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1

車の排気ガスとアスファルトの熱気が立ち込めている。

そんな最高気温35℃の真夏日に似つかわしくないファッションに身を包んだ人間が、俺の前を通りすぎて行った。

毛皮のコート。

もう一回言おう。

毛皮のコート。

しかも、知人。

さて、どうしたものかな?

ま、取り敢えず尾行?

尾行することにした。




目的地其の一

スーパーマーケット。


彼女は、その目立つ恰好のまま、近所のスーパーに入って行った。

そしてコートを脱がない。

当然、俺も後に続いて入るわけで。

気分が良いか悪いかと言えば、悪い。

俺はそそくさと店内に入り、雑誌コーナーで暇を潰す。

その間に彼女は棚から落ちたであろうスナック菓子の袋を靴で潰す。

俺が漫画を見てクスッと笑う。

その間に彼女はクスッと笑われる。

俺はちょっとエッチな雑誌を間違えて読んで赤面する。

その間に彼女は自分の置かれた状況を理解し赤面する。


どんだけ不器用なんだよ…

しかもその恰好で。

お前を尾行した俺がバカだったよ。




目的地其の二

海。


結局スーパーでは何も買わなかった彼女だが、ここに来てやっと毛皮のコートの意味が解った。

『汗をかいて、気持ちよく海に入ろう』ということだろう。

なんだ、そういうことだったのか〜。


ー10分後ー


人が沢山居る所から少し離れたところに彼女の姿が。

毛皮in彼女の状態で。

汗をダラダラかいている。


……俺、もう帰る。




見切りを付けた俺は、真っ直ぐ家へ向かう。

今日一日、無駄に過ごしたなー。

何か、恥ずかしかったし。

何故彼女はあの様な恰好をしていたのだろう。

趣味が逸脱しているから?

