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拾弐

 その後、半澤は自宅に連絡し、翌日学校が休みなため、うちに泊まった。

 夜。思ったより早く、ゆっくり話す機会ができた。

 うちは部屋数がない分、一部屋が大きいので、半澤を俺の自室に招いた。

 招いたはいいが、何を話したものやら。広い座敷に布団を敷きつつ考える。

 半澤は少しぶかぶかの俺のスウェットに着替えていた。パステルカラーのスウェットで、とても俺には似合わないが、半澤にはよく似合う。

「色々借りちゃって、ごめん」

「いいよ。いきなり連れてきたの俺だし。その……」

 校舎裏での件を思い出し、言い淀んでしまう。けれど、ここまできて躊躇うのも、何か中途半端だ。

「半澤、放課後のあれ……どういうことだったんだ?」

 言い切ると、俺は少し息を止めた。半澤が答えるまで、何も言えないような、そんな緊張を感じていたから。

 ところが、予想に反して、すぐに半澤は答えた。

「あの人たち、写真部の先輩なんだ。中学のときから知ってる」

 言われて、振り返る。確かに、写真部がどうとか言っていた。中学のときからの知り合いか。

「僕は、中学のときは、写真部に入ってたんだ。途中でやめたけどね。あの人たちとは、色々いざこざがあって。それが原因で退部したんだ。それで、今も写真は趣味だけど、写真部には入らない。だからといって、他の部活に入る気もしないから、帰宅部なんだよ」

 半澤は机の上に置いたデジカメに触れる。悲しげに、その眉がひそめられた。遠い目をする。何かを思い出すように。

「あの事件──僕のカメラが壊された事件から、僕の"外側"はおかしくなっていったのかな。それとも、僕がおかしかったんだろうか」

 半澤はゆっくりと語り始めた。

 外は静かだ。家の中も。父は明日も出勤だし、元々うちは俺以外早寝早起きの健康一家だ。今、明かりが点いているのはこの部屋くらいなものだろう。

 机の上のデジタル時計は、夜九時半を表示していた。




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