20 素朴な疑問
「アスカお姉ちゃん、これどうぞ」
「?、これは何かなスワナレ」
運命の日…というとなんだか壮大だが、一日ぶっ通しで歩くことになる今日とりあえず前半は特に吸血鬼に会うこともなく無事に終わった。
各自鏡の反射で位置を共有しながら、個々で隠れられそうな木陰を見つけて太陽が少し傾くのを待っている。
茂みの中に小さなスペースを見つけたので、スワナレと一緒にしゃがみ込んで日光を避ける。
定期連絡で生存を確認し終えると、ちょんちょんと裾を引っ張ってスワナレが綺麗な葉っぱの上に何かを乗せている。
「お母さんが昔教えてくれた火の球の火傷に効く薬…ちょっと持ってきておいたから…」
「あっ」
元々箱庭育ちで日光に当たったことが殆どなかった私は、周りに比べて分かりやすく炎症を起こしやすかった。
ライトーニアが、ナナヤも大概だと思っていたが上には上がいるんだな…と少し呆れていたくらいには。
緊張して気付かなかったが、右腕の一部が軽い火傷のように赤くなっており認識すると痛みが襲ってくる。
気をつけてはいたが、やはり全てを防ぐことは無理だったらしい。
「ありがとう、助かるね」
「ううん…これだって、お母さんに教えて貰ったのを再現しているだけで…材料だって補給隊の人達が持ってきてくれているのを使っているだけだし…」
その薬を塗ると火傷部分がひんやりとして、幾分か痛みがましになる。
スワナレは、こんなことしかと卑下して声が段々小さくなっていく。
「そんなことないよ、いると思って持ってきてくれたんでしょう?」
「うん…だって…」
スワナレは、ぎゅっと薬が入っているのであろう小瓶を握り締めて搾り出すような声で呟く。
「お母さんは、火の球に焼かれて死んじゃったんだもん…私を庇って…私の上で」
ひゅっと喉から息が漏れる。
火の球、つまり太陽の光はとてつもなく痛い。
短時間であれば、皮膚が痒くなったりする程度で済むが、長時間となれば皮膚が爛れ痛みによって苦しみながら絶命していくしかない。
いつかの日、誰かが水を沸騰させているヤカンの近くで遊んでうっかり当たって火傷をしたことがあった。
先生達はカンカンに怒っていたけど、それと同時に手当てしながら呟いた言葉がずっと脳裏にへばりついていた。
『いい?火の球の光にずっと当たったらこれより酷いことになっちゃうの、先生達は皆がそんなことになるのは悲しい…だから寝る時間はきちんと守ってね。
この世界で、一番苦しい死に方は火の球に焼かれて死ぬことなんだから』
目をぎょろぎょろと動かすが、かける良い言葉が思い浮かばない。
「…スワナレは強い子だね」
「お姉ちゃん達程じゃないよ…私は、あんな過去だったら吸血鬼になんて怖くて立ち向かえないもん」
体育座りで、スワナレは縮こまる。
「…もしかして聞いてた?」
「アスカお姉ちゃんだけ…お姉ちゃんは吸血鬼怖くないんだよね?どうして?殺されかけたのに」
今現在頭上に広がる青空のような目がこちらをじっと見つめてくる。
どうやら、気を遣ってはいたのだが最後の方起きていたらしい。
まだ、聞いたのがルーシュでないだけマシかな…と頬を掻く。
「私にとって育ての親も吸血鬼だからかな…それに、私は彼らに痛いこととかされていた訳じゃないし」
「それが、育てる為のものだとは思わなかったの?」
流石子どもである、痛いところを突いてくる。




