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ワールド・ゼノ  作者: けーいち
2/2

始まりの死

 教室は不気味な静寂に包まれていた。突然教室に乱入してきた筋肉だるまの化け物にどうしていいか分からず動けないでいたのだ。

化け物…厳密にはゼノ・ヒューマンが壁を破壊したのち、動かないもんだからこっちもどうしたらいいか分からない、だがしかし


「グオッ!グウウウゥゥゥ…」


突然化け物が耳を塞いでうずくまったかと思えば


「この音を止めろクソがあああああ!!!」


と叫びながら教室に足を踏み入れてきた


「キャアアアアアアアアアア!!」


教室は大パニックになり、みんな廊下に逃げ込む、もちろん俺も


「うがああああああ!!」


化け物はこっちを追いかけてくる。教室のドアが小さいから出てこれないんじゃないかという一瞬考えたけど、そんな考え吹っ飛ばすくらい豪快に壁を破壊しながら出てきた。

授業が終わって、廊下に出てきていた他クラスの生徒も巻き込みながら学校内で突然の死の鬼ごっこ。心臓がバクバクである。

そこからは、しばらく逃げまわっていた。化け物のスピードはすさまじいが、学校内は小回りがきくし、校内の構造を知っているおかげでなんとか逃げられていた。


とはいえ完全に撒くにはどうしたらいいか…と考えていたところでふと我に返る。

ちょっと待ってくれ…なんで俺が追われてるんだ?と


最初に目が合って、そのあともずっと自分を追いかけてくるもんだから、頭がパニックなのもあって疑問に思えていなかった。

だが確かに、たくさんの人間が逃げまどい、いろんな方向に人が逃げているはずなのに、化け物はまっすぐ自分を追ってくるではないか。これは明らかにおかしい。


音がどうとかいってたけど、まったく心当たりはない。でも追われているのは確かである。

そして自分が追われていることを確信した圭人は、あることを考える。


(学校の外に逃げたほうがいいんじゃないか…!?)


校内は狭く、小回りが利くがその反面、自分と化け物の鬼ごっこに巻き込まれた人たちがなぎ倒されているのがさっきからちらほら見える。

校内のほうが逃げやすいし、本当はやりたくなかった圭人だが、迷っている間にもけが人は増えていく


(クソ…!本当はこんな怖いことやりたくないけど…!)


圭人は全速力で走り、決死の思いで学校の外へ出る。当たり前のように化け物も学校の外へ出てきて追ってくる。町には既に避難警報が出ていたようで、人の気はない。


そのまま圭人は全速力で複雑な路地へ入る。


(見晴らしのいいところでスピード勝負したら確実に負ける!俺の唯一のアドバンテージ、土地勘を生かして撒くしかない!)


と、複雑な路地を何度も曲がり、化け物の視界から外れる。

そこからは体力が尽きるまで走り続け、出来るだけ遠くに離れた。

全速力で走り続けた圭人だがここで


「あ、行き止まり…」


行き止まりに差し掛かる。だが圭人は焦ってはいなかった。化け物は撒けた自信があったし、かなり遠くにも離れたはずだ。とりあえず安心できるくらいには逃げた。


「とりあえずここで休憩しながら身を隠そう…ハァ…ハァ…」


圭人は床に座り込むとゼェゼェと息を切らす。体力の限界まで走ったのだ。


「それにしてもあいつ何者なんだ…?それになんで俺を追ってくるんだ…?」


圭人が呟くと


「それはてめーがその『音』を出してるからだ」


化け物が自分の来た道からやってきた、どうやら普通に追ってきたようだ


「んなっ…!どうやって追って来たんだ!?完全に視界から離れて逃げてきたはずなのにッ!!」


圭人が驚くと


「当たり前だろ!!そんなバカでかい音出してりゃ嫌でもわかるぜ!!」


と逆ギレされてしまった


「それだそれ!!音ってお前さっきからなんのこと言ってんだ!?まったく意味が分からねえ!俺から音なんて出てねえだろうが!!」


疲れと恐怖で圭人も声を荒げる、というか全く身に覚えのないことでここまで追われていることに若干怒りさへ感じていた、すると


「あぁ!?さっきからガンガン出てんだろうが!!めちゃくちゃに不快な音がよぉ!!」


言うと同時にまた化け物は


「うおっ!?」


とまた耳を塞ぐ。確かにジェスチャーだけ見るとうるさい音を耳でふさいでるって感じだが、やはりそんな音は聞こえないし、本当に意味が分からない。そう思っていると


「だからその音をやめろってんだぁぁぁぁ!!」


と言いながら化け物が自分の体を思い切り殴る

まるで野球ボールのように飛んで行った圭人の体は壁に激突し、地面に転がる


(え…?)


圭人は一瞬なにが起きたか分からず、自分の体を見る

そこには血まみれで、素人目から見ても分かるくらい助からない量の出血している自分の体があった

すべてを理解した圭人だが怒りも悲しみも、嘆く元気すらなく、既に意識は落ちる寸前だった

ただ一つ思ったことは


(俺はここで死ぬのか…?こんなわけ分からない死に方で俺の人生終わり…?)


ということだ。

だがそんな圭人にどこからか声が聞こえてくる。聞いたことなんてないはずなのに、何故か知っている。懐かしいような声だ。


「いや、君の人生は終わらないよ。ここから始まるんだ」


落ちる意識の中、その声だけがはっきりと聞こえた


(誰…?)


そう思ったのが最後、圭人の意識は、深い闇に落ちていった。

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