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トナカイ上杉はヒーローが警察に連行されていく姿を見送りながら
「俺、今回なにも仕事してねえわ」
と申し訳なさそうにした。
「たまにはいいんじゃないですか?いつも頑張ってるんだから」
と紫垣がトナカイ上杉を慰めた。
「黄瀬は時間、間に合う?」
紫垣の言葉に黄瀬ははっと我に帰って
「あっ!ぜんぜん余裕です!もう行ってもいいですか!?」
「いいよ。セイレネスの人たち、お巡りさんに連行されちゃったし。もう今日は終わりでいいんじゃないかな」
「ありがとうございます!おつかれさまでした!」
そう言い残すと黄瀬は駅に向かって走っていった。
「あのー、実はワシも同じコンサートに行きたいんですけど…」
ずっと捕らえられている組合長の二宮がおずおずと言った。
トナカイ上杉は
「解放してほしかったらここにサインして」
と変な契約書のサインを迫った。
「えっと、ここでいいですか?」
「そうそう。あとここに日付と、もう一回こっちにもサインして。…これでオッケー。ちょっと待ってね、控え渡すから」
トナカイ上杉が変な契約書の控えを二宮に渡して、
「はい、これで変な契約は完了。明日からお魚を優先的にうちに卸してね。あと調理販売するブースもお願いしまーす」
と言った。
一方的な契約が締結されたが、二宮はそれどころではなかった。
「じゃあワシはこれで。エリイたーん、今行くからねー!」
と彼も駅に向かって走り出した。
それを見送りながら、紫垣が
「かたや横浜でコンサート、かたや警察署で事情聴取か」
と漏らしたのに
「かなしいね」
とトナカイ上杉が答えるのだった。
《 第3話 発砲事件は一目惚れの後で おわり 》




