17-2
「うわっ、キャンプファイヤーみたいになった」
黄瀬が思わず言う。みんなで笑った。
「お墓に名前いれるの、赤嶺もアウロラちゃんも聞かれなかったの?」
とマーモット橙木が尋ねると赤嶺は
「聞かれなかったです。お墓の存在も知らなかった」
と答えた。
「私も聞いてない。私は好きな女の子と、丘の上のお花畑の中にあるお墓で眠るの。こんな男所帯のむさくるしいお墓に入ってたまるもんですか」
アウロラは悪態をついた。
香炉の中ではいよいよお線香の束が燃え上がり、異常な煙をモクモクと空に昇らせている。
「これヤバくないですか?」
赤嶺が心配する。
「うん。前にもこれで和尚さんに怒られた」
と紫垣が言う。緑川がバケツに水を汲んできて柄杓で水をかけてお線香の炎を鎮火した。
赤嶺は墓石の側面に、橙木と緑川の間に掘られている紫垣の名前を見つけて
「僕の名前、ここに掘ってもいいですか?」
と、ポケットからキーホルダーをとりだし、鍵の持ち手側の角で紫垣の名前の横をゴリゴリ削ろうとした。
「だめだ。掘れない」
赤嶺は手を広げお手上げのポーズをした。
「そうだろうね。石材屋さんに頼まなきゃ無理だよ」
と紫垣が言うと
「紫垣主任の名前の横に僕の名前を掘ってもらっても構いませんかね?」
赤嶺は真剣な表情で紫垣に聞いた。
「俺は構わないけど」
「ふふ、ありがとうございます」
赤嶺は墓石に刻まれた紫垣と緑川の横のわずかな空白を指で撫でながら、
「ここに僕の名前を入れてもらいます」
と言った。
緑川はそんな赤嶺を見て目を細めた。続いて緑川は紫垣の様子もうかがったが、こちらは赤嶺の露骨なアピールをどう思っているのか笑顔で小首をかしげているだけだった。