それなら『明日からの南極旅行の為の訓練をしている』よりは可能性が無くもない。

でも…いや、バカかな。



ー3日後ー


「お、淳、おはよ〜」

「…お早う。何?今日は毛皮のコート着てきてないの?」

「……何のことDAI?」

「いや前に着てたから。スーパーでドジった時」

「…見てた?」

「もう、バッチリ」

「いやーーー!何で淳なのよーーーー!バカにされるー!」

「湊、大丈夫。もう散々したから」

「それはそれで困るんだけど…」

「家族に話したら大爆笑されてさ…今後は飯のオカズにお前の話をしようと思うんだ」

「何その告白!?」

「ダメかな?」

「駄目だよ!私が許さないよ!てか、家族に話しちゃったの!?」

「『まったく…湊ちゃんは昔っからそうなんだから。オホホ』とか言ってたぞ?」

「うぅぅぅ…もうお嫁に行けない…」

「大丈夫。もしお前がそうなったら、俺が貰ってやるから」

「淳…」

「と、言うのは冗談で、家族にも話てないから」

「う、薄々気づいてたんだけどね!そんなこと!」

「それも冗談で〜。…次の回覧板が楽しみだなぁ…」

「お前何した!?あー!私の世間体がー!」

むっちゃ動揺しとるやん。

冗談なんだけど。

「じゃぁ、理由を話したら訂正をしてやろう」

「だったらいいもん!自分で修正するから!」

「凄い酷いことをした人の言い訳が通用すると思ってるのかな?君は」

「淳ぃぃぃぃぃぃ!てめぇ何した!」

「店を一軒潰したって言いふらした」

「袋菓子一個しか潰してない!」

「さぁ、理由を話せ!」

「…………ダイエット…」

「は?」

「だからダイエット!最近体重増えてきたから…」

「フ…アハハハハハハハ!」

「な、何よ!」

「汗をかいてダイエットだぁ?んなもん、出来たら苦労しねーよ!有酸素運動とか、その辺の事をしろよな!」

「確かに…最もだ…」

「わかったか?」

「わかった…けど、許さん!」

「ぬぉあ!」

「よくもそんな噂を流してくれたなぁ?」

「ちょ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘だって!」

「はぁぁぁぁ!」


               ※


「これ…顔面打撲くらいいってないか?」

「……そのまま逝っちゃえばよかったのに…」

「うっせぇ!お前のせいだぞ!」


「おい…千倉…池田…」


「なによ!淳だって見てたら言えば良かったのに!」

「じゃぁ逆に訊こう。俺が言ったら逃げただろ?」


「千倉湊…池田淳…」


「…それはまぁ…ね」

「ほら!じゃぁ俺のこの顔面の傷は何だよ!無意味じゃねぇか!」


「千倉ァァ!池田アアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


「うぉ!せ、先生?」

「俺の話を無視するたぁいい度胸じゃねぇか。池田、授業終わったら特活室来い」

「…なんで職員室じゃないんスか?」

「張れねぇからだよ」

「教師がそんな事言ってもいいんですか?」

「構わん。免停で済むなら本望だ」

「湊は?」

「知らん。どうせお前が元凶だろ。じゃ、約束だ。破ったら…」

「ハイ!行きます!生かせてください!」

「……ゴメンね、淳。私、行けそうにないな…」

「何その死に際みたいな台詞!」

「私のことは放っておいて、先に行って!」

「るせぇ!意地でも連れていくからな!」

「…グッバイ…」

「ちょ、お前、何でも暴力に訴えるのは、止せ!やめ、ちょ!アァァァァ!」

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

「ごめんね。私にはこうすることしか出来ないから…」

「お前…覚えて……ろよ…」



…………………………………………………………………………



「よくも破ってくれたな?」

「いいえ、滅相そんなつもりは…」

どうやら、あれから3時間もの間、眠っていたらしい。

湊め…呪ってやる…

「じゃぁ、右頬出せ。今なら2発を3セットで200円。安いだろ?」

「先生。殴るかカツアゲするか、どちらかにしてください」

「じゃぁいい。頬のみで許してやろう。ほら、出せ」

「……痛くしないでくださいよ?」

「…………知らん。じゃ、いくぞ」

「ひぃぃぃぃぃ!」


パンッ!(パンツじゃないよ)


という音は響かなかった。


俺は恐る恐る顔をあげた。

「ありゃ、おかしいな…なんでこんな所に居るんだ?池田、教室戻れよ」

………

何だ何だ?



         ※



「んあぁ…調子狂うなぁ…」

今頃は親に連絡が入って、説教されてる最中…だったはずなんだけどなぁ。

……認知症?

……二重人格?

いや、ない。

大体、そんな人間が教師採用試験に受かる訳がない。

さぁ、何故だ?

…………まぁいいや。

難しい事は止めだ。

面倒臭い。

俺は思考を停止させ、ケータイを手に取り、開く。

不在着信、1件。

何だ?

俺は不思議に思い、再生を押した。


『ーーー今夜、もう一度電話をかける。必ず出るようにーーー』


何だよ。

知らない番号。

着信時に音の鳴らなかった着信。

何とも表現し難い恐怖感が襲ってくる。

ー無視だなー

ケータイを閉じ、瞼を下ろす。

暗い空間に意識が吸い込まれてゆく。

この時が、一日で一番の至福の時間と言えるかもしれない。

唯一の安息の時間と言うべきか。

しかし、その時間を壊す出来事が起ころうとしていた。

眠りにつこうとしていた時に、一通の着信が入った。

無視しようとしたが、鳴り止まない。

鬱陶しくなったので、仕方なくケータイを握る。

開いた途端、音は鳴り止み、俺は、液晶に吸い込まれて行った。


             ※



妙な浮遊感。

正直、気持ち悪い。

電脳空間と言うのであろうか。

上下左右がドットで埋め尽くされている。

酔ってきた…

『おやおや、意外に早かったじゃありませんか』

遙か後方から声が聞こえた。

振り返って見ると、短金髪の青年が立っていた。

「誰だ、お前」

俺が問いかけると、そいつはこちらに近寄ってきた。

「昼間、電話をした者ですよ。不在着信になってしまいましたが。本当はもう少し早くに来てほしかったんですけどね。まぁ、あなたにはあなたの都合がありますから、文句は言えませんが。それより、あなたを読んだ理由をお教えしましょう。多少急ぎ足になりますが。…あなたを読んだ理由は他でもありません。あなたにこの世界を助けてほしいのです。あちらの世界、あなたで言う現実世界ではあなたは一般人ですが、ここ電脳世界ではあなたは勇者なのです」

