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12-8

三人は順番に発言する癖がついているのかもしれない。続いてカレンが口を開いた。

「男の娘でメイドで悪の組織の戦闘員。なんだかやりたい放題じゃない」

「うん。好きなこと好きなようにやっている。あっ、この前歌も歌ったんだよ!番組のオープニングで使われてるんだ」

「知ってるわよ。念願のアイドルデビューまで果たして、もう怖いもん無しね」

「…怖いもの、あるよ」

カレンとの会話で、いつも自分を苦しめているある思いが赤嶺の頭をよぎった。

「どれだけ頑張っても、結局僕は本物の女の子には勝てない。だから、きっと好きな人にフラれちゃう。覚悟はしてるけどね」

赤嶺は笑顔のまま少し目を伏せた。コーヒーの黒くて滑らかな表面から湯気がたっている。

「好きな人がいるのね?」

カレンが優しく尋ねた。

「うん。僕がニジヘビ団に入ったのも、それがきっかけ。サクラちゃんのこと羽交い絞めにした、あの主任さん。いつも戦闘シーンでなんとなくは目にしたことあるはずなんだけど、インタビューでちゃんと顔見た時に…一目惚れ、みたいな」

「そっか。告白はしたの?」

「ううん。告白なんてとても…今は一緒にいられるし、それだけで…」

「…アリス、応援してるよ!」

赤嶺の手を、カレンは両手で強く握った。

「ありがとう。やっぱり君たち、いい子だよね」

赤嶺の目じりが涙で滲んだ。それに共鳴するように、カレンも瞳を潤ませる。

「アリス、恋の応援はするけど、現場で会ったらやっつけるからね」

セイレネスのリーダーとして言うべきことは言ったトウコだったが、彼女も、そしてサクラも、赤嶺を見つめる瞳は優しかった。

赤嶺のスマホが鳴る。

トウコが手で「どうぞ」と促すと、赤嶺はスマホを開き、そこに想い人からのメッセージを確認した。赤嶺の表情が輝く。

「王子様から?」

カレンが聞くと

「うん。これからカラオケ行かないか、だって!王子様の他にお城の兵隊が3人とでっかいリスの怪物がついてくるけど」

「いってらっしゃい」

トウコが拳を出す。赤嶺はトウコ、サクラ、カレンにグータッチを交わし三人と別れた。


駅前、赤嶺は紫垣たちと合流した。

「みなさん、研修おつかれさまでした」

赤嶺が言った。

「赤嶺は今日なにしてたの?」

紫垣の質問に、赤嶺は笑顔で

「女子会」

と答えるのだった。



《 第12話 ワルツ・フォー・デビイ おわり 》

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