第6話
翌日。多くの護衛、もとい見張りに囲まれながらランドルの授業が始まった。ここから逃げないようにとのことなのだろうけど正直邪魔。
「ではランドル。始めようか。まずは魔力を使えるようになれば良いのじゃったな。」
「ええ、あなた自身は魔力の塊です。つまりはその魔力そのものを減らせばお嬢様への負担が減り、お嬢様が出てこられるようになるのです。」
「そして出てきた嬢ちゃんにわしの魔力の制御をやらせるということじゃな。よし、では魔力の使い方を教えろ。」
作戦は簡単。わしの魔力減らして嬢ちゃんを出して、魔力を制御させる簡単なお仕事じゃ。そうとわかればとっとと変わってやろう。
「ですが魔力をどうやって減らしましょうか…」
「考えろランドル。わしはわからんからな。」
まあそんなに簡単にはいかないということか。わしの状態では魔法は使えない。つまり魔力を減らすことはできない。つまりなんらかのわしの状態でも使える魔法を考えなければならない。
ランドルは昨日からずっと考えていたらしく目の下にクマができている。わしも一緒に考えてやりたいところだが、魔法なんてものは全く知らないので考えようがない。
なのでランドルが考えている間、わしは筋トレに勤しむ。ゆっくりと動いていても30分で体が動かなくなるという効率の悪さ。休憩がてら瞑想でもするか。
座禅を組み精神を統一させ、心を安らげる。どうせなら気功をやっておくか。気功とは漫画やアニメにあるようなすごい力、というわけではない。単純に血の巡りを操ること。健康法としても知られているが武術にも使われている。
例えばこうして指先に血を多く送り込めば指先を固くできる。手を大きく振った時に指先の痺れてくるあの感覚。あれが血の溜まっている状態。水の張った皮袋が丈夫になる感じだ。これを全身好きなところでできるようになると防御にも攻撃にも使える。万能な技じゃ。
「あ、あの…」
「ん?どうしたランドル。何か考えついたか?」
「い、いえ今のは?」
「気を体にめぐらせていただけじゃ。それがどうしたか?」
「気?それはわかりませんがものすごい魔力の高まりを感じたんですが…」
「魔力の高まり?こうか?」
指先に気を巡らせる。特に変わった様子はない。しかしランドルを見てみると目を輝かせ、喜んでいる。
「そうか!そうかそうか!単純な魔力による身体強化魔法!扱いそのものは難しいけど術式を介さないこれなら問題なく使える!」
「あ〜…つまりこれを使っておけば良いのか?」
「ええ!あ、魔力を消費させるためには何か動いたり殴ったりすると効率的です。」
「なるほど…つまりこうか?」
気を巡らせたまま突きを放つ。なんとも遅く弱々しいが、この少女の体でこのレベルの突きを放ったのは初めてだ。
「その調子です!それを何度も行なって魔力を消費させましょう!」
「ランドル…腕が…」
「どうしたんです?」
「今の突きで腕が上がらん。」
「………」
大事な問題。この嬢ちゃんやっぱ貧弱すぎる!
あれから毎日、地獄の特訓が始まった。気を巡らせた突きと蹴りを1発ずつ行うたびに、魔法師たちが集まり回復魔法を行う。この回復魔法は便利ですぐに体の調子が元に戻る。1回ごとに体が鍛えられているのがわかるがそれでも時間がかかる。
毎日魔法師たちが回復魔法のせいで全員魔力切れになるまで特訓を行い、魔力が切れた後は普通の筋トレを行う。通常よりも圧倒的に良いペースで筋肉がついていくがまだまだ足りない。
1発だった突きが2発に、3発にと徐々に上がってはきているが魔力は全く減らない。むしろ増えつつある。
魔力も使えば使うほど鍛えられる。つまり魔力と筋力の両方が均等に鍛えられているのだ。イタチごっことはまさにこのことで一向に終わりが見えない。
2週間経った頃にようやく人並みに体が動かせるようになり、3週間目からは護衛の一人と手合わせするようになった。4週目で護衛の一人を倒せるようになったので組手の人数を一人増やした。
もうすぐ学校が始まるのでそれまでにはなんとかしたいのだが、一向に魔力量が減らない。それから5週目で組手の人数は3人になり、現在6週目。
「ほれ、次。誰だ?」
「はい!お願いします!」
現在は護衛たちの訓練に混ざり毎日組手に勤しんでいる。さすがに子供の、しかも少女の体では力負けしてしまうので全身に魔力を巡らせて組手をしている。これならいい感じに魔力が減らせると思ったのだが、わし自身も魔力の運用がうまくなりすぎて、少ない魔力量で体を動かせるようになってしまった。
魔力を減らすために多く魔力を纏わせると、護衛たちに怪我人が出てしまう。だから魔力を減らさなくてはならず、1日では使い切れない。この調子だと三日三晩魔力を使い続けても魔力が尽きるとは思えない。
学校が始まるまで後1月。何か打開策はないものか。
「…おい………の話…」
「ああ………らしい。」
「そこ!何をコソコソ話しているんだ?」
「す、すみません。」
「実は近隣の村の周辺でオーガを見たらしくて…」
「オーガ?」
記憶の中にうっすらとあった。オーガとは体長2mを超えるモンスターで岩も軽々と粉砕させる恐ろしい化け物だと。
「それが村の近くにいるんじゃ危険じゃろ。」
「え、ええ。ですので情報の真偽を確認しつつ討伐隊を編成しようという話が出ているらしいです。」
「なるほどな…オーガか……」
「お、お嬢?」
「よし!オーガ狩りにいくぞ!」
「はぁ!?!?」




