犯人の思考
中村は淡々と語る。
これまでの捜査状況を含む全てを。
、、、、。
「なるほど。そういう状況か」
影山は頷き、コーヒーをすすった。
コーヒーから立ち上る湯気が部屋の湿度を1度や2度上げた気がする。
「どうだ、困るだろ?1がついた死体なんてごまんとあるんだ。例の事件と関係する死体なんて見つかるわけないだろう?」
言い終えると
中村は諦めをかくさずにため息をついた。
「確かに1のついた死体はこの世にあふれているでしょうね」
なにやら含みを持たせて影山が告げる。
中村はその含みに気づいてすかさず続きを促した。
「と、いうと?何か気づいたのか?」
コクン、頭が縦に振られた。
「中村さん、よく考えてみてください。あなたは犯人の気持ちを無視しすぎているわ」
中村は首を捻って応答した。
「そう、わからないでしょうね。だってあなた達は上の命令をこなすだけだもの。これは人海戦術に頼りすぎた警察の弊害ね」
いったいどういうことだろうか?
「いい?ここで考えるべきは「1」をどうやって見つけるかではないのよ。ここで大切なのはなぜ犯人は死体に"2"という文字を残したかということなの」
「まず、犯人がわざわざ文字を書き残したことに注目して欲しい。わざわざ犯人特定のヒントになるようなことをした理由はなんですか?何か私たちにメッセージを残したかったのではないでしょうか?」
「そうだとすると2という文字があくまで2番目の死体だと仮定した時、1のついた死体が未だに判別できていないのは不自然ではありませんか?メッセージは発見されてこそ意味があるものです」
中村はハッとして言った。
「まってくれ、それはつまりあの文字が意味するのは2番目の死体ではないということなのか?」
「少なくとも今の犯人の動きを見る限りだとそう思います。ではほかに2から連想できるものはありますか?」
「2、ツヴァイ、セカンド、2次元、2番、2年、2日、、、、、、、」
「どれもパッとしませんね」
「これ以上分かることはないのか?」
「私が分かることは、、、あと一つだけですわ」
「すまない、教えてくれ」
中村にとって今頼れるのは影山しかいなかった。
だから中村は必死になって影山にすがりついた。
「もしこれ以上警察の捜査に進展が無かった場合、犯人からコンタクトがある。メッセージを解くヒントが教えられるはずね。だけどできればヒントは受け取りたくないのよ」
「なぜだ?ヒントをもらえた方が捜査しやすいじゃないか?」
影山の表情が歪み、応えることを拒否しているように見える。
「・・・・・・。」
「影山?」
「人がまた死ぬわ。ヒントが出たら人が死ぬ」
「どういうことだっ!?」
「この犯人ならばメッセージを何に載せると思う?」
言われなくても分かる。
犯人は死体にメッセージを残した。
ならば、、、、
次のメッセージも死体に載せる可能性が高い。
刑事である中村にとって許せないことだった。
「それだけは避けなくちゃならない。俺は刑事だ。刑事は人を守る仕事だ。どんな命も尊い命。俺たちが守る。それが刑事だ」
「そうね、、、」
影山は浮かない表情で応えた。
どこか諦めたように見える表情だ。
…………
「あとはあなた達の仕事よ。頑張って犯人からのメッセージを読み解いてちょうだい、、、頼んだわよ」