表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
審判はサブスクで  作者: 海浮蝉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/21

第一章:あの日 1-2

・・・二十年前の朝。それは、とっくの昔に風化してしまった記憶の断片だ。


 電車の中で、不意に何かが太ももに触れた。一瞬の硬直。そして、あの、堪えきれない叫び。反射的な行動だった。恐怖と嫌悪感から、反射的に「痴漢です」と声を上げた。自分でも驚くほど、声は甲高く、そして力強かった。男はすぐに取り押さえられ、駅のホームで警察官に連行されていった。


 その後のことは、よく覚えていない。警察での事情聴取、被害届。だが、最終的に男は不起訴になったと聞いた。カメラに映る角度や、人混みの状況から、彼が犯人である可能性が低いと判断されたらしい。


「ああ、そう」と、理子はあの時の自分を思い出す。正義が勝った、という感覚はなかった。ただ、日常の澱のようなものが、一瞬で取り除かれた安堵だけがあった。すぐに、日々の忙しさに紛れ、事件のことは忘れていった。けれど、一瞬見えたあの男の絶望感に満ち溢れた目だけは、今も記憶の奥にこびりついて離れない。



 何の気なしに過ごした二十年。それが、今の自分の生活を支える確固たる土台を築いていた。まさか、その土台が、数年後に自分が「裁判員」として向き合うことになる、あの薬物通り魔事件の「きっかけ」であったとは、その時の理子は知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