表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

こうしていてはいられないんだ

 キーンコーンとおなじみのチャイムが鳴った。

 授業終了の合図であり、同時に昼休みの開始の合図だ。


 号令を済ませた俺は迅速に行動を開始する。


 「園田、ちょっといいか?」


 声をかけられた女生徒の、肩よりも上の位置で切り揃えられた黒い髪が揺れる。

 いきなり声をかけたからか、彼女は少し面食らった様子だった。


 「園田って環境委員だったよな?」


 「えっ…と……?」


 何やら反応に困っているようだ。

 うーん。いきなり話しかけたのがマズかったか。


 「ああ、悪い。自己紹介がまだだったな。俺は草野。このクラスで委員長をやっている」


 「それは知ってますけど」


 そりゃそうか!同じクラスだもんな!

 けど挨拶は大事だからな。しておくに越したことはないんだ。

 たとえそれが意味のない自己紹介だったとしてもだ。


 「…どうしたんですか?別に私は笑いませんよ?」


 「……言い訳はしない主義なんだ」


 我ながらみじめだった。


 「そうですか。殊勝ですね。ところで委員長は私に何の用があってきたんですか?」


 「ああ、そうそれのことなん…」


 「そういえば私が環境委員かって聞いていましたね。そうです。私がこのクラスの環境委員です。」


 「……」


 驚いて思わず黙ってしまう。

 無口だと思っていた園田は、実はこんな話すやつだったのか。

 いつもは静かで無表情なのに、今は結構話す無表情だ。


 無表情なのは変わらないんだけどな。


 表情から感情が読めないし、何考えているかわからないからどことなく不気味だと普段から思ってた。

 ニコリとでも笑えば男子に人気が出そうだというのに、それがない。

 全くもって得体の知れない人間だった。


 「そういうのって女子に対して失礼だと思うんですけど、委員長ってそういう人だったんですね」


 「なっ……!?」


 「そんな驚かれても……。面白いくらい顔に出る人ですね。まあ、どうでもいいんですけど」


 「は?えっ?」


 かなり動揺する俺。

 こいつエスパーかよ。そういう能力者なのかよ。

 自分はポーカーフェイスのくせに人の表情は読めるらしい。

 なんだよそれ!すげーずりい!


 悔しくなってきたので自分も園田の顔を見る。

 あ、ため息を吐いた。疲れてんのか。


 「もうそれでいいです」


 ようやく分かった。これは呆れた顔だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