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審判はサブスクで  作者: 海浮蝉


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第五章:正義とは 5-6

・・・「いい加減にしなさい!」


 私がモニタの電源を落とすために一歩踏み出した瞬間、部屋の電子的な喧騒は、突然、完全に途絶えた。


「おい、どうしたんだよ!?」

 透がヘッドホンを放り投げ、パソコンの画面に顔を近づけた。そこには、赤と黒のモザイクのような静止画が映し出されているだけだ。それまで画面を満たしていた歓声も、肉を叩く音も、一切聞こえない。

 その時、透のスマートフォンが激しく振動した。コウジからのLINE通知だろう。透が画面をタップし、凍り付いたように固まった。


「嘘だろ……マジかよ……」

 透の顔から、血の気が引いていく。

「加藤幸雄、死んだって。あの破壊者に、頭を……」


 私は、その場に縫い付けられたように動けなかった。 私が、「生き証人になってほしくない」という建前で止めようとした惨劇は、もう終わっていた。

 加藤の「贖罪」という名の血塗られた仕事は、今、その命が尽きることで、強制的に打ち切られたのだ。


「最悪だ……。あいつが死んだら、もう面白くねえじゃん。チャリティーもこれで終わりかよ」

 透は、純粋に「エンタメの終焉」を嘆いている。 その無邪気さが、私の罪の深さを、刃物のように切り裂いた。

 私が、二十年前に発した一瞬の叫び。

 その結果、人生を狂わされた男。

 その男の死を、私の息子は「面白くない」と嘆いている。


 私は、その場で膝から崩れ落ちた。

「違う……透。違うのよ……」

  それは、息子への否定ではない。「正義」の名のもとで行われた、この国の狂気と、私の人生のすべてを否定する、悲痛な叫びだった。


 息子の前で、私はもう、母親としての威厳も、一人の人間としての体裁も、保てなかった。 涙は出ない。あるのは、二十年間背負い続けた罪悪感の重みが、ついに私の魂を押し潰したという、決定的な絶望だけだった。


 ワタシガ、コロシタ


 痛悔の八文字が際限なくこだまする。

 あたりは、静寂に包まれた。

 崩れ落ちた私を見て、透は静かに凍り付いていた。

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