第三章:裁判 3-2
・・・俺はなんでここにいる?
あぁ、そうだ。俺は刺したんだ。黒い影だと思いこんでいたのは、人だった。俺はこの手で多くを傷つけ、多くを壊したんだ。
弁護士があれやこれやと弁護をしてくれているが、俺の肚はもう決まっている。どんな理由があろうと、3人を殺めた事実は覆らない。それが俺の受けるべき運命だ。
「主文は、理由を述べた後に述べます」
裁判官からこの一言が出た時点で大方は見えた。
死刑。
それが俺を待つ運命。命は命でしか贖えないのであれば、俺はそれを受ける他ない。
生に執着する権利すら、もう俺には残されていないのだ。
何の気なしにあたりを見回した。弁護士、検察官、裁判官、裁判員……ん?
今の顔、その中に一つ、記憶に引っ掛かる顔があった。忘れたくても忘れられない、俺の日常を壊し、地獄に突き落とした女だ。本来ならはらわたが煮えくり返るほどだろうが、それが誰か分かった途端、俺の中の関心は潮が引くように消え失せた。
ただもう、どうでもいいのだ。俺にとってはもう、この世界は意味をなさない。
果たして、俺には死刑判決がくだされた。俺にとっては予想通りに。またある者にとっては希望通りに。
弁護士は控訴する気だったが、俺はそれを辞退した。
結果に対する罰、であれば俺にはそれから逃げる資格などありはしないのだから。
死の運命からは逃げず、向き合い、受け入れる。この時の俺はそう心に決めていた。
あの日を迎えるまでは……。




