第3話『顔ーソリティー』
何とか、早めに投稿できました。
いやー、しかし割と思いつきで色々と足してしまって……このあとどう響くことやら…
まあ、そんな感じ今回もお願いします。
第3話…
もしも家庭の事情で海外で暮らして、久々に故郷に帰って来たら…
~始まります
第3話『顔ーソリティー』
…………………………………………………………
「まあ...そんなこともありますよ...。気にしない気にしない」
それは憐みの目。
「うう....」
そして悲しみの涙。
それは一つの悲劇である。
何があったのかは....
まあ前回を読んでくれた君たちなら分かるだろう?
しかし、前回を読んでくれていない人たちの為、簡単に説明しよう。
校門飛ぶ。叫ぶ。痛い子。
事情を話す。かわいそうな子。
である。
そうして今は職員室で待機って訳だ。
「ほーら、珈琲だけど飲む?」
朝、校門で出会った先生が珈琲を注いだカップを美穂に手渡した。
「.......ありがとうございます」
早速、美穂は口に付ける。
「…美味しい…」
美穂も作者も珈琲について特別詳しいって訳ではないが、
この珈琲が普通のスーパーやらコンビニで売っているインスタントではない事ぐらいは分かった。
「そうでしょ?うん、その珈琲はね私の....そうね、知り合いから頂いた物で…とってもいい物なの」
少し照れくさそうに話す先生…少し頬は赤くなってる
(…彼氏からのプレゼントですね。解ります)
どうでもいい事に勘づく美穂…
お前は何だ?さとり妖怪か?
そう!!これが美穂の能力である!!
まあ嘘なんですけどね…
さてさて、それは一先ず置いといてと、
先生が今度は何か、資料をまとめているファイルらしき物を持ってきた。
どうやら、美穂が先に学校に提出しといた書類のようだ。
この学校は書類を確り管理していててほっとする美穂である。
「えーっと、貴方は今日からこの学校の生徒になる、
早乙女 美穂さん…で合ってますよね?」
「はい、そうですよ。合ってます」
「では、改めまして…ようこそ早乙女さん。この伊里高校へ。
私は一年五組の担任、姫川…
姫川 雪子です」
「早乙女 美穂です。改めてよろしくお願いします、雪子先生」
互いに自己紹介と挨拶を済ませると、雪子先生はもう一度資料に目を通し、ある事を確認した。
「あら…早乙女さんは理系希望なんですね?」
「は、はあ…そうですけど…」
「なら早乙女さんのクラスは五組になりますね。去年からこの学校は分野選択が追加されて、五組だけ理系なので」
「と、なると」
「はい、先ほど申し上げました様に私が担任ですよ」
ニコリと笑顔で微笑む先生。
「……………………マジすか?」
これまた洒落た展開。
「マジですよ。じゃあそろそろ時間ですし、クラスの方に向かいましょっか?」
「え、ちょっとまだ私、心の準備が....」
「校門を飛び越えるぐらいな事をしておきながら、何を言いますか。クラスの皆も早乙女さん事を待ってますし行きますよ」
「アーレーー」
……………………………………………
そして引っ張られ、扉前。
だが、この扉がただの扉ではない。
未来への希望…可能性の扉と言う名の扉である。
勿論嘘である。
ただの教室の扉である。
だが、今日から高校生デビューする彼女にとっては同意義だと言っても過言ではない。
それだけ、高校初日の教室に入る事はドギマギするものである。
「はい!ここが一年五組ですよ、早乙女さん」
「ああ、はい…」
心臓はドギマギとはしないが、バクバクの弾けるボンバーってところだ。
即ち、めっちゃ緊張している。
(はあ…転校は初めてじゃないのに…やっぱ緊張するなー…
これってよくある、幼馴染と再会とかのパターンだけど…どうかな…?)
さて、扉を開けたらイケメンになっていた幼馴染が…
そうして始まるラブストーリー。
だが、残念な事に美穂に男友達は日本に一人もおりませんでした。
チャンチャン
そんな事は美穂だって分かってるが、運命的な出会いってのは美穂だって実感したいもんだ。
だって女の子だもん。
そんな淡い乙女心を抱きながら、美穂は扉を開く…
ガラッ…
こうして早乙女 美穂の甘酸っぱい青春が始まったのだ…
そう、青春が始まる…のだ……?
