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3話

 魔王の話の後、何処からかローブを来た人型が湧き出して来た。手に持った杖のような物を一振りすると、会場の奴らが徐々に消えていく。


 隣にいたワニ人間も、気付けば消えていた。次にあったときは、おそらくダンジョンバトルの中だろう。負けるとは思わないが、出来るなら戦いたくはないな。


 あいつ、魔王の話中もちょくちょくオレを威嚇してたから苦手意識が……。


 まあ、よっぽどの縁が無い限り、再会する可能性は低いと思うが。てか、あのワニ人間と縁があるとか考えたくない。


 そんなことを考えてると、身体が淡い光に包まれる。どうやら次はオレの番のようだ。


「――おお?」


 心地よい浮遊感がする。おそらく、これは転移魔法だろう。オレの記憶が正しければ、これからそれぞれに与えられたダンジョンに転移させられるはずだ。


 先に消えた奴らは、もう自分のダンジョンに到着しているのだろう。


 ローブ姿の人型をもう一度見つめると、オレの視界は闇で包まれた。









「ここが……ダンジョンか」


 転移した先は、四方を石で囲まれた部屋だった。周囲に何があるのか、ぐるっと見渡して見る。どうやらベッドに椅子、本棚と生活に必要な物は配置されているようである。部屋の角に机が配置され、その上には光を放つダイヤ型の水晶体がある。


 ダイヤ型の水晶体には見覚えがある。コンシューマー版のゲームでは、これがダンジョンコアだった。ゲームではコアに向かって話しかける事で、メニュー画面を開くことが出来た。


 他に何か無いかと調べて見るが、他にめぼしい物は見付からない。となると、ゲームと同様に、ダンジョンコアを操作する事で自分のダンジョンをカスタマイズしたり出来るのか?


 物は試しだ。警戒していても仕方がない。


 オレは机の上に置いてあるダンジョンコアに触れてみた。


 ――瞬間、目の前にコンソールが飛び出して来た。


「うおっ!?」


 ダンジョンコアから発せられる光が上部に集められ、その先にゲームの画面のような物がぷかぷかと浮いている。原理も仕組みも良く分からないが……害はないようである。結構な光量が発せられているが、目が痛いなんて事もない。精々、少し心臓に悪かったくらいだろう。


 オレは安心して、宙に浮かぶ画面をのぞき込んだ。画面の中には、見慣れない文字が所狭しと並んでいる。


 見た事も聞いた事もない言語だったが、何故か書いてある内容を理解する事が出来た。そして……言語こそ違うが、オレはこの画面に見覚えがあった。


・ダンジョン作成

・ショップ

・ダンジョンバトル

・メッセージ


 ゲーム版の……それも、初代の家庭用ゲーム機版のDBKと同じ画面だ。オレの知らない機能なんかがあったらどうしようかと思ったが、この分なら問題なくダンジョンを運営できそうである。


 画面をタッチすることで、それぞれのメニューへ行く事が出来た。内容を確認する。


 ダンジョン作成は、文字通りダンジョンを運営するための機能だ。ダンジョン内にトラップや装置を配置したり、ダンジョンの構造を変更する事が出来る。ゲーム版より、細かい所までダンジョンの調整が可能みたいだ。


 ショップは食料や服などといった生活必需品に加え、戦力となるモンスターの購入も出来る。必要になるかは甚だ疑問だが、ダンジョンマスターが装備する為の武器なんかも購入出来るみたいだ。ダンジョンバトルをする上での、戦力を充実させる為の機能がショップなのだろう。それはゲームと変わらない。


 ただし、ゲームより遥かに商品の種類が多い。暇な時間は商品の効果なんかを調べたほうがいいだろうな。DBKには使い方次第で戦力差を覆せるアイテムが多く存在していた。


 もし相手がオレの知らないアイテムを使った場合、対処できなくて負ける可能性は高い。そうならない為に、情報は日頃から集めておくべきだろう。


 ダンジョンバトルは……これはゲーム内と全く変わらないな。右上に現状のダンジョンランク。そして中央部に全てのダンジョンのリストが所狭しと並べられ、上にダンジョン検索用の窓が付いている。


 ちなみに、今はその全てのダンジョンが灰色に覆われていて選択することが出来ない。その理由は単純だ。


 右上にあるダンジョンランクに目をやる。現在のダンジョンランクはFランク。Aランクが最高ランクで、Fランクは最低のランクだ。そして、ダンジョンバトルが解禁されるのはEランクからなのだ。これはゲームでもそうであったし、魔王もあの集会の時に言っていた。


 Eランクに上がるまでは、我々が用意した相手と戦ってもらうと。


 ゲーム的に言うならば、これはチュートリアルの期間なのだろう。弱い相手と戦って、戦闘経験だとか、ダンジョンバトルの要領を掴むための期間。こいつがあったのはオレにとって僥倖だった。


 ゲーム内で試していた戦略や、戦術。そしてこれまでに培ったゲーム感。それらを試す事が出来るからだ。


 ダンジョンバトルの画面の左下に、Fランクバトルと書いてあるアイコンがある。おそらく、これを押せばチュートリアルのバトルが開始されるはずだから、積極的に使っていこう。


 魔王の言っていたダンジョンバトルのルールを思い返す。


 確か一週間後、強制的ににEランクまでランクアップされるそうだ。それまでに試しておきたい事はやっておいた方がいいだろう。


 そして、ダンジョンバトルは、挑まれたら断る事が出来ない。代わりに、一度戦うと一週間の準備期間が与えられ、その間は自分から挑まない限りダンジョンバトルをしなくてもよいのだ。


 だからこそ一週間後、Eランクに上がった瞬間が勝負になるだろう。消費を抑え、敵を倒し、再び準備期間を得る。そのために、この一週間は無駄には出来ない。


 このダンジョンバトルのコマンドは、これからの生活において最も重要だと言っていいだろうな。


 メッセージは……これは使うのだろうか?


 メッセージ機能は、家庭版とPC版のDBKに実装されていた機能だ。この機能は、フレンドとチャットをするための機能だった筈だ。


 ……軽く見てみるが、ゲーム版と使用法は同じようである。


 フレンド……か。ゲーム版ならともかく、こんな殺伐とした世界でそのような者は出来ないだろうな。おそらく、この世界でこの機能を使うことはないだろう。


「――こんなもんかな」


 メニューを一通り眺めたあと、オレはグッと背伸びをした。とりあえず最優先で行うべきは、ショップ内容の把握と、ダンジョンを作成することだろう。


 今後の方針を決めたオレは、指をショップの欄へと走らせた――。



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