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審判はサブスクで  作者: 海浮蝉


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第五章:正義とは 5-7

・・・アパートの小さな部屋で、僕はスマホを握りしめたまま、その時を待っていた。


 三戦目が行われていることは知っている。冷蔵庫の向こうから、冷たい味噌汁の湯気だけが漂ってくる。

 スマートフォンが、微かな着信音を立てた。 ニュース速報。


『死闘刑・三戦目、加藤幸雄、死亡。補償金は過去最高額に』


「……ああ」

 僕の願いは、届かなかった。 これで、僕の復讐は、完遂したはずだ。妻を奪った殺人犯は、地獄の果てで息絶えた。僕が当初望んでいた「正義」が、今、果たされた。


 なのに、なぜだろう。胸の中にあるのは、勝利の歓喜でも、復讐の満足感でもなかった。 あるのは、未来を断ち切られたような、底知れぬ絶望感だけだった。


 その日、夜遅くになってから、僕の銀行口座に最後の通知が届いた。

『シトウケイヒガイシヤホシヨウキン』 それは、加藤が生涯で稼いだ最後の血だった。普段より少額のそれは、僕の口座に、無機質な数字の羅列となって振り込まれていた。

 僕は、そのスマートフォンの画面を、ひたすら見つめた。 この金は、僕が生きるための最後の糧だ。だが、同時に、僕が最も忌避すべきあの男の死が、ようやく僕の口座を潤したという、醜悪な証拠でもあった。


 スマホを握りしめ、僕は遺影の妻と向き合った。


「君の命を奪った男は、死んだよ」

 その言葉は、喉の奥で詰まり、音にならなかった。


 僕は、この金をどうすればいい? 拒否するべきだ。だが、拒否すれば、僕にはもう生きていく術がない。 この金を使い、生き続けることが、僕に与えられた「罰」なのかもしれない。 僕は、妻の死を汚れた金に変え、その金に依存して生きてしまった自分自身の醜さを、抱きしめるしかなかった。


 僕は、激しく泣いた。 その涙は、枯れた妻の命と、僕自身の醜さへの後悔のすべてだった。そして、その涙が枯れた後、僕は立ち上がった。僕は、この金で、人として生きていく。それが、あの男の命を意味のあるものにする、僕のたった一つの復讐だ。


 この汚れた金と、僕は、生きていく。

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