……………………………………………………?
「……………………うにゃ……?」
美穂は絶句した…
美穂の青春は絶句から始まったのだった…
「……あのー…先生?」
「はい?」
「この学校って……」
「県立で普通科の、
何処にでもある男女共通校ですよ」
美穂は言葉を完全に失った……
何故ならば…………
教室の扉を開いたら…
そこは…
マドンナだった………
って!!
そうではない!!!!
いや、
そうでもなくないのだ!!!!!!!!!!!
コイツはテイヘンダー!
だってだってだってだってだってだって!!
「……何で…この教室…
女子しかいないの?」
驚愕した!!!
一年五組は全員女子だった!!!!!!!!!!
「ど、どうなってやがる…」
困惑する美穂…
叶う筈もない淡い期待はしたもんだが…
こんな斜め行く形で返されるとは…驚愕である。
「えっと……早乙女さん…早乙女さんは“理系”の選択でしたよね?」
「は、はあ?」
確かにその通りだが…
「そう言う事なんです」
「そ、そう言う事…?」
「そう言う事なんです」
「そ、そう言う事で…
許されるかあああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
即ち、この学校…
理系選択者が女子しかいないのだ…
だから一年五組は全員女子なのである!!!
「普通は逆だろうがあああぁぁ!!!!!」
それなら普通じゃなければ問題ない…
そうこの学校は普通じゃない!!!
この学校に世間一般の常識なんて通用しない!!
これで問題なし!!
( v^-゜)♪ヤッタネ☆
「それで納得いくかッ!!!!!!!!」
「ハイハイ、みなさ〜ん。このクラスに新しい友達が入りますよ〜」
「うにゃ?!待って先生!!私まだ納得してませんよー!!!!!!」
美穂が納得しようがしまいが展開は待ってくれない…
現実は非常である。それが常識なのである…
(そんな常識…もうヤダ…)
……………………………………………
「早乙女 美穂です。アメリカから来ましたが以前は日本で…ってより、日本で暮らしている方が長いし、両親も日本人なので文化的な問題はありません。
これからよろしくおねがいします」
一先ずクラスの美皆に自己紹介を済ませる美穂である。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!
拍手、喝采、大喝采である。
(ホント…男いないんだなーこのクラス…)
もし自分が男だったら今頃天狗鼻状態でヒャッハーだっただろうか?
いや、男だったら、絶対居づらくて帰って寝てオンラインゲームのレべリングでもやっていただろう。
このクラスが男しかいないクラスだったら自分はそうしていただろうし、寧ろ、同性で合った事はラッキーな事ではないだろうか?
「えっと…それでは、早乙女さんはそこの空いてる席に座って貰っていいでしょうか?」
雪子先生が指さす席は…窓側の一番後ろの席。
即ち、主人公席である。
(ここにきて、やっとまともな主人公待遇)
「後ろの席ですけど、黒板は、」
「大丈夫ですよ。私は兄貴譲りの邪g....目は良い方ですから」
美穂はその席に座る…
ヒュー....
