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トウコがコーヒーの上に乗った生クリームをストローの先ですくって口に運ぶ。
「オーディション最終選考で会った時、あなたは絶対合格するって思ってた。歌もダンスもうまかったし、しかも格闘技経験まである人なんて他にいなかったから」
サクラはアイスカフェオレをストローでくるくる混ぜながら、かつての思い出を振り返って言った。
「あはは。僕、男だから落とされちゃったんだよね。そもそも応募要件が20歳までの女性だったし」
「逆にそれで最終選考まで残ったのが不思議よね」
カレンは紅茶を飲んでいた。
「だって応募フォームに性別入力するところなかったし。最初から男が応募するなんて思ってなかったみたい。僕、本気でアイドルになりたかったんだけど、ダメだった」
赤嶺はコーヒーを少し飲んで
「アリスって名前も偽名。本当はバンサクっていうの。男っぽいでしょ」
と本名をかつての競争相手に告げた。
「いい根性してるよね。女性アイドルのオーディションに男で挑戦するなんて」
トウコが呆れたように言った。そしてみんなで笑った。
「今は一人のファンとしてみんなの事応援してるよ」
「いやいや、ニジヘビ団に入ってるじゃない。応援どころか敵対よ?」
とトウコがツッコミを入れる。
「それはまあ、いろいろありまして、はい」
赤嶺は照れ笑いを見せた。
「ところで、セイレネスの活動は自粛じゃなかったの?」
との赤嶺の疑問に、今度はサクラが
「アイドル活動は、ね。ヒーローとしての活動は別よ。悪党がいればやっつけるわ。逆にそうしなきゃおかしいでしょ。といっても、普通に生活してたら悪の組織やらに遭遇することなんてめったにないから、ずっとレッスンと訓練にあけくれてたけどね。今日はたまたま三人で出かけたら事件に出くわしちゃったってわけ」
と答えた。




