21 遠い日の記憶のジャックオランタン
「思わなかった…かな」
「どうして?」
「そうだなぁ…」
例として合っているかは定かではないが、彼女でも理解出来るように言葉を選ぶ。
「ソールには鶏がいるでしょう?」
「うん、私は世話係じゃないけど…」
「あれも、極論食べるために育成しているの」
ソールには、鶏と牛が数頭飼われている。
勿論居住区内の貴重なタンパク質であり、時折屠殺されて振る舞われるそう。
私が来てからはまだされていないが、無事試験が成功すれば振る舞われるとかなんとか。
「育てる人は…確かに最後には殺すために育てているし、それに慣れているとは思う。けど、そう思っていても、非情になれと自分を律していても…どうしても、愛情というのは捨てきれない。ずっと捨てていたのにある日それを拾ってしまうこともあるの」
箱庭で、かぼちゃを育てたことがあった。
ただの土から目が出て、大きくなって緑色の実がなって。
最後はパンプキンパイにしようねと育て出して、私もパイを楽しみにしていたはずなのに収穫の時、随分と抵抗した。
食べると分かっていても、そう育てたつもりでもいざその現実を目の前にした時、ここまで大きく育ったこのカボチャがなくなるのが心底嫌だった。
わんわん泣く私に、先生達は仕方ないといった感じでそれなら215番ちゃんのかぼちゃはジャック・オ・ランタンにしようかと提案してくれた。
そうして、先生達と一緒に中身を切り抜いて皮でギザギザお口の変わった装飾品を作ったのだった。
所詮は、延命にしか過ぎない。
ジャック・オ・ランタンも次第に萎れていって最後は廃棄した、それならあのかぼちゃかれすれば皮まで美味しく食べて貰えた方が嬉しかったかも知れないと今なら思う。
それでも、あの時の私はまだ一緒にいられることが心の底から嬉しかったのだ。
「まあ、吸血鬼も生物だもの愛情くらいはあるってことよ」
「そうなんだ…私は、吸血鬼にはあったことないから」
スワナレは嘲笑するように笑う。
「私は、火の球が怖い。凶暴な吸血鬼なんかよりも無慈悲でどうしようもない火の球の方がずっと怖いの…」
「それでも、ハンターになりたいんでしょう?」
スワナレは、こくりと頷く。
「お母さんに救ってもらった命だもん…お母さんから教えて貰ったこの薬で一人でも多くの人を救いたい、あんな叫び声を聞くのは一度きりでいい」
確かな決意を胸に、スワナレは腕で涙をゴシゴシと拭う。
「だから私は、居住区間を自由に行き来出来るハンターになりたいの」
「偉い、偉い」
頭をぽんぽんと撫でてあげると、スワナレは少し驚いた顔をしてからエヘヘと嬉しそうに笑った。
チカチカと視線の端で光が煌めき、そちらを向けばナナヤが何かをブンブンと振っている。
どうやら、もうじき出発の時間のようだ。
「よし、この後も頑張ろうねスワナレ」
「は、はい頑張ります!」
薬を塗った場所は、いつの間にか痛みは引いていた。




