ケイトとメラニー
ケイト=ウィンスレには1歳上の兄と2歳下の妹がいる。
妹のメラニーは姉であるケイトの目から見ても可愛らしい女の子であった。
ふわふわした金髪にたれ目気味の大きな青い瞳、細く華奢な手足に舌足らずな話し方。
全てが可愛らしくできていた。
姉のケイトにとってメラニーは可愛く守ってあげるべき存在だ。
小さな頃は少し体が弱く、少し動くとすぐに熱を出しているメラニーの側でケイトは額のタオルを取り換えたり、果物を絞って飲みやすくしたりと必死に看病していた。
メラニーもケイトになついており、「おねえちゃま」と言ってケイトの後をトコトコと追いかける姿が天使のようで、それを可愛がるケイトお嬢様も素敵だと使用人たちの間でも評判だった。
ケイトはそんなメラニーが可愛くて仕方がなかった。
そして学園にメラニーが入学してきた。
その可憐な可愛さでメラニーは多くの令息から声をかけられているようだった。
そんな令息たちから妹を守るケイトは、可愛い妹に嫉妬して交流を妨害する姉、鬼のような姉などと噂された。
「ケイトこんな事言いたくないけど、あまりメラニーちゃんをかばわなくてもいいと思うわ」
友人がそう忠告してきた。
「メラニーちゃんは確かに可愛いけど、自分から令息たちに声をかけたりしているようよ」
「そうそう、それで他の女子たちから顰蹙をかっているみたい」
「ケイトがかばっても結局メラニーちゃんが態度を改めないとケイトが悪者にされるわよ」
そうやって何人もの友達が言ってくれるのだが、ケイトはいまいち信じられなかった。
だってメラニーは家に帰ると
「今日もしつこい令息に絡まれて怖かった、お姉さま助けて」
「他の友達に話してもみんな助けてくれないの、お姉さま助けて」
「私何もしてないのに女の子達は私が悪いっていうの、お姉さま助けて」
などと涙を浮かべながらケイトにすがってくるのだ。
可愛くて純真な妹がそんな事するだろうか?
ケイトの前では可愛くて守ってあげたくなる妹なのだ。
そして友人の忠告もむなしく、ケイトは今日も令息たちからメラニーを守るのだった。
そんなメラニーに婚約者ができた。
学園で沢山の令息たちに声をかけられる事でメラニーの評判が下がるのを恐れた両親があちこちで伝手を使い婚約者を探していた時だ。
婚約の申し込みが来たのだ、何と格上の公爵家から。
これには兄もケイトも驚いた。
「どういう繋がりでこんな格上の縁談が?」
「そりゃあメラニーが可愛いからじゃないの?」
「可愛いからってこんないきなり持ってこられるか?」
当のメラニーは頬に手を当てて潤んだ眼で嬉しそうにしている。
「あのね、学園でお知り合いになったの」
「公爵令息と?」
「そう、校内で困っていたらジェームス様が助けてくださったの」
どうやら学園で助けたメラニーにひとめぼれをして申し込んできたらしい。
「よかったわ、これで変な令息たちに絡まれなくてすむわね」
「うん、お姉さま、今までありがとう」
「これからはハイター公爵令息に守ってもらえるんだものね」
そう言って姉妹は喜び合った。
兄だけは一人首を傾げていたが。
それからは学園につくとハイター公爵令息が待っており、教室までエスコートしていく。
ジェームズ=ハイターは成績優秀で生徒会の役員もしている。
剣の授業でも騎士志望の生徒に引けを取らない程度には鍛えている。
顔も整っており、令嬢達からの人気もすさまじかった。
しかし本人はまったく令嬢達に興味がない様子だったのだが、突然の婚約は学園内でも大きな話題となった。
学園が終わるとメラニーは公爵家の教育があるため一緒に公爵邸に帰っていく。
「うまくいってるようでよかったわ」
ケイトは二人の様子を見て胸をなでおろしていた。
だが、日が経つにつれ、段々とメラニーの様子が変わっていった。
元気がなく、疲れた顔で帰ってくるのだ。
「メラニー教育が大変なら少しゆっくりさせてもらえるようにお願いしたら?」
母親がそう言っても、「大丈夫」としか返事をしなかった。
段々元気がなくなるメラニーを見て、ケイトは心配になった。




