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第二章:血の雨 2-2
・・・私はいつも通り職務を行っていた。あの通報が入るまでは。
「男が刃物を振り回し、通行人を襲っている」
安穏とした日常を切り裂く一本の通報。現場は……すぐそこだ。私は先輩と直ちに臨場した。
「これが地獄か……」
言葉を失ったのは先輩も同様だった。逃げ惑う人々、夥しい血の海、そこに沈む人々。
男は、逃げる人を追いかけている。これ以上野放しにしては犠牲者が増えるだけだ。大丈夫、防刃装備は付けてきた。
「やめろ本島!応援を待て!!」
夢中だった。制止する先輩の声も聞こえてなかった訳じゃない。ただ、その場で見ている事などできなかった。
決死の思いで男に飛び掛かり、何とか地面に組み伏せた。
血走る目、特有のにおい、荒い呼吸、常軌を逸した力。男から伝わる情報の全てが、薬物による反応を物語っていた。
私はこの光景を忘れることは無いだろう。視界が全て赤く染まるとは、まさにこのこと。
地獄絵図とは、まさにこのこと。
この男が、たった一つの出来事で運命の歯車を狂わされた被害者だったとは、この時の私にはまだ知る由も無かった。




