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クラゲの親子  作者: 夏乃緒玻璃


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五話 クラゲの親子

 大変な思いをしたハルコさんとシュウ君だったが、しかし平穏な日々はあっさり戻った。


 金を無心に来た元夫は、不法侵入やら器物破損やらであっさり捕まった。あたり前だ。

 まあ元々はもっと穏便に話をするつもりだったのだろうが、やはり血の繋がった息子にあそこまで否定されて逆上したのかもしれない。


「子供に暴力を振るって大泣きさせた」と証言してくれたのは、いつか文句を言ってきた、下の部屋のおばさんだった。うるさくて気難しいけれど、時々やさしいおばさんに変身する事もあるようだ。


 後日すれ違った時、シュウ君に「頑張りなよ」と言って中味のない新しい貯金箱をくれた。

 郵便局で配ってるタダのやつだったが、とりあえずカーネーション貯金はこれで継続する事になった。


 死んでしまったクラたんのお墓は、アパートの裏に作った。土に埋めてアイスの棒で「クラたんここにねむる」と書いた墓標を作っただけだったけれど。

 横に雨土で汚れたロボットの人形が落ちていたので、お墓の番人として立たせておいた。


 そしてクラたん1号は死んでしまったけれど、新たに2号〜5号までがやってきた。

 ハルコさんに1号をプレゼントした客が、話を聞いてまた買ってきてくれたらしい。息子くんが寂しがらないようにと、沢山買ってきたのだった。


 彼の誠意がハルコさんに届く日が来るのかどうか、それは今の時点でではわからない。幸運を祈ろう。



 瓶ではなく水槽の家になったクラたん達は、相変わらず呑気に泳いでいる様に見える。


「クラたん、いっぱいだね」


 少し元気になったシュウ君が指差す。


「ぼくもいっぱいになったらママ困る?」


 ハルコさんは少し考え、困るから食べちゃおうかな、そうすればずっと一緒だし。と真顔でいう。

 ママ、ばかなの。

 シュウ君が笑い、ハルコさんも笑う。


「ねえママ、ぼくもいつか。怒ったらクラたんを踏んじゃうようになるのかな」


「シュウ君は優しいからならないよ」


 ハルコさんが背後から抱きしめる。


「もし怖い事があったらママの事を考えて。クラたんにご飯をあげていた時の気持ちを思い出して」


「そしたら、絶対にあんな人みたいにならないよ。ずっとずっと優しいシュウ君だよ」


 そうだよね、とシュウ君は笑った。

 笑ってから、ぽろぽろと泣いた。

 ママもシュウ君を抱きしめながら泣いた。

 二人はずっと抱き合ったままいつまでも泣いていた。


 水槽のクラゲ達は、ゆらゆらと泳ぎ続けていた。



 完


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