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プロローグ キャラクターメイク①

本日より投稿して行きます。

よろしくお願い申し上げます。




『ポイントを使用しキャラクターステータスを決定して下さい。

残りポイント 25,000,000』




意識が朦朧としている。

僕の生活はこの数年いつも気怠さと共にあるけれど、さすがにこれは気怠いなんて言葉で納まるものじゃあない。

頭痛もひどい。



真っ白い部屋。



だいたい、一般的な体育館くらいの大きさかな。



床も壁も天井も、曇りなく真っ白で真っ平らな部屋。

部屋の中心で頭を抱えている僕の眼前に大きな文字が浮かんでいる。



『ポイントを使用しキャラクターステータスを決定して下さい。

残りポイント 25,000,000』



空中に浮かぶ、真っ黒で立体的な文字。

影は落ちていないから実際の物体ではないのかもしれない。

でもこの部屋の光源がよくわからないから、影が出ていないだけでやはり実体があるのかも。



『ポイントを使用しキャラクターステータスを決定して下さい。

残りポイント 25,000,000』



何を言いたいのかよくわからない。

そもそもここはどこなんだろう。



僕は何をしていたのだっけ。



直近の記憶を探りながらヨタヨタと立ち上がり、なんとなく文字に向かって手を伸ばした。


指先が何かに触れる感覚。


反射的に手を引いて数歩後ずさる。


空中に浮いていた文字が砂つぶを散らしたように消え去り、別の文章が浮かび上がった。




『キャラクターステータスの編集


基本能力値

スキル


残りポイント 25,000,000』




「……あー、びっくりしたぁ」


心臓がうるさいくらいに鳴っているのを胸元に当てた手で強く感じながら、誰に話しかけるわけでもない純粋なひとり言をつぶやいた。

やたら広い空間に一人きり、物音一つしない環境で自分の心臓の音だけが妙にくっきり聞こえて、さっきの自分の慌てふためく様が何故か気恥ずかしくなってしまい照れ隠しをするように言葉を続ける。


「これ、今……触った……よね?反応した、ってこと?

タッチパネルなのかな……?」


おそるおそる手を伸ばす。

何かに触れる感覚。


しかし今度は何も起きない。


さっきより少しだけ強く、同じあたりに触れてみる。

やはり何も起きない。


あたりを見回し、様子を伺ってみるけど、真っ白の体育館に静寂だけがある。



うるさかった心臓の音がゆっくり静まって行く。



「なんなんだよー、もう……」



頭痛は相変わらずだけど虚脱感はいくらかマシになってきた。

おかげで少しは落ち着いて考えることが出来るようになる。

改めて、宙に浮かんでいる文字列をまじまじと眺める。



『キャラクターステータスの編集


基本能力値

スキル


残りポイント 25,000,000』



キャラクター?

ステータス?

能力値にスキル、ポイント……?


「ゲームかなんかだよね、どう見ても」


あんまりゲームとかはやらないのではっきりとは言えないけど、単語から察するに何かしらのゲームなんじゃないかなとあたりをつける。

何かしらのゲーム、に、記憶の判然としていない生身の自分がこんな形で巻き込まれている事実に急にとてつもない恐怖を覚えた。




怖い。


意味がわからない。


理由もわからない。


ここがどこで今がいつでなぜここにいるのか、この後僕はどうすればいいのか。


わからない。


怖い。


わからないということがただ怖い。


恐怖に怯え理解不能さに混乱し、文字通りに身体がガタガタと震え出して、ついにはまたその場にうずくまってしまう。




ただ、意味不明の混乱の中でも自身の肉体の感覚だけがはっきりと、これが現実であることを突き付けてくる。


この気怠さ、忘れもしないこの気怠さこそは現在の僕の生活のほとんど全てと言っていいもので、夢とかVRとかそういうものではない、僕の生身の身体が今ここにあることだけは確かだ。


忌々しくもその気怠さに意識を向けているうちに少し落ち着きを取り戻した。

それがなんであれ、見知ったものというのは安心感を伴うものであるみたいだ。



とにかく、この文字列だけが今この部屋で僕に反応を返してくれる唯一のもの。


意味や理由なんていくら考えても怖いだけなら、思考停止も止むなし、とにかく目の前の現実に対応するんだ。



先ほどの位置、文字列全体の右下の空白部分にいくら手を伸ばしても、目に見えない何かに触れる感覚があるだけでこれ以上なんの変化も得られなかった。


思い切って手のひらからペタリと触れてみる。

生ぬるいガラスみないな手触りだ。

特に何も変化はない。


触れられる面の端がどこまで延びているのか、そのままペタペタと触って行く。

文字からある程度離れたところで何にも触らなくなった。


逆に文字列の方へ辿って行く。

ついには文字そのものに手を伸ばしたけど、どうやらこの触れられる面は文字より手前にあるようで、文字自体に触れることは出来ないみたいだ。


そのまま辿って行くと、スキルという文字の付近でまた文字列が砂のように崩れて消えた。


そして新しい文字列が描き出される(やたら立体的なので、描き出されるというより空中に発生するように見える)。




『スキル


体力強化 ☆☆☆☆☆

物理攻撃力強化 ☆☆☆☆☆

物理耐性強化 ☆☆☆☆☆

魔法攻撃力強化 ☆☆☆☆☆

魔法耐性強化 ☆☆☆☆☆

敏捷性強化 ☆☆☆☆☆ ▽ 』




とりあえず、画面?を動かすことには成功したみたいだった。

ただ、変化した文字列を落ち着いて眺めるには、思いがけずまた急に文字が消えたり出たりしたせいですっかりうるささを取り戻した心臓が落ち着くのを待たなくちゃならない。

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