7-5
「俺、音楽とかやったことないんだよなぁ…」
青島はブツブツ言いながらドラムセットに座る。
「あああ、なんか手が震えるぅ・・・酒飲みたいよぉ」
青島がうつろな目でつぶやく。ここで、アルコールを渇望する体が奇跡を起こした。彼の震える手は意識とは関係なくスティックを左右上下に振り回して、変則的な魂の鼓動を生み出したのだ。
「おお!なんというフリーキーでジャジーなリズム!」
緑川は嬉しそうに叫ぶと、メンバーに合図を送り、ギターをかき鳴らしはじめた。
紫垣がベースを、マーモット橙木がリズムギターを、黄瀬がキーボードを、それぞれたどたどしく演奏し始める。
そして赤嶺が
「だららららんっイェイ!だららららんっイェイ!
うどんのおつゆが黒くて だし巻き卵が甘くて
とおくに富士山が見えて あなたは私に夢中 」
と何の意味もメッセージも込められていない適当な歌を曲に乗せた。
つたない演奏でも音たちがお互いの隙間を埋め合う様に重なり合い、一つのメロディーを作り出した。そして、その音楽の中心にいたのは青島の生み出す、のたうち回る様なドラムだった。
青島はドラムを叩きながら、音の波の中で目を見開いた。アルコールが切れた作用が彼の視界に幻の光をもたらしたのだ。それはキラキラと七色に輝きながら彼の心に降り注いだ。
「おおっ…光が見える…見えてていいやつなの、これ?」
青島は小さな声で自問していた。彼は恍惚の中でちょっとダメな状況に突入していくのだった。