窓から入ってくるそよ風が心地いい…
「はあ……寝むっ…」
つい、うとうとして眠りそうだ…
そりゃそうだ…朝から色々あり過ぎた…眠くなってしまう…
それにアメリカなら今は夜である…時差ボケもありかなり辛い…
「う....ふぁーーー…」
あらあら、主人公らしからぬ大欠伸…口を押さえなさいよ。
まあそれだけ今は落ち着けれる暇があるってことだ…………
「あの………………えっと………美穂さん…美穂さんでしたよね?」
「うにゃ?」
突如隣から声が…
だが、もしもそれが左側だったらそれは妖怪の仕業であろう…
なぜなら美穂から左側は窓である…外から声を掛けられるなんて、まあ恐い(他人事)。
即ち、右からって事である。
「……えーっと…何かな?」
美穂は右に振り向く…
「あ…あの…その……」
右から声をかけてきたのは女子高生であった…って当たり前だ。
問題はそこではない。今は、この少女が自分に何の用であるかである。
しかし、初対面である美穂にとってこの少女に恨みを買われた記憶がある筈がない。
と、ナルト…
自己紹介と挨拶であろう…そいつはいい。向こう側が態々声をかけてくれるなんてこちらも嬉しいもんだ。
「あ、の……その…えっと……//」
しかし随分な照れ屋だ。声をかけてくる照れ屋ってのはレアかもしれない。
しかしこの照れ屋…これまたファンタスティックな容姿をしている。
服装はキッチリしており、長い髪もキチンとまとめ清楚な印象を与えるが…
髪の色だ…髪が綺麗な銀色なのだ…それだけ幻想的な印象を与える…
だがそれよりも注目すべきは…
紅…
彼女の瞳の色…紅色なのである…
(何だろう…カラコン…?)
見た目からして純血な日本人ってことはなさそうだが…海外で色んな人種の人と出会った美穂でも紅い瞳の人は初めてであった…
気になる…彼女の事が気になるが、相変わらず彼女は口がモゴモゴである。
これは仕方ない…先に挨拶して話を進めてあげよう
「えーっと…もうそうびくびくしないで普通でいいからさ」
「え…ご、ごめんなさい…」
「だから…びくびくしないでよ。これから一年間同じクラスなんだしさ」
「…は、はい…//よろしくおねがいします」
照れ屋さんは顔が真っ赤になってる…
「よろしくね…うにゅー…えっと…名前は?」
名前を聞くと言うのは、人の出会いとして当然な事と思う。それを、先に名乗らないから失礼とかはクソもないと作者は思ったりするのであったりする。
まあそれって…名前ってのが何かとフラグになるからなのであろう…
「私…ですか…
山梨…
山梨 鈴鶴と申します。す、好きに呼んでください…美穂さん…//」
山梨 鈴鶴…彼女がこの学校で初めての美穂の友達となる人物であった…
………………………………………………………………………………………………………………
さて、美穂にとっては今日は特別な日であるが、皆にとっては普通の日。土日でも祝日でもない平日って訳だ。
勿論、授業は普通に行われた…
美穂は二カ月近くのブランクが有るため、内容が理解出来るか不安であったが……
(……………簡単過ぎでしょ……この問題…)
そんな不安は杞憂で終わった。
この二カ月間、美穂はただダラダラしていた訳ではない。予習を確りこなしていたのだ。
何より美穂は中学時代の成績はトップクラスであったし、勉強は得意な方の人間である。
何て生意気な主人公だ。面白味に欠ける。
(知るかっ!……あー……眠くなってきたー……これは…………………ヤバ……ぃ………)
「…………スピー…………zzz...」
クラスに一人いるよね…こういう感じの勉強できるのに寝てる奴…
………………………
……………………
…………………
……………
…………
……
…
―夢を見た…
どこかの広場か…?海の見える公園だ…
よく知ってる場所だ…何回も行った事ある…家族と一緒に…
お父さんが…兄とボールを投げ合ってる…私はお母さんと花壇に植えられている花を見てた…
花を抜き取ろうとして、お母さんに叱られた……
こっちを見て、兄が笑っていた…
そんな兄に腹が立った私は…ボールを取り上げ草むらの中に放り投げてやった…
勿論の事、幼かった兄と私はその事で喧嘩になったが…
何時も最後は私が泣いて…泣かした兄が叱られていた…
何時もそうだった…
理不尽な仕打ちである様に見える。だが、これはどこの家庭でも一般的な光景であろう。
正直に言えば、好き勝手やってる妹が悪いのだろうが、親は泣いてる妹を更に攻めることは絶対にしないだろう。
だからって、両親が兄に厳しく、意地悪だったって訳ではない。
両親は兄も愛してる。これは優しさだ。
妹の方が間違いな行動によって起きた喧嘩であろうと、泣かしたのだ。泣かしてしまったらそちらが悪い。
即ち、理不尽でも我慢しなくてはならないことを教えようとしたのだ。
我慢する優しさを教えようとする優しさである。
仮に、この喧嘩で兄の行いを肯定してみよう。
泣かしてしまっても、相手が間違ってるなら悪くない。
事を大きく言うならば、人を殺しても、相手が間違ってるなら悪くない。
そういう事である。
だから、両親の行いは間違ってない。兄を思っての行いなのだ。優しさなのだ。
だが、この見方は、客観的に事を見ることができる大人の見方である。
幼い子供はそんな事できない。優しさを理解できないのである。
子供にとってあるのは、怒られるか、怒られないかのどちらかである。
怒られて気に食わない兄と、守られて幸せな妹だけである。
そんな二人の大人の優しさを気付けなかった二人は...悲劇を起こす事になる...
