ふかわくんってさ!
今日はちょっとグレーなしろかえでです(^-^;
「ふかわくんってさ! ホンット! 仕事できないよねぇ~」
こういう風につくづく、且つズバッ! と言って来る香坂先輩の顔を
僕はまともに見る事ができない。
もう、“蛇に睨まれた蛙”状態!
だから『オレ』じゃなくて……『僕』になっちゃうんだよね……
でもさ、もう社会人なわけだから……
「香坂先輩、ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございません。 私の考えでこの様に進めさせていただきましたが、どこが問題なのかを教えていただけないでしょうか?」
って教えを乞うと、また指導が始まる。
「はあぁ?! そんなもん、自分で考えなくてどうするの?!」
「いえ! あの! 分からないので悩んでるです……」
「何回言わせるの! 悩むんじゃなくて、か・ん・が・え・ろ !! お前のアタマは風船か ?!」
結局、毎回、こんな怒号を浴びせ続けられるので……
僕は香坂先輩の前ではタマがキューッ! と上がっちゃうのだ。
同期の飲み会の時、皆から「お前、香坂先輩とずっと同行でドキドキしないのか?」って聞かれたから「そりゃドキドキするよ」って返したら「だよなあ~香坂先輩、めっちゃナイスバディでしかも可愛いもんな~ お前、間違い起こすなよ!」っていじられたけど、オレのドキドキはそういうんじゃないんだよ~
あ、今は『オレ』って言えた。
なんだか、オレ、情けないけど香坂先輩がトラウマになってるのかも……
あ、因みにオレ、『ふかわ』じゃなくて『ぬのかわ』なんだけどね……
こうやって日々落ち込むオレに更にとんでもない事が振りかかって来たんだ。
その日も香坂先輩と同行、出先で一日中怒鳴られて……ようやく社に戻って来たらいきなり応接室へ呼ばれた。
香坂先輩と中へ入ると、他社の役員なのだろうか……正面には高そうなスーツを着た紳士が難しい顔で腕組みをしている。
そればかりでなく、ウチの部長と総務次長も同席していて、めっちゃ物々しい。
訳が分からないまま席に着いたら総務次長が僕に向かって口を開いた。
「こちらは新田商事の社長さんだが、キミ! 心当たりはないかね?」
「いえ! 私は……存じ上げませんが……」
すると新田社長は僕を睨みつけた。
「私の事は知らなくても、娘の事は良く知っているだろう?!」
「えっ?! もしかして……沙也加さんのお父様でしょうか??」
「そうだ!」
ここで部長からも問われてしまう。
「キミは新田社長のお嬢様と親密な間柄と聞いたぞ!」
「確かに、沙也加さんとは大学で同じゼミでしたが親密と言う程では……」
そう、沙也加と親しかった男は相田で……この二人の周りを憚らない行状のせいでゼミのメンバーは随分と迷惑を被ったのだ。
しかし、僕のこの答えに新田社長の顔はますます怖くなる。
「キミ! しらばっくれるのもいい加減にしろ! ウチの沙也加をどうするつもりだったんだ?!」
「どうするって??」
「娘にキミの様なヤツの子供を産ませるわけにはいかん! その代わり、キミにはそれ相応の!制裁を受けさせる!!」
急にこんな事を言われ絶句した僕は、次の瞬間、香坂先輩から思いっ切り後頭部を叩かれて前のめりになった。
「このたびは布川がご迷惑をお掛けいたしまして誠に申し訳ございません。 お嬢様の妊娠が発覚したのは何日前ですか?」
「3週間前だ!……ずっと黙っている娘からようやくこの男の名前を聞き出した!」
「では、それが布川だと言う確かな証拠は無いのですね?」
「いいや、DNA鑑定は済ませてある!」
僕は思わず立ち上がった。
「僕には覚えがありません!」
「まだ言い逃れるか?! 娘がお前の『検体』を保管していたんだ!」
この新田社長の言葉で、僕は部長、次長から完全に犯罪者扱いの目で見られたが香坂先輩だけはニッコリと微笑んだ。
「新田社長! それは不可能です」
「なに?!」
「失礼ですが、お嬢様は妊娠第何週ですか?」
「3か月と聞いているが」
「ああ、その頃でしたら……ワ・タ・シ・が! 布川の事を公私ともに指導しておりましたから……とてもとても無理だと思いますよ」
「キミ! どういう事かね?!」とあたふたする総務次長に香坂先輩は頭を下げた。
「申し訳ございません。 でも、私は布川と……もちろん仕事とはキチンと線引きして、真剣なお付き合いをしているつもりです。 ですからもし、布川が私の目を盗んで不貞を行っているのなら、それは見過ごす事ができません!」
そう言いながら香坂先輩は僕の胸ぐらを掴む。
「布川! 口を開けろ!」
戸惑いながら開けた僕の口の中へ……
ティッシュをグリグリ突っ込んだ香坂先輩はそれをチャック袋に収め、新田社長へ差し出した。
「私が調べても良いのですが、いかがいたしますか?」と
◇◇◇◇◇◇
自販機で缶コーヒーを二つ買った香坂先輩は、その一つを僕に手渡した。
「……ありがとうございます」
「さっき、思いっ切り引っ搔いたからな! 口の中、ヤケドしない様、気を付けろよ」
僕は頭を下げ、用心しいしい缶コーヒーに口を付ける。
「あの、今日はご迷惑をお掛けして……」
「今日もだろ?!」
「いえ、あの! 今日は特に……」
「特に?!」
「いえ、それは、あの……」
「『いえ』『あの』が多い!」
「スミマセン……」
「だいたいお前は謝る様な事、してないだろう?!」
「でも、先輩は僕の事、庇って下さいましたし……」
僕がそう言うと先輩はコーヒーを吹き出しそうになってカラカラ笑った。
「まったく! お人好しと言うか、バカと言うか…… ふかわ! お前、ホントどうしようもないな!」
「……はあ」
「仕方ない! “腹黒い私”がケツ拭いてやるから、お前も責任とれよ!」
「えっ?!」
左手に缶コーヒーを持ち替え、香坂先輩は右手で僕の股間をパフン! と掬い上げた。
「まあ……これは、そのうちだがな」との言葉を添えて……
おしまい
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