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「さ、着いたよ」

 半澤の家は本当にスーパーから近い住宅街にあった。黒い屋根にクリーム色の壁の家はどこにでもある普通の一軒家だった。

 四角い家から突き出たような玄関に半澤がポケットから出した鍵を差し込む。俺はその様子を見ながら、自転車を玄関脇に停め、鍵をかけた。柔らかそうな土の地面についた轍を辿って玄関の方へ戻ると、半澤は既に扉を開けて半分中に入っていた。扉を押さえてこちらを向き、俺に手招きする。その胸元でカメラがぶらりと揺れていた。

 招かれるままに中に入ると、玄関からわりと近いところに二階へ続く階段が見えた。その階段に腰掛けるように勧められ、俺は二段目あたりに腰を下ろした。

 そのまま、半澤が床に膝を折って座り、おもむろに俺の右足に手をかける。右足とジーンズをどけ、巻かれた白い包帯を解いていく。巻くときもそうだったが、なかなか手慣れた様子で、解いた包帯を片手でくるくるとまとめながら作業を進めていく。器用なやつだ。

 解き終わり、足首を見ると、やや赤く腫れ気味だったそこは何事もなかったかのように戻っていた。

 痛みが引いたとは思っていたけれど、ここまでとは予想していなかった。ただ包帯を巻いていただけなのに。

「その包帯、湿布みたいな効果でもあんの?」

 俺は気になって思わず訊いた。足首の具合を見ていた半澤が顔を上げ、「んー、ま、そんなとこ」と曖昧な笑みを浮かべた。

「正確に言うとね」

 半澤は真顔で続けた。

「これはどんな怪我でもすぐ治せちゃう、不思議な包帯なんだ」

 俺はその言葉の意を汲むのに、二、三回ほど目をぱちくりとした。それでもなかなか理解が及ばず、首を傾げる。

「……そのままの意味?」

「うん、そのままの意味」

 問うと真顔のまま、頷きが返ってくる。

 へぇ、そうなのか、くらいしか頭に浮かばない。実際、「どんな怪我でもすぐ治せちゃう不思議な包帯」のおかげで足首の捻挫が治っている。だめ押しのように半澤が、包帯を一巻きしていたリストカット痕を見せてきた。そこには一筋の傷痕も残ってはいない。あれだけ痛い思いをしておいて、これを夢と思うほど、俺の頭はできあがっていない。

 とりあえず、色々とツッコみたいところを脇に避け、これだけは言っておこう。

「ありがとな、半澤」

「あ、いや、ううん」

 俺が礼を言うと、途端に慌てふためく半澤。あたふたと手から零れた包帯を空中でキャッチしたものの、運悪くそのままころころと広がっていくのを追いかける姿はなんだか小動物のようで可愛らしかった。いや、男に可愛らしいというのもどうかとは思うが。

 俺が立ち上がってどこか微笑ましい気持ちで眺めていると、追いかけっこを終えた半澤がごめん、と呟きながら苦笑を浮かべ、若干高い俺の目を見上げる。

 そして。


「見つけた」


 ぱしゃり。


 また満面の笑みで俺に向かってシャッターを切った。




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