「…さっぱり話が掴めません」

「そう…ですか…。では端的に説明します。池田さん、人差し指を立てて目を瞑ってください。そして、その指先に炎をイメージしてみてください」

「それで何になるんだよ…」

俺は、試しにやってみる。すると…

「……こんなもんか?…うおっ!何だコレ!指から炎が!燃えとるっちゅーに!」

「ご安心下さい。それはあなたが作り出した炎です。よってあなたに危害が加わることはありません。解りましたか?あなたには”力”があるんです。この世界に来た時にだけ発動する、ね。どうです?助けてくれませんか?」

どうする。

面倒くさいことは苦手だが、このまま逃げるのは後ろめたい。

俺本人が負けず嫌いなのが災いしたな。

「…分かった。できる限りの事はやる。無理な事だってあるぜ?」

「ええ。ありがとうございます。ではまず、”力”を操ることを覚えましょう。時間が無いので、急いで行きますよ」

「あぁ。じゃぁ俺は何をすればいいんだ?」

「うーん、そうでうね…。じゃぁまずは作った火球を飛ばしてみてください。要領は簡単ですよ。イメージを思い浮かべればいいです」

「…そりゃ!」

俺が念じた瞬間、指先の火球が飛んで行った。

変な所に。

「あとはコントロールですか…まぁすぐ直りますがね。こうやって…」

ビュンッ!

「大分マシになりましたね」

ビュンッ!

「その調子です」

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

「はぁ…はぁ…」

「もう完璧そうですね。じゃぁ次は…火柱を操ってみましょうか」


体力が…もたんぞ……



             ※




「はぁ…すまんが、休憩させてくれ…はぁ…」

「…そう…ですね。では15分程」

「あぁ、助かる」

はぁ…はぁ…

久しぶりに疲れた…

定期的に走ったりはしてるんだがな…はぁ…

「なぁ…これって体力以外に減るもんとかってあるのか?」

「精神力と機動力を」

「機動力?なんじゃそりゃ」

「瞬発力みたいなものです。敏捷性に関わってくるのですが、減ると、動き始めが遅くなるんです。そのせいで殺られてしまったり、犯られてしまうので鍛えないといけないんですよ」

「…そうか」

「まぁあなたは男ですから犯られることは無いでしょうけど。同性愛者以外なら」

「黙れ。人は真面目な話をしているんだぞ」

「それは失礼しました。では、次のステップへ行きましょうか」

「まだ15分経ってないぞ?」

「思い立ったが吉日、ですよ。それっ!」

ゴウン。

視界が揺らいだ。

意識が飛びかける。

俺はその意識を抑制し、踏みとどまらせた。

そして、顔を上げた。

するとそこには広大な自然と湖があった。

「何をした?フィールドと俺に」

「細かいことはいいです。では、さっきの要領で水と風を操ってみてください」

「はぁ?無理があんだろ」

「いいえ。可能ですよ。今度は水では柱を、風では竜巻を作ってください」

「……やるだけやってみるよ」

……

精神集中…

湖に渦を作る…

はあぁぁぁぁぁぁぁ…

「舞い上がれ!」

俺は叫んだ。

ダメ元だった。

目を開いたら、想像していた風景が、なかった。


ーちゃんと出来てるー


「やった!出来てる!」

「おやおや。これはお見逸れしました。何回か失敗すると思っていましたが、予想以上です。では、次は竜巻を」

「おう」

イメージは、四方八方から吹く風をぶつけて、大きな上昇気流を発生させる!

