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もう、お兄ちゃんしか見えない……【プレ版】  作者: 7×3=お前なんか見てねぇよ、ちょっと自慰識過剰なんじゃねぇの。 と読まれる事もある
2/7

第1盲目 そいつは突然に……

 行ってきます――

 そして、母はいつも通りの決まり文句。

 車に気をつけてねとつまらない定型文句。

 青年は母親というのは、

 もう言わなくても分かっている事を繰り返し言ってくる。

 つまらない生き物だと思っていた。


 土曜の夜自転車に乗り、ちょっとコンビニへ行くところだった。

 車なんてそれほど気をつけるほどの距離ではなかった。

 青年はイヤホンを付けたスマホを取り出すと

 それを両耳に入れて、お気に入りのプレイリストを再生。

 疾走感のある曲を聞きながら、風を切って走る事が青年は好きだった。


 公園の脇を通り、

 その一番端を超える少し手前。

 そいつは突然やってきた。

 彼女はスマホを操作しながらそのまま止まる事なく歩を進める。

 端は木々の柵といえばいいだろうか?

 そんな緑が公園の周りを取り囲んでいて、見通しの悪いところだった。

 昼間だったら、隙間からシルエットは伺えたのかもしれない。

 青年は突然の事に直ぐにブレーキをかけられず、避ける為に左にハンドルを切った――

 だが、左は車道であった……

 原則、自転車は左側通行のところを青年は右側を走っていたのだ。

 もし左側を走っていれば?

 いや、そもそも自転車は車道を走らなければならない。

 だが、日本の道路は自転車も走るには狭すぎるのだ。

 誰もいない歩道を走っていた青年を誰が責められようか?


 それでも青年がぬかったのは確かだった。

 スピードを出していたのは言うまでなく。

 もしもの為に直ぐにブレーキをかけられるように、ハンドルを待機状態にしておくという保険すらかけていなかった。

 イヤホンも、せめて片耳にしていれば、

 そして、青年はライトも付けていなかった。

 少し古いタイプで重くなるのだ。

 ギアを入れた上でライトも点けるのは躊躇ためらわれた。

 それに車の通りもそれなりにある、車が照らしてくれれば安心だと思っていた。


 青年側の非が多いとはいえ、

 右から来た彼女に全くの非が無かったというわけではない。

 両耳イヤホンでバックグラウンド再生によるスマホ操作。

 ながらにながらを重ねたマルチタスク。

 こちらも注意は散漫であった。


 もしくは……もうやめよう――

 そんなあったかもしれない話なんてしてもしょうがない。

 何故なら事は既に起こってしまったのだから……

 人生は一度きりであり、人間の命は一回限りなのだ。

 後悔する前にあらゆる可能性を予測して、それを避けていかなければならない。

 一つの選択を間違っただけでもう逃れられない分岐点。

 そんなものと笑う者はそんなもので泣くのかもしれない。


 そして青年は丁度走ってきた自動車にぶつかり

 ――吹き飛ばされた……

 人間の体はそんな簡単に飛ぶ――


 それからどれくらい

 たったろうか?

 青年は薄れる意識の中で、ぼやけて赤く回る光に救急車のサイレンが聞こえ――


 人間はあっさりとそんな簡単に死ぬ……


――次回、喪おに

 彼はその前で立ち止まった

 手を伸ばし、そいつに触れようとした時

 その掌に温かいものを感じる

 振り向けば……がいる……


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