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紫垣は照れ隠しに指先で頬や顎を撫でた。
「悪の組織にも同期とかあるのですね」
ユナが思わず笑う。和やかにインタビューは進んだ。
「最後に、ですが…ごめんなさい、とても失礼になるのかもしれないのですが、どうしても私気になってしまって」
ユナは回りくどく言葉を選びながら、
「紫垣さん、私にはあなたが悪の組織で戦闘員をやっている人にはとても見えないのです。普通に、わりと好青年というか…普通の会社に勤めて、結婚をして、という選択肢もあったのだろうと思います。なぜあなたは、あえて困難が多いであろう悪の組織に身を置いているのでしょうか?」
紫垣は少し考えて、
「うーん…なんでだろう?特に理由もないような。逆にあなたはアナウンサーをされてますけど、普通の会社じゃなかった理由ってなにかありますか?」
と質問返しをした。
「私ですか?私は…アナウンサーの仕事に憧れてこの業界に入ったっていうか…ごめんなさい、やっぱり、失礼なことを言ってしまいましたよね」
「そんなことないですよ。アナウンサーって素敵な仕事だと思います。俺の場合は…そうですね。なんとなく生きてきて、なんとなく就職して、気が付いたらここにいたんです」
紫垣は指先でオデコや頬を撫でながら言い訳の様に言った。
「気が付いたら?」
ユナが聞き返す。
「そう、なんとなく、気が付いたら。ニジヘビ団の募集要件に『資格や経験不要。ヒーローにやっつけられるだけの簡単なお仕事です。希望者には改造手術も実施しています!』って書かれていたんです。気楽そうだな、と思って」
「すごく軽い理由ですね」
とユナは若干引いた。
「ええ。俺はそれでいいんです」
紫垣は屈託のない笑顔を見せた。
《 第2話 あなたの話が聞きたくて おわり 》