プロローグ キャラクターメイク②
よく言われる話だけど、確かにこういう閉鎖空間だといったいどれくらいの時間が経ったのかまったくわからない。
一面真っ白の大きな部屋にあれから変化はない。
透明のタッチパネル?に表示される文字が、僕が「操作」することで応答してくれるだけだ。
触れば反応するとわかってから、いろいろといじくってみた。
そして何時間かはわからないけど相当の時間をかけてわかったのは、どうやらこの文字列を触ることでステータスの割り振りらしきことができるみたいだということ。
つまり書いてあることそのままだった。
最初に見たスキルの設定画面では、様々なスキルを五段階で取得することができた。
一段階ごとにそれぞれ1000、2500、10000、25000、100000ポイントを消費するようで、つまり一つのスキルを最大まで獲得するのには138500ポイント必要になる計算。
スキルは100種類あった。
手持ちポイントの半分強で全部取れることになるので、とりあえず全部取ってみることにした。
どうせどのスキルが有効かも、なんなら具体的にどんなスキルなのかもわからないし、後で戻っていじることが出来るとも限らないので、不安に負けてしまった感じ。
次に基本能力値を決めることにした。
ちなみに、スキル選択画面の一番下に戻るボタンがあって、前の画面を開いて基本能力値の文字のあたりを触ったら移動できた。
どうでもいいけどこの操作板(といっても完全な無色透明のなにもない面)は手触りがなんか生温くて気持ち悪い。
基本能力値は、
体力
精神力
物理攻撃力
物理防御力
精神攻撃力
精神防御力
敏捷性
知力
運
の9項目がある。
それぞれを1ポイント単位で強化することが出来るようで、上限は1250000ポイントまでだった。
いちいち数字が大きくて厄介だなぁ。
最初はポチポチ上げていたけど、いつまでも止まらないので長押ししてみたらどんどん数字が大きくなった。それでも上限に達するのには数字を眺めているのが嫌になるくらいの時間がかかってしまった。
不思議なのはそれだけの時間が経過しても眠くもならないしお腹も空かない、トイレにも行きたくならないことだった。
でも、この気怠さだけは相変わらずだから、意識だけがあるとかそういうのとは違うみたいだ。
これが僕の信じる一番の肉体の感覚、僕にとって最大の、そして最悪の、生の実感。
そういうわけで、いろいろ調べてはみたけれど、結局上から全部取って行っても最後の運以外は上限まで上げられてしまった。
やたら大きな数字を扱わせて、たっぷり時間をかけさせたわりに雑な話だ。
運だけが100000ポイント低くなっているけど、全体から見ればさほど大きな数値でもなし、なにより今から全体をいじるのも面倒だったのでこれでステータスを決定することにした。
一応気になったので、スキル画面に戻って今からでも編集が可能かは確認してみた。
問題なくスキル画面を開き、体力強化の星を一つ減らすと、残高に100000ポイントが戻る。
また星を五つに戻すことも普通に出来た。
やはりしっかり考えて編集していくことが出来る仕組みのようだったけれど、僕はもう半分面倒になって来てもいたので、先程の「運以外全てマックス、運もほぼ上限値」の状態で先に進むことにした。
先に進むことにした、のはいいのだけど、文字表示のどこを探してみても、進むとか、決定とかいう表記がない。
矢印とか○とか、それらしいものも何もなく、ただとにかくステータスの編集が出来る状態があるだけ。
しばらく悪戦苦闘して、ますます面倒になって来た僕は画面の文字を無視して部屋のすみに寝転んだ。
だだっ広い部屋の真ん中にいるのはなんか心細く感じたので、特に何があるわけでもないけど画面から離れた部屋の角に。
「……なんなんだろ、これ。
これっていうかこの状況……?」
何に使うのかもよくわからないまま、目の前に現れた文字をあれこれいじっていて意識していなかった(むしろ意識しないようにしていたのかもしれない)けど。
やはりこんなのはあまりにも異常なことで、僕はここで初めて、つとめて冷静に、僕が今どうしてこんなところにいるのかを考え始めた。