9-13
その夜、秘密基地の一階。シャワーを浴び終えて部屋に戻ろうとしていた紫垣は食堂の一角がほのかに明るいのに気付いた。
「うーん、お酒強すぎたかなぁ」
食堂の厨房スペースで、灯されたキャンドルの明かりを頼りに赤嶺がカクテルグラスを傾けている。
「なに飲んでるの?」
と紫垣が赤嶺に声を掛けた。
「わっ!…紫垣主任?」
紫垣が入ってきたことに気づいていなかった赤嶺は肩をビクッとさせた。
紫垣はそこにあった丸イスに腰掛けながら、赤嶺の前にカクテルシェーカーが置かれているのに気付いた。
「カクテル?」
と紫垣が聞く。
「この前、紫垣主任がちょっとお酒好きって言ってたからカクテル作ってみようかと、はい」
と赤嶺が答えた。
紫垣は手を伸ばして赤嶺の手から飲みかけのカクテルグラスを受け取った。
「レシピ通りに作ったんですけど、思ったよりアルコールが強くて。もう少し薄めの方が飲みやすいかも」
「うん、強いね。でもおいしいよ」
「よかった。ギムレットっていうお酒です。ジンとライムジュースのカクテル」
「俺のせいで赤嶺が飲兵衛になるのも心配だから、無理しなくていいよ」
「無理なんかしてませんよ。味見くらいで量は飲んでませんし。これはこれで楽しいです」
赤嶺は空いているカクテルグラスを取り、シェーカーに残ったカクテルを注いで紫垣と乾杯した。




