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「そっかー。ここシャワー共用かぁ、ちょっとハードル高いかも」
「カーテンで仕切られた個別シャワーが四つあるから、人が少ない時間帯にさっと使うといい。…ところで、赤嶺はいわゆるトランスジェンダーなの?」
紫垣の視線を真正面から受けた赤嶺は、
「いわゆるそう、ですね…はい」
と答え、どんな反応が来るのか探るように見つめ返した。
「ここは他人の事あんまり気にしないというか、気が付かないというか、自分すら見失ったような人たちの集まりだから気楽にやると良いよ」
紫垣の答えは拍子抜けするものだった。
赤嶺は表情を和らげて。
「それって、まるでダメ人間みたいじゃないですか」
と冗談っぽく言った。
「悪の組織で働いてる人たちだよ。ダメ人間以外に見える?」
「ダメ人間にしか見えません」
二人は笑った。
「でも紫垣主任は、なんとなく違うように見えます」
赤嶺は少し恥ずかしそうに紫垣を見上げた。
「俺?同じだよ。俺なんか全然ダメ人間。頭の中空っぽだし」
紫垣はそう言い残すと、
「俺の部屋隣だから。なんかわかんない事あったら声かけてね。じゃあちょっと休憩して、10分後に会議室でオリエンテーションやろう。そんなに時間はかからないと思うよ」
と自分の部屋に戻っていった。
紫垣が部屋に入るのを見届けてから赤嶺は、すぅ、と鼻から息を吸い込んで
「あー…」
と数秒、ほわんとした表情を浮かべた。
そして
「うふふ。お隣ゲットだぜーい」
とぴょんぴょん跳ねるように自分の部屋に入った。