5秒後、イメージをそのまま決行させたら、案の定上手くいった。

「素晴らしいです。どうやら想像力と学力はあるようですね」

「いままでは何だと思ってたんだ?」

「単なる”力”を持った”バカ”だと」

「そうか…殴ってもいいか?」

「では、次はモンスターを倒してもらいましょう」

「話を逸らすな…ってモンスターだと!?」

「ええ、コイツです」

ぽんっ、と放り投げられたモンスターは、一昔前にドラゴンクエストで見た、あの青い奴だった。

そう、スライムだった。

「何?これを倒せばいいの?」

「いかにも」

「魔法で?」

「その通り」

「……」

俺は指先に火球をイメージさせ、発射した。

…というのはあからさま過ぎるし、面白くもないので、別の技で倒すことにした。

……ビーム。

あのフリーザ様のようなビームを打ってみようか。

試しだからな。

俺はビームをイメージして、発射した。

「デスビーィィィィィッム!」

叫んでみたくなった。

当たったか確認してみると、ちゃんと貫通して、モンスターは粒子になって消えた。

でも臭い。

「ぬぁ!臭い!ゴムの溶けた匂い!」

「ですから、相性も考えないといけませんよ。でもビームですか。結構使えそうですね。というより、本当に何でも出来るんですね」

「俺もビックリしたよ。万能だな」

「では、試してみましょう。この傷ついた子犬の治癒をしてみてください」

「回復ってことだな。たしかに、自己治癒が出来れば便利だもんな」

「ええ、そうです」

「よし」

俺は手の平を犬から3センチ程離して掲げ、青く広がっていく光をイメージ。

すると、手から少しずつ微々たる光が。

「やったぜ!これで回復も完璧だな」

「いや、待ってください」

「ん?」

下を見ると、光が増幅していた。

そして、その光が、発射された。

俗に言う「かめはめ波」のような光。

そして犬は、消えた。

「なぁ…これって、殺っちゃったの?」

「回復は無理、どうしても攻撃技になってしまう…と」

「メモってんじゃねぇ!俺は健気な一つの命を奪っちまったんだぞ!どうすればいいんだ!?」

「……供養してあげて下さい」

「…そうするよ」

始めての犠牲だな…

「じゃぁ、俺は一旦現実世界に戻るよ。また夜に電話をかけてくれ」

「はい。わかりました」

「…そうだ。お前の名前、まだ聞いてなかったな」

「クランです」

「そうか…ま、これからもよろしくな」

「えぇ。よろしくお願いします」

一体どれくらいこっちの世界に居たのだろうか。

早く帰らないと始業のチャイムがなってしまう可能性もある。

えっと…出口出口…

「…………なぁ、どうやって帰るんだ?」

「……知りませんよそんなこと」

「知りませんよじゃねぇよ!どうやって帰るかぐらい知っとけよ!知らずに俺を呼んだのかよ!」

「冗談ですよ。あそこに非常口があります。そこから出てください」

「…非常口?バカにしてんのか?」

世界の狭間を非常口で行き来しようだなんて…

あった。

「……ごめんなさい…クランさん…」

今回は俺に否があったようだ。




「戻れた…」

現在深夜1:00。

どうやらあっちの世界とこっちの世界では、時間の経過速度が違うらしい。

「さぁて、寝るか…」

深夜に叩き起こされて、運動させられて、大変だったな…

ふぁぁ…

おやすみ。




「起きて、朝だ〜ぞ!」

「ぐっふぅ!」

だ、誰かのラリアットが…俺の首に…

「まだ起きないかな〜…そうだ!お兄ちゃんの持ってるエッチな本を全部燃やしちゃおう!」

「どぁぁぁ!起きます!今起きます!って…なんだ。香織か」

「今日も慌しい朝だね。そんなにエッチな本が大事なの?目の前にこんなに可愛い女の子がいるのに」

「黙れませガキ。お前のどこが可愛いんだ?」

「へぇ…照れ隠しだね?心の底では『こいつ…可愛ぇな…食べちまいたいぜぇ!』とか欲情してるくせにィ」

「勝手に言ってろ…朝飯は?」

「もう用意してあるよ…あ!容易に用意!なんちって☆」

「…食ってくるわ」

「あ、無視しないでよ〜!」

朝から体力を使ってしまった。

はなから削られてたのに。

階段を下り、ダイニングへ行き、席につく

「頂きます」

「召し上がれ〜」

俺達、俺と香織は理由あって二人で暮らしている。

高校生二人を残して出て行くたぁ、どんな神経してんだか。

「どう?美味しい?」

「ん〜、いつものよりはちょっと美味しいかな?」

「うぅぅ…今日だけインスタントにしたらこの仕打ち…手を抜いた汁に手作りが負けるとは…トホホ……」

「へぇ、インスタントか。どうりで美味いわけだ」

「うわっ!酷いよお兄ちゃん!ツンデレもやり過ぎは嫌われるんだよ!?」

「ご馳走様でした」

「お粗末様あぁぁぁぁぁ!うわぁぁん!」

「ほら、早く着替えろよ。遅刻するぞ」

「あ、うん」

立ち直りが早いのがウチの妹のいいところだ。

「あ、そうだ。折角だから、お兄ちゃんの目の前で着替えてあげようか」

……何を言い出すんだコイツは。上等じゃねぇか。

「よし。やってみろよ」

「ひょえっ!?…や、やってやろうじゃないの!」

「おうおう、じゃ、やってみろ」

「せ、制服取って来るから!」

「はいはーい」

  