勿論、大元を辿れば大人たちの因果か関わった子供には何の関わりのない悲劇なのだが…
悲劇はそれだけはなかった…
守られてばかりの妹は…まだ、
我慢する優しさを教えて貰っていなかったのだ…
小さい子供の世界では、悲劇を起こした罪人は二人だけ…二人にあるのは…
どちらが、悪いか、悪くないかのどちらかだ。
二人だけ…
どちらが悪いと言えば…喧嘩の原因を作った妹.....であったのだろうが…
守られてばかりの妹は…罪を受け入れることなんて知らない…認めることなんて知らない…
知るのは…
“悪いことは人のせいにすること”
『………おにいちゃんが……』
それは一人の人生を…
『おにいちゃんが……!!』
最愛の兄の人生を壊す言葉…
『おにいちゃんが、おとうさんとおかあさんをころしたんだ!!!』
「違うッ!!あれは、私が、私があああぁぁぁッ!!」
……………………
「美穂さん!!」
「ハッ…!!」
目が覚めた……
そこは教室である。
そして自分の席の椅子の上である。
どうやら、自分は授業中に居眠りをしていて、隣の席の少女、鈴鶴に起こされたらしい…
「大丈夫…ですか…?随分とうなされていましたけど…あっ、汗」
「汗…?」
鈴鶴に指摘され、気がついたが、全身汗ダクである…今日はそんなに暑かっただろうか…?
「うにゃにゃ……大丈夫、大丈夫。このくらい…」
「ダメですよ、風邪ひきますよ。これ使ってください」
鈴鶴からハンカチを渡された。中々、生地の確りしたレースのハンカチである。
「うにゅー...ゴメンね、気をつかわせちゃって…」
「気にしなくていいですよ、このぐらい」
有り難く、渡されたそのハンカチで汗を拭きとらせてもらった。
「あの、山梨さん」
「ハイ、なんでしょうか?」
「私ってどのくらい寝てた?」
「そうですね.....六時間目からずっと机に倒れてましてから…ざっと一時間ちょっとくらいでしょうか?」
「.....と、なるともう六時間目は終わったの?」
「ハイ」
「帰りのHRは?」
「終わりましたよ?教室の掃除の方も先ほど終わりました」
「ああ...そんなに寝てたのね、私」
美穂が教室の時計を見ると…成程、よくそんな呑気に一時間以上も寝ていたもんだ。
「今日は疲れていると思って…帰りまで起こさない方が良いかなと…もしかして、起こした方が良かったですか?」
美穂の表情を窺って、申し訳そうな顔する鈴鶴…そうな顔しなくていいのにと、思う美穂である。
「いや、別に大丈夫だよ。ただ、今日はちょっと行こうとした場所があってね。今からでも十分に間に合うから」
「そうですか」
ほっと一安心の鈴鶴である。
「じゃ、私はそろそろそこに行くけど…このハンカチ…洗濯して返そうか?」
「いえ、構いませんよ。渡したのは私からなんですから…ホントに気にしなくいいですよ」
「そう?」
「ハイ」
二コリとほほ笑む鈴鶴…
最初はただの気の弱い照れ屋さんかと思ったが…どうやら人に気遣い出来る優しい子のようだ…
これは、良い人に出会ったものだ。これからも交友を深めていきたいと思う。
「じゃ、ありがとね山梨さん。また明日」
「また明日……ですね//」
手を振り合い…美穂は教室を後にするのであった………
…………………………
…………………
さて、階段を降り玄関前廊下である……
中々ナイスな作りである…
「兄貴は…ボロちぃとか言ってたけど…意外と校舎内とか綺麗だったなあ...」
それもその筈…
去年、校舎の全体的の改修工事が行われ、教室から廊下…トイレの床を舐めても問題ないくらいに綺麗になっているのである…
