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「…最後まで言わせなさいよ」
肩透かしを食らったカレンが文句を言う。
「今日は忙しいんだよ。早く終わらせたいんだ。そういうの、省略して」
紫垣は素直で、時々空気を読まない男だ。
「なに勝手なこと言ってるのよ。仕事でしょ、アンタ。こういうのはきちんとやらなきゃダメでしょ」
トウコがイライラしながらパドルを紫垣に向けた。
「前回私たちに勝ったからって調子に乗らないでよね。戦闘員だからって手加減してあげたのが裏目に出ただけ。今日はちょっとだけ痛い思いさせてあげるわ。せいぜい後悔する事ね」
トウコの棘のある言葉が終わるの待ってから、紫垣は「すぅ」と一つ息を吸い込んで
「江里口エリイ」
とつぶやいた。
「…あぁん?」
と返事をしたトウコだけでなく、サクラとカレンの顔にも険しい影がかかる。
「江里口エリイ」
紫垣はもう一度、その名を口にした。
「だから、何?」
トウコは感情を押し殺して、もう一度聞き返した。
「君たちセイレネスの元メンバー、江里口エリイ。彼女は今、どこで何をしているのかな」
「あの子は、強化人間の才能があまり無かったわね。かわいそうだけど、ヒーロー向きじゃなかったのよ」
無表情でトウコは答えた。
もう戦いは始まっているのだ。




