こうしていてはいられないんだ
キーンコーンとおなじみのチャイムが鳴った。
授業終了の合図であり、同時に昼休みの開始の合図だ。
号令を済ませた俺は迅速に行動を開始する。
「園田、ちょっといいか?」
声をかけられた女生徒の、肩よりも上の位置で切り揃えられた黒い髪が揺れる。
いきなり声をかけたからか、彼女は少し面食らった様子だった。
「園田って環境委員だったよな?」
「えっ…と……?」
何やら反応に困っているようだ。
うーん。いきなり話しかけたのがマズかったか。
「ああ、悪い。自己紹介がまだだったな。俺は草野。このクラスで委員長をやっている」
「それは知ってますけど」
そりゃそうか!同じクラスだもんな!
けど挨拶は大事だからな。しておくに越したことはないんだ。
たとえそれが意味のない自己紹介だったとしてもだ。
「…どうしたんですか?別に私は笑いませんよ?」
「……言い訳はしない主義なんだ」
我ながらみじめだった。
「そうですか。殊勝ですね。ところで委員長は私に何の用があってきたんですか?」
「ああ、そうそれのことなん…」
「そういえば私が環境委員かって聞いていましたね。そうです。私がこのクラスの環境委員です。」
「……」
驚いて思わず黙ってしまう。
無口だと思っていた園田は、実はこんな話すやつだったのか。
いつもは静かで無表情なのに、今は結構話す無表情だ。
無表情なのは変わらないんだけどな。
表情から感情が読めないし、何考えているかわからないからどことなく不気味だと普段から思ってた。
ニコリとでも笑えば男子に人気が出そうだというのに、それがない。
全くもって得体の知れない人間だった。
「そういうのって女子に対して失礼だと思うんですけど、委員長ってそういう人だったんですね」
「なっ……!?」
「そんな驚かれても……。面白いくらい顔に出る人ですね。まあ、どうでもいいんですけど」
「は?えっ?」
かなり動揺する俺。
こいつエスパーかよ。そういう能力者なのかよ。
自分はポーカーフェイスのくせに人の表情は読めるらしい。
なんだよそれ!すげーずりい!
悔しくなってきたので自分も園田の顔を見る。
あ、ため息を吐いた。疲れてんのか。
「もうそれでいいです」
ようやく分かった。これは呆れた顔だ。