だが、その時に旧校舎は解体され…美穂は知らないだろうが…校舎裏の井戸と謎の蛇口が付く旧社会科室は無くなってしまっていた。
前作を知ってる人からすれば、多分残念な話だと思う。うん。
そんなことで悲しむ読者をよそに美穂は今日一日の事でも振りかえっていたりしたのであった。
(うにゃにゃ………まあ…色々あったけど……やっぱり学校にいるだけで落ち着くなー…学生的に…)
だから不良は学校に来るらしいとか、聞いた事ある作者である。
(……あ……そういや…………)
美穂はふと…今朝の事を思い出した…
今朝の事と言えば…あの事…美穂の起こした事故の事である。
(あの時…慌ててちゃんとあの子に謝ってなかったなあ………御詫び…どうしよう…)
御詫びすると言った以上、何かしてあげないと…
しかし、会う手段が無し!残念!!
(通学路…同じならいいけど…クッキーとかでいいかな?)
こうして、登校する時にクッキーを持ち歩く女子高生と、女子小学生の淡いラブ・ストーリーの始まり~始まり~
とは、いかない。後、どうでもいいが作者はNL主義だったりしたりするのはどうでもよかったりするのである。
そんなことどうでもいい事に、無駄に文字数を使うわけにいかないので、美穂は下駄箱で靴を変えようと…
した瞬間である………
ドダドダドダドダドダドダドダドダドダ!!!!!
「うにゃ…?」
そんな音が聞こえた…
ドッゴォォッンー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
次にその音が聞こえたら……
身体に激痛が走り……
ドゴォンンン!!!!!!!!!!
美穂は激突した…
何に……?
壁に激突したのだ…
いや、何故そうなった…?
答えは簡単だ…
今朝と似たような事故が起きたのだ…人と人の衝突事故である……
ただ違うと言えば…今度は美穂が被害を被ったことである…
「ゥグ………」
美穂は自身の意識を確認する……大丈夫、意識はハッキリしている…
頭は打ってない…………背中も……ギリギリのところで受け身で上手くでき、軽傷で済んだ……
それでも痛いもんは痛い……至る所が痛む…特に壁にぶつかった背中よりも…人と接触した部分が……
自身の無事を確認した美穂は、次に自分を事故に合わせた相手を確認する………
その相手は…
身長190㎝近くの筋肉質の大柄の男で、素行が悪い服装……制服から染み付いた煙草の臭い…グラサンにアフロヘアーのいかにも悪そうな奴である…
その男も此方を見ている……
そして口を開く…
ペッ、
「ボサッとしてんじゃねーよ!!クソアマ!!」
口が開いて何が出るかと思いきや…それは汚い言葉と汚い唾である…
ペチャ…
唾が美穂の顔に掛かった……
「…………はあ………?」
唖然とする美穂……
そんな美穂なんか知った事かと近づき…
「おい…何か言ったらどうだ…?えぇ?」
美穂の胸倉を掴み持ちあげる……
「おらおら、一年の分際で…先輩にごめんなさいとも言えないのか?ああぁーん?」
「うっ……」
美穂は困惑した…
靴を変えようしたら急にこんな事になって、明らかにヤバそうな男に絡まれているからか……?
この男に恐怖しているからか……?
違う!!
この理解できなかったからだ!!!
「あの……」
この男の行動が理解できなかった!!!
「ああぁん?!」
「手……離して貰えませんか?!」
「何言ってるんだこの野郎ぉぉぉ!!」
男は大声で一喝し、美穂をビビらせ恐怖に落し入れようとしている…
それがその男のやり方である。そうやって生きてきたのだ!!!
