表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/403

9-14

「今日のヒーロー…アキオ兄ちゃんは僕の初恋の人なんです。僕、子供の頃から顔も恰好も女の子みたいで、男の子たちにいじめられて。それを助けてくれたのが近所に住んでいたアキオ兄ちゃんだったんです」

「あいつは昔からヒーローだったわけだ」

「そうなんです。アキオ兄ちゃんは子供のころから拳法の道場に通ってて強くって。でも優しいから、いじめっ子にも乱暴なことはしなかったんです。くすぐり拳法だー、なんて言いながらいじめっ子をくすぐって笑わせて、いじわるを止めさせたんです」

「それで赤嶺も拳法を」

「はい」

「初恋の人が正義のヒーローでこっちが悪の組織じゃ複雑だ」

「でもいいんです、はい」

それから少しの間、二人は無言でカクテルを飲んだ。キャンドルの明かりだけが揺れていた。

「なんだか眠れなくてカクテル作り始めちゃったんですけど、紫垣主任が一緒に飲んでくれたから、よく眠れそうです」

「そうか、良かった」

赤嶺が手にしたキャンドルの明かりで二人は食堂を出た。非常灯で廊下は薄明るかったが、なんとなく赤嶺は部屋の前までキャンドルの火を消さなかった。

「おやすみ」

そう言って紫垣が自分の部屋に入る。

赤嶺も部屋に戻った。赤嶺は暗い部屋の中でキャンドルの火をしばらく眺めた。

「あっ、お部屋火気厳禁だった」

赤嶺はキャンドルの火を吹き消した。常夜灯のわずかな明かりが部屋の中を照らし出す。赤嶺の手の中に明かりを無くしたキャンドルのシルエットが見えた。

赤嶺はキャンドルをベッドのヘッドボードの棚に置いて、ベッドに入った。横を向いて、毛布を抱きしめる。

「…おやすみなさい」

部屋の中に、ライムの匂いが残った。



《 第9話 初恋はギムレットの中に おわり 》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