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 半澤と別れて教室に向かう。扉を開けると、窓際にたまっていた女子が一斉に振り向いた。示し合わせたかのような動きに思わず一歩、後退りする。

「な、何?」

 ドン引きのまま訊ねると、女子がキャーキャー騒ぎ始めた。訳がわからず、目を白黒させていると、そのうちの一人が声を上げる。

「かいとくん、今、さわくんといたでしょ!」

 ちなみに"かいと"とは俺の渾名の一つである。それは別にいいのだが。

「さわくん? って誰」

「隣のクラスの半澤通くんだよー。ね、園崎さん」

 女子のまた別な一人が答える。どうやら"さわくん"というのは半澤のことらしい。それなら確かに会っていたけれど、俺はそれよりも女子が確認した相手の名にぴくりと立ち止まる。

 女子の中に、口元にほくろのある見慣れすぎた姿があった。リンだ。

「や、また会ったね。みーくん」

「お前の教室隣だろうに、なんでここにいんだよ?」

「ガールズトークよ。うちの教室、ほとんど人来てないんだもの。話し相手がいなきゃ、私、退屈で死んじゃうわ」

「兎じゃなかろうに」

 ぼそっとツッコみ、俺は席に着く。とさりと鞄を置いた。中からビニール袋の擦れる音がして思い出す。がさごそと中をまさぐり、目的物を取った。

 ん、とリンに差し出す。半澤に渡したのと同じカップケーキだ。リンがそっと受け取った。

「これは?」

「んー、材料余ったから、ついで」

「はい?」

「半澤に昨日世話になった礼に作った。で、余ったので、お前の分」

 途端に周りの女子が騒ぎ出す。「キャー、結構脈アリじゃん」とか「さわくんへのお礼って? え、昨日さわくんと何かあったの?」とか「ってかついでとか余りとか酷っ」などと様々な言葉が飛び交う。五月蝿いし、正直放っておいてほしい。特に最後。

 渡された当の本人は狐につままれたような顔でケーキを見つめていた。色々な意味でフォローを入れた方がいい気がしてきたので、言葉を次ぐ。

「腐れていようが縁は縁ってことだ。これからもヨロシクドーゾ」

 言うと、リンは俺の顔を見上げ、ぷっと噴き出す。

「何故にカタコト?」

「人の顔見て笑うな」

「あははっ」

 笑うなと言うのに完全無視のリン。けれどからかうときのような軽薄さはなく、どこか晴れやかに見えて、俺は虚を衝かれた。

「うん、ありがと。後でいただきます」

 一つ微笑んでリンは去っていった。

 途中までそれを見送っていたのだが、女子に絡まれ、やむなく視線を外した。

「ねぇ、私たちには?」

「そのちゃんだけ?」

「見送る眼差しが優しいねぇ」

「さわくんとはどうやって知り合ったの?」

「ええい、五月蝿い!」

 まさしく蝿のように群がってくる女子を振り払い、俺は席に戻った。







 女の子には、優しくね。





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