22 運命の分岐点
途中一匹狼の襲撃にあったりもしたが、ライトーニアがソールから持ってきていた銃を使い後ろ足を狙撃して剣をその背中に突き立てていた。
「持ってきてたのね」
「あんまり弾数ねぇから吸血鬼以外では使いたくなかったんだがな…今日は全員一日中歩いて疲れているし使うべきと判断した」
ふっと硝煙を息で吹き飛ばし、剣から血を払っていう。
「まあ。血抜きして食べるか…美味しくはねぇかも知れねぇが置いておく訳にもいかん。他の動物がよってくる」
「それより、あんた先に水浴びしてこい。血が取れなくなるで」
「そーさせてもらう」
ライトーニアは、順番で着ている着替えを持って近くの湖に向かう。
そう長いこと入ることは叶わないが、衛生的な面を考慮しても多少の危険を犯しても水浴びはしないといけなかった。
ここは近くにそこそこ大きな湖があったため、交代で水浴びをする算段だったのだ。
「よっしゃ、狼はこのルーシュさんにまかしとき。お前らー今日は肉だぞ!美味しいかは保証しないけどな!」
子ども達からわーいという声と、えーという不満の声があがってくる。
「お前ら不満言うな〜」
「これ、匂い消しに使える草…」
姿が見えないと思っていたワスナレが、細い葉っぱ?がついた枝のようなものを持ってきて差し出してきた。
「これは?」
「名前は知らない…けど、お母さんはよくこれを食べる物に入れてた…匂いがマシになるとかなんとか」
「お、それはハーブという物やない?ルーシュさんもなんかいい匂いする草があるって知識だけ知っとるで、物知りで偉いな!アスカ、うちの代わりに頭撫でたって」
「だそうだよ、お手柄だねスワナレ」
「えへへ」
調理というのも烏滸がましいかも知れないが、今持っている材料を使って狼を解体して火でよく焼く。
「大抵のもんは、焼けば食える」と豪語していたルーシュの後ろで、肉の油によって燃え上がっていた火柱は見事な物だった。
切り分けられて、私も食べようとしたのだが…。
「貴方はやめておきなさい、箱庭育ちが食べたら相当な確率で腹下すわよ」とやんわりと止められた、それをそのままライトーニアに伝えて返すと。
「あー…そうだな、やめておいた方がいいかも知れん」と彼の分のパンを貰い、周りが肉パーティーしている中悲しい思いで夜を過ごす事になった。
夜が終わりに近づき、空がほんのりと少しその端に色を付けていく。
「一番の難関は突破した、マディスにも後一日程度で着くだろう」
「皆、後少し頑張ろうね」
疲労の表情は見えているが、ライトーニアとナナヤの言葉に子ども達は少し元気を取り戻した。
「ナナヤ、ラムがまだ帰ってきていないんだけど…」
「にー…本当だ、ラムが居ないね。知っていたりする?」
ナナヤが、片付けなりなんなりで好き勝手動いている子どもの数を数えるが、確かに男子が一人少ない。
報告してきた子に、目線を合わせて問いただしてみると彼は少し目線を漂わせた後に、怒られるのを恐れる子どもの様に弱々しく口を開く。
「片付け中に、リスがいるって…走っていっちゃって…す、すぐに言わなきゃって思ったんだけど…リスなんてすばしっこいから…すぐに帰ってくるかなって…」
「ラムはどっちの方角に?」
「あ、あっち」
子どもは、湖があった方角を指差す。
「ナナヤ」
しゃがんでいるナナヤの肩を叩いて、銃を彼に差し出しながらライトーニアが剣と爆弾を持ってそちらを向く。
「何かあれば爆弾で知らせる。銃をお前に渡しておくが…無理そうならバラバラに散らばれ」
「一定期間過ぎれば救援部隊が来るんだろう?それまで待つという手もあるだろう」
「ここまでスムーズに来すぎたせいで、救援部隊が派遣される日数まで後三日かかる…それに、先輩達は吸血鬼はこの地を嫌がって近寄らないとしか言ってない…近寄れないと確定している訳じゃない以上、居座るのはリスクが高い」
眉を顰めて、まだ夜に包まれた森の先を見つめる。
「それに、もし近寄れなかったとして…その周りを吸血鬼が待ち伏せしているなんて洒落にならんからな。俺が勝てないようなら、まずお前らは勝てない」
ナナヤの肩から手が離れ、ライトーニアがゆっくりと湖の方へと歩いていく。
「生存第一だ、勝って生き残ろうとするな、逃げて生き残れ」
今一度こちらに忠告をしてから、ライトーニアは薄暗い森へと駆けていく。




