだよ……。


 弱々しくなった細い腕を病室のベッドに叩きつける。


 激しく自分の人生を呪った。

 周りの人間を呪った。

 この世界を呪った。


 おれだってみんなみたいになりたかったんだよ。

 優しい友だちが欲しかった。

 温かい家族が欲しかった。

 勉強も運動も人並みにできるようになりたかった。


 お願いだよ神さま。

 もしもいるのならおれの人生を救ってくれよ。

 やり直させてくれよ。

 こんなの不平等じゃないかよ。


 叶うはずのない願望がおれの心の中をうごめく。

 そんなことを思いながらおれの病気は進行し、おれは17年の短い人生の幕を閉じた——。




  ◇◇◇




 そして、おれはこの異世界へと転生したんだ。

 ここは剣と魔法が織り成す世界だった。

 弱肉強食のこの世界でおれの新しい人生は幕を開けた。


 この世界でおれは孤独にならない。

 悲惨にならない。

 無力にならない。


 そう心に誓った。


 これはかつて地球で不遇な人生を終えた少年が人生をやり直す物語。

 異世界で《漆黒の召喚術師》と呼ばれたある少年の物語だ。


 挿絵(By みてみん)

初小説&初投稿作品です。

拙いところもありますが頑張ります!

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