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三人は順番に発言する癖がついているのかもしれない。続いてカレンが口を開いた。
「男の娘でメイドで悪の組織の戦闘員。なんだかやりたい放題じゃない」
「うん。好きなこと好きなようにやっている。あっ、この前歌も歌ったんだよ!番組のオープニングで使われてるんだ」
「知ってるわよ。念願のアイドルデビューまで果たして、もう怖いもん無しね」
「…怖いもの、あるよ」
カレンとの会話で、いつも自分を苦しめているある思いが赤嶺の頭をよぎった。
「どれだけ頑張っても、結局僕は本物の女の子には勝てない。だから、きっと好きな人にフラれちゃう。覚悟はしてるけどね」
赤嶺は笑顔のまま少し目を伏せた。コーヒーの黒くて滑らかな表面から湯気がたっている。
「好きな人がいるのね?」
カレンが優しく尋ねた。
「うん。僕がニジヘビ団に入ったのも、それがきっかけ。サクラちゃんのこと羽交い絞めにした、あの主任さん。いつも戦闘シーンでなんとなくは目にしたことあるはずなんだけど、インタビューでちゃんと顔見た時に…一目惚れ、みたいな」
「そっか。告白はしたの?」
「ううん。告白なんてとても…今は一緒にいられるし、それだけで…」
「…アリス、応援してるよ!」
赤嶺の手を、カレンは両手で強く握った。
「ありがとう。やっぱり君たち、いい子だよね」
赤嶺の目じりが涙で滲んだ。それに共鳴するように、カレンも瞳を潤ませる。
「アリス、恋の応援はするけど、現場で会ったらやっつけるからね」
セイレネスのリーダーとして言うべきことは言ったトウコだったが、彼女も、そしてサクラも、赤嶺を見つめる瞳は優しかった。
赤嶺のスマホが鳴る。
トウコが手で「どうぞ」と促すと、赤嶺はスマホを開き、そこに想い人からのメッセージを確認した。赤嶺の表情が輝く。
「王子様から?」
カレンが聞くと
「うん。これからカラオケ行かないか、だって!王子様の他にお城の兵隊が3人とでっかいリスの怪物がついてくるけど」
「いってらっしゃい」
トウコが拳を出す。赤嶺はトウコ、サクラ、カレンにグータッチを交わし三人と別れた。
駅前、赤嶺は紫垣たちと合流した。
「みなさん、研修おつかれさまでした」
赤嶺が言った。
「赤嶺は今日なにしてたの?」
紫垣の質問に、赤嶺は笑顔で
「女子会」
と答えるのだった。
《 第12話 ワルツ・フォー・デビイ おわり 》




