24 狩の時間※多少残酷な描写を含みます
「私の美しいお召し物が汚れてしまいました」
鬱蒼と生い茂る森の中では、太陽の光は届きはしない。
自分を着飾る為だけの装飾をじゃらじゃらと揺らして、風に靡く手入れをしていると一目で分かる赤い赤い髪を持った男の左腕からは赤い血が垂れ流れていた。
「まさか、自爆特攻してくるとは…私の美しい左腕が吹き飛ばされてしまいました」
男は、左腕がなくなったというのに大した問題ではないと言わんばかりに少し油断をしてしまいました、失敗失敗と口に右手を添えて笑う。
「私は食材には特に気をつけていますし…流石に、硝煙臭いのはごめん被りたいですね…人間のミンチは好きではないですし」
ぐちゃりと、爆弾によって顔が判別出来なくなった死にかけの人間を避けるように離れようとした。
「っ………そ」
死んでいてもおかしくないだろうに、哀れな雑魚は無礼にも美しい足首を掴みその男がその先を進むことを許さない。
先程まで、死にかけの食う価値もない人間だったものがその美しい白い服に汚らしい手で掴んだのを視認した瞬間、あれ程優雅だった男の顔が恐ろしいものに変わる。
「その!汚らしい!手で!私に触れるな!」
「はなす…かっ…」
自由な脚を思いっきり上げ、その人間の頭を踏みつける。
人間などという食材が逆らうことが気に食わない、左腕だけに飽き足らず人間なんかの血で美しい白い服が赤く汚れるのが気に食わない。
しかし、いくら蹴られようとも死にかけの人間はその手を離さない。
男は、はぁとため息を吐いてその脚で蹴るのを止める。
「いけない、いけない。服などいつでも買えるのだった。美しさはいつだって細部に宿る。こんな時に冷静でいられないとは私もまだまだ美しさ力が足りてないな」
人間は…ライトーニアはぼやける視界で、ただただこいつをあいつらの元に行かせてはいけないという思念でその細い足首を掴んでいた。
「そういえば、前に工場見学しに行った時に人間は屠殺する時が一番美しくないと言っていたな…」
頭を飛ばせればよかったが…結果としては左腕を持っていくのがせいぜいだった。
一発しかない爆弾を不発に終わらすわけにはいかなかったため、自分自身も致命傷を負ったが…それでも、負傷した吸血鬼ならまだあいつらなら勝算があると信じているからだ。
「いい加減に、新鮮な餌を採りにいきましょう」
「ぁぁぁぁあああああ!」
「美しくないですね」
念力で人間が捨てた剣を引き寄せ、それで煩わしい腕を切り落とす。
最初からこうすればよかったなと反省していると、手の持ち主だった人間か美しくなく喚くものだから剣をその胴体に突き刺してやればやっとその声は止まった。
力を失った手が、ぼとりと地面に落ちた。
「さて…ん?」
私の美しいペットの犬という名の狼達が、器用に新鮮な食材を咥えてお利口に待っていた。
「私にくれるのですか?君達はお利口ですね」
可食部の少ないまだしとめて時間の経っていない小さな人間の首元に歯を立て残った血液を吸い取る。
「帰ったらまた服を注文しましょうか」
その血液を左腕に集中させれば、ぐちょぐちょとおおよそ人間からは発せられない音を立てながら、男は…吸血鬼は生成した左腕の感触を確かめる。
吹き飛ばされた服の部分は生成出来ないため、ノースリーブになってしまった左腕を見て美しくないな…と苦笑してしまう。
「リスなんかでは腹は膨れないでしょう?今、君達の餌を持ってきますので待っていて下さいね」
狼達は吠えることもなく、答えることもなく白く濁った死んだ目で自分達のご主人を見上げる。
「返事は?」
「わん」
その声を聞いて吸血鬼は満足したのか美しくない死体を避けて狩場へと向かう。