だが、
「……それじゃあ…ってこの言い方あまり使いたくないんですけどねっ!!」
そんなので脅える美穂ではなかった!!!!
ドスッッ!!!!!!!!!
「ぬほっ!!!」
蹴りだ!!
美穂の鋭い蹴りが男の脇腹にクリティカルヒット!!!
全身の痛みのせいで、男をノックバックできる蹴りではなかったが、怯ませるぐらいの威力はある!!
男は怯みその手を離した…
「な……何するんだ…この野郎!!!」
「自己防衛です…だから離してと言ったんです」
「んだとぉ!!!!」
美穂は理解できなかった……
勿論、全てが理解できない訳ではない。
この男はキレやすく、ぶつかった事に怒ってこんな事をしでかした。
そこまで理解できる。
ただ理解できないのは、
ぶつかった事に対しての罪や責任を感じず、
それら全てを人のせいにしようとしている事である。
それが理解できない。
人は完璧にはなれない。罪だって間違いだって失敗なんていくらでも起こすだろう。
だが、それを人のせいにして罪を認識しない事は絶対にしてはならない!!
「生意気なブッ殺してやる!!!」
どうもこの男…
怒りの沸点が低いらしい…もう目ん玉を充血させている…煽り耐性0である…
男は握り拳を振りかかげ!!美穂の顔を狙う!!!
ぶつかる!!
ぶつかったら痛い!!
だから、美穂は避けようとした!!
だが、避けなかった!!
避けれなかったのか?!!
違う!!
避ける必要がなかったのだ!!!
彼の拳は!!!!!!
「はーーーーい。そこまでーーーーー」
止められた!!!突然、二人の間に入って来た少女が男の拳を止めた!!!
指一本で!!!
「……………うにゃ?」
「うっ!!」
驚愕する二人!!
そんな二人をよそに片手の一本の指で身長190近くの筋肉質の大柄の男の太い腕から繰り出される拳を止めた少女は、片手でメロンパンを食ってやがる!!!
「モグモグ…だめだよー顔はー、女の子の顔は宝石なんだからさー」
呑気してる少女は…美穂よりも背が低く…眼鏡を掛け…到底あんな拳を止めれそうもない細い腕をしている…
だが止めた!!
「何で?!!」
知らん!!俺の管轄外だ!!
「てめーは......副会長…」
男はこの眼鏡少女を知っていた!!
「うん、そうだよー」
「このぉ!!生徒会長の犬がぁぁ!!!」
「犬なんて酷いなー。ユ、...会長もわたしもそういうプレイに興味はないよーだ」
「しねぇぇぇぇぇー!!!」
もう片方の腕で眼鏡をカチ割ろうとする諦めが悪い男…
だが…
「ダメ」
持ちあげた…彼女はゲームのキャラが当たり前のように何十キロのものを持ちあげるかの如く…
男を片手で持ちあげたのだ…
「うわあああああああっぉぉおfkヴぉkvgsk、gvfs「vgふぃsんmヴぃjbvs?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「流石にちょっと重いな」
「ど、どうなってんの.....?」
驚愕し続ける美穂…それしかできないのである…
「お、おろしてくれー!!」
「この子に謝る?」
「誰にだよ!!!!」
「君がぶつかった人に」
「あ、ああ!!謝ればいいんだろ!!!謝れば!!!!」
「うん」
すると、彼女は優しく男を下ろしてやった…
そして男は美穂の前に立ち…
「済まん…………これでいいのかクソったれ目!!!!!」
その言葉を吐き捨てるように……いや、吐き捨てて去って行ったのだった…
「………………………えー…………………」
唖然と驚愕し、茫然とする美穂…何かと今日は色々とあり過ぎである。
だが、そんな事情はこの眼鏡少女は知らない…気にせずメロンパンに噛り付いている………
因みに……もう五個目である…小柄の彼女の体型からしてよくもそんなに入るのかが謎である…
その五個目を一口二口で終わり、六個目の袋を開け、それをぺロリと食べ終わり、ようやく思いだしかの様に彼女は美穂に近づいてきた…
「あのー.....怪我なーい?」
妙なトーンと口調で話しかけてるくる少女…より彼女を幼く感じさせるが、
先ほど、あの男は彼女に対して『生徒会長の犬』と言う発言…その発言自体はどうしようもない悪口であろうが、注目すべき点は、“生徒会”と言う点と、その前に言った“副会長”と言う点であろう。
これらを総合的に、別に総合的に考えなくても、彼女が生徒会の副会長である事を察するのは容易だ。
と、なると普通に考えて彼女は美穂にとって先輩となる存在であり、学校のあらゆる事を取り締る生徒会の副会長…あまり、無礼な態度は許されない…
とか、うんたらかんたら考えていて中々返事を返さない美穂に対し、彼女は…副会長は不思議そうな顔で美穂の顔を覗いてきた…
「…ど、したの?やっぱ怪我してんの?ドコカ痛いの?」
不思議そうに心配そうな声…
「あ、いえ…」
その声に美穂は我と帰りつまった返事をした。
「もしかしてー.....お腹減ってるぅー?」
「え、」
「ほれ」
副会長はどこからともかく七個目のメロンパンを取り出し美穂に指しだ....
