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41 享楽的な種族

 ―意地など張らなければ良かった。

 子どもはしてはいけないをする生き物だと、理解していたつもりだった。

 あの人間を愛していると宣いながら、眉一つ動かさず人間を殺す独りぼっちの真祖より理解しているつもりだったのだ。

 ―人間は、人間の元で生活するのが幸せだと。

 それが、例えこんな地獄のような世界になってしまっても…その方が幸せだと。

 …いや、こんなのは建前だ。まだまだ若者感覚が抜けない俺は、意地を張ってしまったのだ。

 三度目の裏切りをされるのが怖くて人間と対立した。

 人間は一度吸血鬼を裏切った、二度目の裏切りであったあの子が約束を破って家がもぬけの殻になっている時に…意地を張ったのだ。

 人間なんてもう懲り懲りだと、裏切り者の末路など俺には関係ないと。

 そう意地を張って、この集落の近くを縄張りにして理由をつけてこの地に居座った。

 何処へだっていけた、なんだって出来たのに…カラスと二人ぼっちで死にかけの人間を下僕にしてはその時間を凍らせて、その死を遅らせた。

「おとう…?」

「喋らなくていい」

 カヒューと喉から息が漏れて話すのもしんどいだろうに、霙は俺の膝の上で俺を見て昔のように笑う。

「わた……ず…と、あや…らない…と」

「迎えに」

 俺の能力は、その時間で固定するものだ。

 死にかけを救うことはできても、致命傷を…溢れる命を繋ぎ止めることは出来ない。

「迎えに来るのが遅くなってごめんな」

 霙は驚いた顔をすると、ほっとしたような顔を浮かべてその目を…。

 ばしゃりと頭上で水袋が破裂し、髪を伝って水が滴り落ちる。

 視線の先では、あのマリアナと契約した小娘が必死に逃げその後ろを精霊の下僕が追いかけ、それを追うように水の刃が地面に突き刺さっていた。

 俺にはマリアナの姿は見えないが、見えないながらに怒っているような気がする。

 それはさっさと参戦しろやという意味なのか…吸血鬼らしく自分勝手に生きろということなのか。

 …何処までも、最低で救いようのない育ての親だった。

 ……それなら、もう既に最低ならば。

「何処までも堕ちていこう」

 そうだ、享楽を享受する自分勝手なものこそ吸血鬼という種族なのだ。

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