  ─1分後─


「ほらほら、早く着替えろよ」

…完全に悪役じゃねぇか、俺。

「むぅ…お兄ちゃんのエッチ…」

「どうした?ほら、早く脱げよ」

「うぅぅ…」

ガチャリ。

「おーい、淳ー。迎えにきたわよ…って何しとんじゃぁ!」

「うわっ!何だ!…湊!?」

「あ、湊お姉ちゃん!助けて!お兄ちゃんがエロオヤジ化しててぇ…」

「幼馴染というポジションが役に立ったわ…」

「これにはとってーも、マリアナ海溝よりも深い事情があってですね…」

「お兄ちゃんが私の身ぐるみを剥がして、イケナイことをしようとしてきて…」

「へぇ…そうなんだ。淳、顔かしなさい」

「い、嫌だね!」

「いいから顔かせやぁぁぁ!」


パアァァァァン!(残響)


「さ、香織。こんな変態置いといて行くわよ」

「あ、うん。……お兄ちゃん、残念だったね☆」

「……ガクツ…」


じょ、冗談じゃねぇぞ…



            ※



これからはもっと体力を使うのに、妹と幼馴染にやられてどうすんだ…

立て!立ち上がれ俺!

…やべっ!時間がない!

急いで起き上がり、玄関を飛び出した。

途中、女子二人組からの突き刺さるような視線を感じたが、上手く逸らした。

無事学校には間に合い、午前中は平穏に過ごせた。

しかし…

「じゃぁ朝のアレについて説明してもらいましょうか」

昼休み。

何故か香織も加わっての会話だった。

「まぁ、いいじゃねぇか。詳しくはWebで!」

「あんたねぇ…殺されたいの?」

「じゃ、香織に聞いてくれや。俺からは話したくないからな」

口が滑っても言うものか。

大体、香織が挑発しなければこんなことにはならなかったのに…


ピリリリ…ピリリリ…


お、ナイス着信!

「じゃ、俺は電話してくるから」

「あ、ちょっと待って!まだ話は終わってないのよ!」

湊が俺の腕をグイッと引っ張った。ケータイを持っている方の手を。

俺は不意を突かれ、ケータイを落としてしまった。

その反動でケータイが開き、俺を含む三人を吸い込んでいった。

…今日はこんなのばっかなのか…




「ずいぶん…賑やかですね」

「これでも落ち着いた方なんだぜ?ある程度は説明したから」

「そうですか…」

「で、今日は何をやるんだ?」

「そうですね…では、諸説名から。あなたはまだ知らないと思いますが、大気中には”マナ”が存在します。そのマナを駆使すれば、より強力な技が使えます。技の合体等もできるようになります。マナを使えば魔方陣だって描けます」

「マナか…」

「今日はマナの集め方をマスターしてもらいましょう」

「どうやるんだ?」

「まず、精神統一です。できたら大気の流れに沿って力を放出してください。あ、微量で構いません。その後に、放出した力をまた元に戻して下さい。そうすればマナが集まります。より多くのマナが欲しいときは、それを繰り替えしてください。慣れてくれば一度に集められるマナの量が格段に増えます」

「よし。やってみるか」

……精神統一…

『ねぇ、凄いよこの力!ここに死んでた犬が生き返っちゃった!』

『凄いな、湊お姉ちゃん。私は…おぉ!見えない壁が作れた!』

『それ結界じゃん!香織も凄いよ!』

……精神統一…

「できねーよ!何なんだよお前ら!」

「だって私が手を触れたら、死んだ犬が生き返っちゃったっんだよ!?香織だって結界が張れるんだから!」

「…本当か?香織」

「うん」

「すげーなお前ら!まぁ俺だっていろいろ出きるんだけどな〜」

「えー、何ができるの?」

「聞いて驚くなよ?俺はな…」


「蘇生白魔法使いに結界師、そして強力な黒魔法使い………最強なトリオが完成してしまいましたね…」

この世界が救われるのも、そう遠くない気がしてきましたよ…




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