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40 負け即ち死

「死にたくないなら負けないこと!」

 その武器を手に取ると、水だったはずのそれは水色が基調となった三叉槍武器、トライデントと変形した。

 私の首元辺りまであるはずなのに、羽のように軽く自分の手足のように動かし方が分かる。

 その色々の動物を合わせた化物は、赤い血の道を作りながらこちらにのそりのそりと近づいてくる。

 至近距離で見るとやはりその異様さが際立っている…先生の読んだ絵本にだってこんなものはいなかった。

 ソレは、首を回して戻すのを忘れていたのかゴギギギギと一八〇度回転する。

「Kuuuuuuaaaaaa」

「くっそがっ!」

 蛙のような跳躍力で襲ってきたソレの攻撃を、トライデントで受け止めて弾き返す。

「『化合・雨』」

 マリアナがその着地地点に追撃をするが、最初に地面についた左脚のみでもう一度跳び上がって回避する。

「どんな身体能力してるのこいつ!?」

「単独で撃破いけるかしら…?」

 飢えた獣が餌を前にしたように、吸血鬼の慢心さの欠片もないソレは絶えず攻撃を続ける。

 捌くこと自体は難しくない、しかし攻撃に移行できない。

 トライデントを振ってはみるが、そんな遅いもん当たる訳ないだろという幻聴が聞こえる程度には簡単に避けられる。

「!、前に出ろ、明香」

「しまっ」

 ずるっと滑った足に反射的にトライデントを地面に突き刺してそのまま一回転したことで、突進してきたソレと位置が反対になる。

「倒せるイメージが湧かないんだけど!?」

「今の明香じゃ難しいかなぁ」

「嘘でしょ!?またきたっ」

 馬鹿の一つ覚えのように、突進してくるソレをトライデントで受け止めるがずるっ…ずるっと少しずつ押されていく。

「明香っ」

 マリアナが、化合をしようとしているがあれほど多用していればガス欠するというものだ、水は形を形成する前に地面に落ちる。

「今まであえて黙っていたけど、数百年ぶりの老体にいきなり実践はきつい!」

「今言わないでくれるかなぁ!」

 バンッと横から銃声と共にソレが横に吹っ飛ぶ。

「霙さん!?」

「大丈夫かしら明香ちゃん」

 視線を動かせば、ライフルから硝煙を上げた霙さんが居た。

 吹っ飛ばされたソレは、背中から蝙蝠のような羽を生やすとそれを手のように動かして体を起こした。

「頭蓋骨に当たったかしら…そもそも胴体を狙ったんだけれども」

 霙さんは仕留めきれてないことに然程驚きもせず、ガチャリと弾を装填して照準を合わせる。

 ソレのターゲットは完全に私から霙さんの方に移っていた。

「霙さん!」

 頭をゴキゴキと回し蝙蝠の羽を仕舞ったソレは、犬のように体を震わすと霙さんに突進する。

「……」

 ―それを見ても霙は引き金を引かない。

 ソレは私の前を通り過ぎ、一直線にその喉元を喰い千切らんと涎を垂らしている。

 ―それでも霙は引き金を引かない。

 ソレは霙さんの手の届く距離まで近寄ると、喉元に喰らい付くために一瞬のための時間があった。

 バンッとレンズから目を離さなかった霙さんはその一瞬のためのタイミングで引き金を引く。

「Gyaaaaaaa」

「足りないかっ」

 弾丸は眼球を貫きソレは叫び声を上げるが、無事な目には未だ飢えが宿されている。

 ガシャンと次弾素早く装填すると、口を開けて噛みつこうとしているソレの口内に銃口をぶち込み引き金を引く。

 弾は皮膚を貫通し、ソレからは血飛沫が巻き上がる。

「っ、霙さん!」

「『化合・水』…明香!」

 校内からショットガンをぶち抜かれてもなおその化物は絶命することなく、銃を噛み砕いていた。

「流石にそれは反則じゃないかなぁ」

 霙は流石に脳天をぶち抜いても動く動物なんて想定しておらず、その化け物っぷりに笑うしかなかった。

 咄嗟にマリアナはソレの胴体を斬り落とし助けようとしたが、尻尾が蛇に変化し明香に襲い掛かったため能力を解除して蛇を斬る方を優先した。

 そのため、霙への援護がワンテンポ遅れてしまった。

 ―ソレは銃すら噛み砕いた咬合力で霙の大動脈を骨ごと噛み砕いた。

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