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紫垣の言葉が氷の刃となってセイレネスの三人の心に突き刺さった。
「…バカにしやがって」
トウコは低い声でつぶやくと、スマホを取り出して電話をかけた。
「もしもし、京極さん。銃器の使用許可を取って頂戴」
電話の向こうで
「ああ?銃器?何言ってんだ、ダメに決まってるだろ」
と男が返答する。
「殺害したい悪党がいるの。今すぐ許可を取って。でないと私、ただの殺人者になってしまうわ」
「だからダメだっつってんだろ。重大事案でもないんだから」
電話でのやり取りにお構いなく、紫垣が
「エリイ脱退後の君たちのことを、世の人々が何と呼んでいるか知っているか?」
と追い打ちをかけた。
「ダメだ紫垣さん!それは言っちゃダメなんだ!」
黄瀬は震えた。
紫垣の次の言葉は、この勝負の王手だった。
「江里口エリイ脱退後のセイレネスは、アイドルの出し殻だ」
そのセリフを受けた瞬間、トウコは天を仰いだ。彼女の視界には白い雲を浮かべた青空が広がっている。青空の下、彼女の瞳は光をなくし心には大きな穴があいた。心の穴は奥深く、底は見えなかった。そして穴の中から、トウコ自身の闇の声が彼女に響いてきたのだ。
『…ろせ…ころ…殺せ』
トウコの右手が素早く動き、スカートの中に隠されていた拳銃を取り出す。
「死ねぇ!」
両手でしっかり構えられた銃口が紫垣を捉えた。




