44 何故深海は打ち倒されたのか
走って疲れただろ、火の番はしておいてやるというヘリオの言葉に甘えてソールから貰って(無許可)きた寝巻きに入って夜空を見る、
「マリアナー」
「なんだい」
寝袋の横に座り込んだマリアナの方を向き、ずっと思っていた疑問をぶつけてみる。
「マリアナってなんで死んだの?」
そんなに強いなら、前の契約者は私よりずっと強いのならきっと敵なんていなかっただろうに…どうして、真祖のマリアナは死んだのだろうか?
「実はね…」
「精霊?」
「と呼ばれているだけの、裏世界から迷い込んだ傍迷惑な住人だかな」
ほぼ同じ時間、霙もヘリオに似たような質問をしていた。
「それが私達の倒すべき敵?」
「昔はな…俺も数百年ぶりに見たから今後の勢力図までは想像できないがな」
パサリとカラスが咥えていた木の枝を火の中に落とした。
「昨日のあの動物紛いと人間と吸血鬼は戦っていたのね」
霙は、過去の人達があんな強大な敵に果敢に立ち向かっていたのかと思うと、キラキラした目を今は亡き偉人達に向ける。
「まぁ…そんなところだな」
そんな愛娘の夢を壊してはいけないと、ヘリオは少し歯切れ悪く返答する。
その顔には少し影がかかっていた。
「私達は全員で力を合わせて強大な裏世界の住人に立ち向かったけれど!相手は強く、敵わず敗北してしまったのさ!」
「液体を操れるマリアナでも太刀打ちできなかったの?」
確かに昨日のアレは強かった…しかし、あれが無数にいてもマリアナなら勝てる気もするが。
「良いことを教えておげる明香」
マリアナは私の顔を覗き込んで、アドバイス!と人差し指を立てた。
「真祖っていうのは大抵我が強い…そんな唯我独尊が集まるとどうなるでしょう?」
「……」
もしやマリアナ達…。
ジト目に反論するように、マリアナが懐かしむように笑う。
「よく衝突が起こっていたのは本当だけど、仲はよかったわ…単純にあちらの方が一枚上手だっただけ」
「…勝てるの?」
「勝たないとこの星の未来はないわ」
いきなり話が壮大になったので思わず星からマリアナの方に目線を移す。
「だからこそ、吸血鬼世界を牛耳っている一部の吸血鬼は精霊の下僕の活動が確認されたと伝えれば協力してくれる…と思う」
「…私も修行頑張るね」
ぼんやりと自分の出来る目標を口にする。
「そうね、最後はトライデント動かしながら化合を自由に使える程度にはなって貰わないと」
「ガンバリマス」
ふぁあと襲ってきた睡魔に、もそもそと肩まで寝袋に入って瞼を閉じる。
(ああ…だから)
ぼんやりとした頭の中で、初めに手を取ったあの時を思い出す。
(マリアナは…吸血鬼が好きか聞いてきたのかな…)
この星を救うというのは、人間も吸血鬼も両方救うということだ。
明日から始まる、まだ見ぬ旅路に思いを馳せる。
食われるだけの箱庭から随分とここまで遠い所に来てしまった。
この星を救うなんて、随分と壮大な話になってしまったが…もしかしたら私を揶揄っているという可能性もある…。
明日起きて覚えていたら、ヘリオにも聞いてみよう。




