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第三章:裁判 3-3
・・・本来僕はここに来るつもりはなかった。
過去には全て蓋をして、影の及ばぬ地で誰にも過去を悟らせず、残りの人生を送っていくつもりだった。
だが、自分の意志とはおよそ無関係に、この場に導かれてしまった。
淡々と読み上げられる事件の概要。あの日の光景がフラッシュバックする。叫び声、血の色、無くなっていく妻の体温。
告げられた判決は、この世の最高刑。当然だ。命を奪った罪は命でしか贖う事などできはしない。
妻の墓前に、ようやく一つ報告ができた。
後日の報道で、あの男が控訴を取り下げたと知った。罪に向き合う気になったのか。
妻の墓前には報告した。
「あいつの死刑が確定したよ」
優しかった彼女が、自分を殺めた相手とは言え、人の死を喜ぶかは分からない。いや、きっと喜ぶことは無いだろう。
でも、僕がこの手で敵討ちが出来ない世界では、これがせめてもの復讐と言えるだろう。
そして何度目かのお盆を終えたころ、彼女が決して喜ばないあの法律が成立した。
虫を殺す事すら躊躇する彼女が最も嫌うであろう、「命を弄ぶ」あの法律が。
僕は、妻の墓前には報告しなかった。