す前に…
「ハイ、半分」
千切って半分にし渡した…
が、
「半…分…?」
どう見ても4分の1程度である…
「フーッ」
「いや、唐突過ぎでしょこのネタ!!!」
最早、無礼も糞もなくツッコミを入れる美穂である。ただ、作者がやりたかっただけである。気にするな!!
「いらない?ならわたしがたべるねー」
そのまま一口でぺロリ!!ナンテコッタ!!
だが、本題はそこではない!!本題を話そう!!
「で、怪我はないの?」
「怪我は……まあ、痛いと言えば…痛いけど…問題はないです」
「そうかーよかったー」
胸に手を当て、ホット一安心ってところか?大げさめに仕草をする副会長…こういう事を何て言うか?あざとい?
「まっ、無事でよかったけどさー。あんまり無茶はしちゃだめだよー、蹴り返しはねー」
「うにゃにゃ...それは…」
冷静になってみれば、よくもあんな無茶な事したもんだ…
いくら相手の行いが気に食わなかったとはいえ…アメリカで従姉に護身術を教わっていたとはいえ…あのまま副会長が止めてなかったら、大怪我を負ったろう…
そして美穂は悔しかった…
「私が……弱かった…からなんです……」
「え……弱いの?あんな大男を蹴り返せるのに?」
「だから弱いんです……私は別にあの人を蹴り返してやっかたんじゃなくて…ただ間違ってる事…認めて欲しくて…ただ謝ってくれればそれで良かった筈なんですけど、
そう理解してくれるような、言葉が出なくて…説得できる力がなくて…」
要するに、自分はまた妥協してしまったのだ。自分を考えを思いを伝える術はないので、仕方がないので蹴り返したのだ。これでは、どんなに素晴らしい思考のお持ちの方でも偽善と言えよう…皮肉である…
「んーーー、何か難しね?テツガク?」
「別に哲学ではないような…」
「まっ、難しいよ、それは。自分の考えってのを相手に理解とかして貰うって。テストより難しい。それが正しいとは限らないし、やっぱテツガク」
そう副会長が言う頃にはもう、何パックのもメロンパンのパックのごみが出ていた…
「けど、その考えじたいは貴女の思いやり、優しさなんじゃねのかな?ウマクイエナイケド」
「優しさ…ですか?」
「うん。そんな優しい女は強い。うん。ではわたしはこの辺で、とぉー」
「あ、ちょ、」
「わたしはただいまシゴト中デース」
副会長はメロンパンのごみを、大きなビニール袋にまとめ……無理やりまとめ去って行った…
なんかマイペースな人である…
「あっ…お礼言うの言いそびれた…」
今になって助けて貰ったお礼を言い忘れていたことに気がついた美穂…美穂も割合マイペースである。
「……お礼……メロンパンでいいかな?」
こうして、メロンパンを持ち歩く女子高生と副会長のらぶ・すとーりーは、
勿論、始まらないのである。
第3話…完
次回、第4話『ド・アウヘーベン』