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36 心からの言葉

 シャワーを浴び、与えられた部屋でぼんやりと硬いベッドの上で光も点さず横になる。

 コンコンと控えめのノックが鳴って、そちらに顔を向けるとガチャリと扉が開いて人が入ってきた。

「……霙さん?」

「今大丈夫?」

「え、あ、はい」

 慌ててランタンをつけようとするがやんわりと止められて、蝋燭を軽く掲げられる。

 ベッドから起き上がり腰掛ける形に動かすと空いたスペースに霙さんが座って蝋燭を机に置いた。

「何故霙さんが…」

「別件で来ていたの…それで、もうじき到着するって言うから…待ってて…」

 霙さんはかける言葉を選んでいるようで、ゆっくりと話していた。

「よくあることなんですか?」

「えっ」

「…今回みたいなこと」

 霙さんは少し黙った後、ゆっくりと口を開く。

「ないわけ…じゃない…けど、全滅は今回が…あ、いや明香が生きているから全滅ではないけど…」

「そう…なんですね」

「…ごめん」

 そうか、こんな惨劇は今回が初めてなのか。

「重装備で遺体の回収は行う予定…どれだけ残っているかは分からないけど」

「…ありがとう…ございます」

 霙さんは、顔を上げて覚悟を決めた顔でこちらを向いた。

 それにつられて、私も彼女の方を向く。

「もし、しんどいようならハンターを辞めて市民となれるように掛け合うことも出来る」

「…っ」

 目大きく見開いて、彼女を見つめる。

「恨みや怒りというのは確かに莫大なエネルギーにはなる、疲れるけどね。

 だけど、それで全てが解決できるようなら今のような状況にはなっていない…実際に吸血鬼と対面してその心が折れてしまう人も大勢いる」

「特に、旅の中で誰かを失った人はそこで心が折れることも珍しくない」

「私は…」

「誰もあなたのことを責めることはない、壁の中で生きていくことも出来る…どうしたい?」

 考えていなかった選択肢に、ぼんやりとする頭を精一杯動かす。

「直感で答えて、それが君の本心だから」

「私は…」

 頭が言葉を整理する前に、口が言葉を紡いでいく。

「私は…私、辞めたくないです…」

 その言葉に驚いたのは、霙さんではなく私だった。

「…そう言えるのなら、君はきっと素晴らしいハンターになれるわ」

「本当ですか?」

 霙さんは、立ち上がると蝋燭を持って扉に手を掛ける。

「ええ、きっと私も超えていくことすら出来るわ…しばらくはマディスにいなさい。ソールに帰ってもしんどくなるだけでしょう」

 眠れなくても横になって目は瞑りなさいねと忠告を残して霙さんは立ち去った。

 その日は、これまでの疲れが一気に来たためか目を瞑ると彼らの顔を思い浮かぶ暇もなく眠りについた。

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