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第3盲目 少女の見えない心
何かが聞こえる……
左手の温もりーー全身を包む痛みーーボヤける視界ーー
靄が徐々に明けていき、
彼の瞳にハッキリとしない少女の顔が映る。
少女は目を腕で拭うような動作。
……泣いてんのか?
少女の右手が添えられた青年の左手は、
何かの間違いです!! と言わんばかりの勢いで引かれ――
そして、少女は瞬時に身を翻しドアへと走り
そいつを開け放ち出てゆく――
彼はそれを、ただただボーっと見送る……
ものの数分後――
開かれたままのドアから姿を表したのは、
顔を青くした一人。
青年の2つの瞳を見つけると、
走ってきたのだろうか?
はぁはぁと息を荒らげた見知った顔。
「なんだ、びっくりするじゃない……あの子ったら……」
「気がついた?」
見ての通り。
「今電話で、お父さんももうすぐ来るって」
出ていった少女は、この日病室に帰ってくる事はなかった……